5月5日「ニワトリも人間も幸福である子供の日という今日の天気」。
百点満点の天気である。ビニールハウスの中はそのままでは猛暑となって、野菜が焼け死ぬ。だからビニールをたぐって換気したり、水やりしたりで僕は走り回る。けれど、そのことを除けば文句なしの空模様である。この下の写真は、生後半月のヒヨコもまじえ、いっせいに砂浴びを始めた場面である。少し日陰になっているのがお分かりか。頭上には太陽光発電のソーラーパネルがある。それが直射日光を遮るだけでなく、土にほどよい湿り気を保つ。ニワトリたちはそのことをよく知っている。体に付着している害虫を効率よく落とすためには、直射日光を受けてカラカラの土より、少しばかり水気を含んだ土の方が良いということを。
しかし、その砂浴びのグループに加わらず、我が道を行くものもいる。パネルの上に体を横たえ、こいつは目を細めながら強い日差しを受けている。もしかしたらこいつ、この後で、ソーラーパネルの下、湿り気のある土の現場に行って体を埋めるつもりかも。そうだとすると、人間のサウナと同じだな。まず熱いスチームで体温を上げ、次に水風呂に入って肌を刺激する、あのやり方。
5月6日「パンダは竹が好き、ニワトリは竹の子が好き」。
GWの終了とともに天気も大きく変化するようである。昨日までの強い光はない。そして風が強い。明日以降、雨、風ともに強くなり、荒れた天気になるらしい。ならば。3日前に完成させたビニールハウスの補強に精を出す。ありあわせの材料で強引に仕上げたハウスにはやはり弱点がある。どこが補強を要しているか。あちこちを入念に確かめる。
続いてもうひとつ別のハウスに向かう。トマトが20本。うち4本はもう花を咲かせている。結束してやろう。さらにその隣はピーマンとナスのハウスだ。ピーマンは親指くらいの実になっている。親株の成長のため、初なりの実は早めに摘み取るべしと言う。僕はこれからの暑い季節、トマトやピーマンを黒酢に浸して食べるのが好き。アマゾン経由で定期購入している。それがちょうど届いたところだ。ランチに食そう。
午前の仕事を終え、ランチで部屋に戻る。ここでもニワトリたちの聡明さを知らされる。ランチを用意するためキッチンと食卓を往復している間に、食卓に上がって皿をつつくものがいるのだ。こらっ、ダメだ、そこはダメだ!! 叱られたこともすぐ理解し、食卓から降りてはくれる。でも、僕が口に運ぶものには未練がある。待っていればおこぼれがもらえるかもな・・・そんな顔してすぐそばの、太陽光発電の機器の上で待ちの態勢に入る。それがこの下の写真である。
午後から発送荷物にとりかかる。タケノコを取りに竹林に入る前、1.8リットルの電気ポットを太陽光発電につないでおく。こうするとタケノコを茹でるお湯がすぐ手に入り、ガス代の節約にもなるのだ。そして・・・僕がタケノコ数本を抱いて庭に戻るや否や,ニワトリたちが集合する。キャベツも白菜も好きだ。しかし、タケノコに対する執着はそれよりずっとすさまじい。繊維質が胃腸のためにはよいからネ・・・そう思っているような気が僕はする。
いかなる困難に遭遇しても、しっかり地面に足を着け、手足を動かし、知恵を働かせ、暮らすなら、食べ物と電気と水を自分の力で確保するならば、人間どうにか生きてゆけるものなのさ・・・。冒頭に紹介した『田舎暮らしの本』7月号、そこに僕が記したことである。その食べ物のひとつとして卵がある。僕は仕事として使うので何十羽かのニワトリを必要とするが、自分のためだけであるならば5羽前後いれば十分だ。そのニワトリたち、卵だけでなく幸せをもくれるところがいい。「楽しい」とされる遊びは今の世に溢れているが、AIとかを代表とする人工知能、人口遊戯とは対極にある、それがニワトリの飼育である。アナタもぜひ田舎暮らしに挑戦するといい。虫はいたかい? どれどれ、おなかいっぱいになったかい? クククッ、コココッ・・・ニワトリたちと会話が出来るようになったらちょっとばかり世界が変わる。
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この記事を書いた人
中村顕治
【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。
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