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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【東海エリアの憧れ移住スタイル~静岡県富士宮市~】富士山のふもとでピザの移動販売

東海エリアで憧れの移住スタイルを送っている方をご紹介します。

2021年6月号掲載

移住者リポート

東京から富士山のふもとの高原へ。絶品のナポリピッツァを移動販売

富士山をはじめ、富士山本宮浅間大社や白糸ノ滝などを有する静岡県富士宮市。
その北部、朝霧高原にある猪之頭(いのかしら)地区に移住した大塚さん家族。
東京での仕事から一転、始めたのはピッツァの移動販売。その道のりと暮らしぶりを伺った。

静岡県富士宮市(ふじのみやし)

富士山の南西麓に位置し、四季折々さまざまな富士山を眺めることができる。市街地にはショッピングモールや映画館などがあり、郊外は豊かな自然が広がる。豊富な水源や日本一の高低差を生かした酪農や野菜栽培、ニジマスの養殖など食材も豊か。東京から車で約2時間。

移動販売車の前で大塚さん家族。車に描かれた青いゾウのキャラクターは、店名の「Aozora
Pizza(あおぞらピッツァ)」から誕生したという。 Aozora Pizza https://aozorapizza.com

 

満員電車と喧騒に疲れて夫婦で空を飛んでいた地へ

 富士山の雪解け水が各所で湧き出ていて、初夏にはホタルが飛び交う富士宮市猪之頭地区。この日、県道414号沿いに、次から次へと人が訪れていた。本格的ナポリピッツァの移動販売だ。営業しているのは神奈川県出身の大塚祐介さん(45歳)。以前は東京でマーケティングの仕事をしていた。
「満員電車での通勤や都会の喧騒に疲れてしまい、たまたま書店で見た塩見直紀氏の著書『半農半Xという生き方』に感銘を受け、そんな生活をしたいなと思うようになったんです」
 2016年に長男の椋太さんが生まれ、祐介さんの移住への思いは強くなった。候補となったのが、趣味のパラグライダーでよく訪れていた富士宮市だ。
「雄大な富士山が見えるし、おいしい食材が豊富だし、いいところだと感じていました」
 富士宮市に電話して移住したいことを伝え、都内で行われた富士宮の食を楽しみながらの移住イベントにも参加。その後、希望していた猪之頭地区の方がたにも相談し、借家を紹介してもらい、18年2月に移住した。
「移住前に、猪之頭で暮らすことで不安なこと、したいことなど、キーワードを付箋に書きだして家族会議をしました。そのときに夫から事業計画が提出されたので、本気なんだなと了承しました」と妻の昌美さん(46歳)は当時のことを振り返る。

大塚さん夫妻の趣味であるパラグライダー。移住前は毎月のように朝霧高原を訪れていたが、むしろ移住後はしたいことが増えて、空を飛ぶことが減ったとか。

 移住後の仕事として祐介さんが考えたのがピッツァの移動販売。もともと首都圏の薪窯があるピッツァ店を110店以上巡り、本場イタリアに行くなど、そのピッツァ愛は半端ではない。仕事を辞めたあと、伝統的なナポリピッツァの店で学び、18年4月に移動販売「AozoraPizza」を開店。
「トレーラーに薪窯を積み、冷蔵庫や作業台なども設置しましたので、開業費は500万円ほど。公庫から融資を受けました」
 現在、営業は金・土・日曜、祝日の月曜のみで、場所はファーマーズマーケットや自宅前の駐車場など、10カ所ほどを巡っている。生地は祐介さんの手づくりで、数種類の小麦をブレンド。トッピングは富士宮市内の肉や魚、野菜を積極的に使っている。「宮ルゲリータ」はモッツァレラチーズも富士宮産だ。どれもおいしく、地元リピーターはもちろん、県外からも訪れる。

トレーラーの屋根に煙突穴を開けて、薪窯を設置。使っている薪は地域で間伐されたものだ。

じっくりと1日低温発酵させた生地は、風味が豊かで、もっちりとした食感。小麦もイタリア産から国産に替えた。写真は富士宮産モッツァレラチーズを使った宮ルゲリータ(みゃるげりーた)、1枚1400円(税込)。

 猪之頭への移住のときにお世話になった区長の佐野順一さんも、大塚さんを応援していて、よくピッツァを購入している。
「大塚さんのような若い家族が来てくれると集落がにぎやかになってうれしいですね。大塚さんは情報発信が得意なので、地区としても大助かりです」と佐野さんは頼もしそうな眼差しを向ける。
「区長さんには、家探しから出店場所の紹介まで、本当にお世話になりました」と祐介さん。
 昌美さんも都会とは違う地域の交流がうれしいと話す。「お客さんから卵を頂いたり、近所の方や大家さんから夕飯のおすそ分けを頂いたり、本当に助かっています」。
 移動販売が順調な祐介さんには、まだまだやりたいことがある。「裏の菜園で本格的にイタリア野菜を栽培したいですね。あと猪之頭地区に人が訪れるような仕組みを考えていきたい。具体的にはこれからですが、『田舎だから人が来ない』ではなく、『田舎でもわざわざ人が訪れる』。そんな魅力がある場所にしていきたい」と祐介さんは猪之頭地区の先を見据える。

家の裏にある小さな菜園も借り、今年から本格的にイタリア野菜を育て、祐介さん憧れの「半農半X」を目指す。

保育園の進級式だったこの日、移住者仲間や近所の子どもたちが大塚さんのところに集まっていた。


移住をサポートしてくれた区長の佐野さんと一緒に。猪之頭地区は、2016年から地元有志が移住をサポートし、5年間で9組30名が移住。

大塚さん家族もよく訪れる陣馬(じんば)の滝。富士山麓の湧水で、上流からの滝のほか、溶岩層のすき間からも水が湧き出している。

■富士宮市移住支援情報

富士山と豊富な水源が魅力的なまち

首都圏まで新幹線や車で約2時時間とアクセスがいい富士宮市。まちの自慢は各所から見ることができる富士山と豊富な水源だ。市では、オンラインでの相談窓口を開設。住宅購入や一戸建ての賃借に対する補助(最大160万円)、新富士駅から新幹線で首都圏に通勤する人に対する駐車場使用料の補助など支援がある。また猪之頭地区のように、市と地域が連携して移住定住をサポートしている地域もある。
問い合わせ 富士宮市企画戦略課 ☎0544-22-1215
https://www.fujinomiya-life.com

オンライン相談の様子(予約は上記ポータルサイトから)。

 

 

■静岡県移住支援情報

サイトで移住者のリアルな声を発信中!

東京・有楽町に常設している「“ふじのくにに住みかえる”静岡県移住相談センター」では、移住相談員と就職相談員が、移住に関する相談に対応。また移住・定住情報サイト「ゆとりすと静岡」内に設置している「静岡県オンライン移住相談センター」では、県内市町のオンライン移住相談窓口を紹介している。移住ポータルサイト「だもんで静岡県(https://damonde.pref.shizuoka.jp)」には、先輩移住者たちから寄せられた生活情報を掲載。
問い合わせ 静岡県移住相談センター ☎︎054-221-2610
https://iju.pref.shizuoka.jp

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