俳優・東出昌大の“今”を追ったドキュメンタリー映画『WILL』が2024年2月16日から公開される。彼はなぜ、現代人にとっては不便極まりないはずの山の中に居を構え、狩猟生活をしているのか。動物の生命をいただきながら自分の生命をつなぐ、原始的とも言えるほど生々しい生き方にこだわるの理由は何なのか。映画の内容を補足する、全4回のロングインタビュー、最終回。
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【東出昌大 実録インタビュー①】東出の現在。都会生活から完全脱却し、山の暮らしに定着した俳優が考える、“社会の本質”とは?
意外にもプライバシーがほとんど存在しない山暮らし
――山暮らし、狩猟生活をするようになって、都会で暮らしていた頃には思いもしなかったことを考えるようになったのではないかと思います。今の時点で一番の学びは、どんなことがありましたか?
(東出さん:以下、省略)「単純なことかもしれませんが、水ってこんなに冷たいんだとか、火はこんなに熱いんだというようなことを感じるようになりました。あとは、人との距離が近くなって、他人が自分にこんな言葉をかけてくれるんだとか。今のところそういうのが、田舎暮らしならではの学びだったかもしれません。でもやりたいことは、まだいろいろとあるんです。100年前に山暮らしをしていた人たちは化石燃料に頼らず、循環の中に生きていたはずです。肥溜めを作り、それを畑に撒いて、しっかり畝を作り、大豆を収穫したら味噌を作る。そういう循環の中で生きるようになりたいなと思っています」
(映画『WILL』より)©2024 SPACE SHOWER FILMS
――これは書かないでほしいということは書きませんけど、人間関係も含めて今の生活で嫌だったこともあったりしますか?
「それはもちろん。敢えて具体的には言いませんけど、いろいろありますよ。頭にくることもあります。でも、ちょっと時間を置くと、あの時に憤っていた自分が、なんだかもったいないなと思ったり。まあ、人間なんて、みんないびつですよ。そして、それだから楽しいってのもありますよ」
――田舎だと人間関係が濃厚だから、きつかったりしません? みんな近所の人の噂話とかすごくするし。
「する! そしてこっちの愉快なおっちゃんたちは、喧嘩が多い(笑)。そんなことで喧嘩⁉︎みたいなのはしょっちゅうですよ(笑)。移り住んでこちらの内実を知るほど、ええ〜みたいな話はいっぱいあります」
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この記事を書いた人
佐藤誠二朗
さとう せいじろう <編集者/ライター、コラムニスト> ●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長を務める。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社)はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。その他、『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物も多数。最新作『山の家のスローバラード 東京⇄山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』(百年舎)が好評発売中。
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