猛暑、酷暑と口にするのもツラい暑さですが、言わなきゃやっていられないのもまた事実です。日中の徒歩や自転車での移動では溶けてしまいそうなほど。その点、クルマ移動は快適ではあります。しかし、乗ってすぐはハンドルに手が触れられないほどの高温になっていたり、走り出してもエアコンがなかなか効かないなんていうことも珍しくありません。しかし、ちょっとした工夫や知識で快適な車内にすることは可能です。酷暑時代の対処術を紹介しましょう。
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炎天下の車内は何度になるのか?
車内というのは、あらためて考えてみると、密閉された空間かつガラス張りという温室のようなものです。駐車中は防犯の観点からも窓を開けっ放ししておくこともできません。本題に入る前に、一体何度になるのか、実際に測ってみました。
※2024年7月下旬・東京にて計測
よくあるような、昼間の晴れた日、つまり、炎天下に放置したクルマのインパネ部分の温度を非接触温度計で測ってみると、なんと71度。こうなると、エアコンをつけてもすぐには冷えないですし、場合によってはハンドルなどをしっかりと握ることができないことも考えられます。エアコンだけに頼らない快適対策が必要ということになります。
直射日光が当たるだけに高温は想像していましたが、ここまで熱くなるとは……。もちろん、陽が当たっているインパネを触ると、やけどしそうです。
エアコンをつける前にやるべきこと
クルマのフロントを南に向けないように駐車
車内を高温にしないためには、そもそもクルマを駐車する場所が重要なんです。自宅の駐車場では難しいかもしれませんが、太陽を正面、つまり、南にクルマのフロントを向けないように駐車するだけでも、車内への直射日光の侵入を防ぐことができます。出先で駐車場を探す際は、頭に入れておくといいでしょう。実感できると思いますので、やってみてください。方角がわからない場合は、スマホの方位磁石(コンパス)機能を使うと便利ですよ。
温室が上がってしまった場合の特効薬
運転席とその対角線の後席の窓を全開にする
さて、クルマに乗り込んだら、いきなりエアコンをつけるのではなく、まず車内にこもった熱気を排出することが大切です。外の気温も高いですが、車内は熱がこもってもっと暑くなっているだけに、窓を開けることが重要になります。ただし、単に開ければいいというわけではありません。たとえば前席左右だけでは、後席は換気されませんし、すべての窓を全開にすると車内で入ってきた風同士が衝突して中の空気は外に出ていきません。そこで、運転席と、その対角線にある後席の窓(右ハンドルの場合は、左後方の窓)の2箇所を全開にすると効率的に換気できます。
右ハンドルならば後席左側の窓を開けます。これで、斜めに風が通り抜けるようになります。
外気導入もお忘れなく!
窓を開けたあと、ある程度車内温度が下がったら、クルマを走らせましょう。ずっと待っていても、車内温度は適温までには下がりません。走行する場合でも、しばらく窓は開けたままにしてください。さらに、エアコンを「外気導入」にしてください。フロントからの走行風が入ってくるので換気効率が上がります。この時点では、まだ、冷房を「強」にしないでください。
「外気導入」モードにすると、走行風が入ってくるので換気効率もアップ!
窓を開けながら20秒ぐらい冷房をつける
ある程度走って熱気が抜けたら、窓を閉める前に冷房をオンにします。エアコンの冷たい風で最後にもう一度、熱気を念のため押し出すイメージです。カーエアコンによっては、熱風が出てくることもありますが、その場合は、冷たい風が出てくるまで我慢してください。冷房をつけて窓を空けたままにしておくのは、時間にすれば20秒ぐらい。短時間で構いません。そのあとに、開けていた窓を閉めてください。
これで、時間をかけずに高温の室内温度を下げることができました。
最適な温度設定はいくつ?
窓を閉めたら、あとは冷房で車内を冷やすだけですが、この際に気になるのが設定温度です。よく目にしたり、耳にするのが家庭では28度というもので、クルマではどうなのでしょうか。
エアコンの設定温度は体感重視!25℃が最適効率
結論から言うと、クルマ場合は常に移動して向きが変わるだけでなく、車種によって広さや窓の面積が大きく異なるため、「体感重視で冷やしすぎないようにする」が最適解になります。風量も同様です。
ただし、エアコンはエンジンの動力を使って動かしているので燃費にも大きく関係してくるだけに、やみくもに冷やすのは考えものです。自動車用エアコンメーカーのカルソニックカンセイ(マレリ)が発表したデータによると一番バランスがいいのは25度とのことで、参考にしてみてください。
国産車の場合、設定温度の下限は18度ぐらいが一般的。車内は狭いですし、運転することで体を動かしているので、体感に合わせて設定してください。ただ、温度の下げすぎや、逆にエアコンをつけない行為はやめてください。体に負担がかからない温度に設定するのがベストです。無理は禁物です。
エアコン走行時には「内気循環」が効果的
先程までは、外気を取り入れた「外気導入」モードで室内温度を下げていましたが、熱気がクルマから出たら、「内気循環」モードに切り替えてください。「内気循環」モードにすると、冷房で冷やされた空気が再び車内を循環するので、外から入ってくる暑い空気を冷やし続けるよりも、ずっと効率的に車内温度を快適温度にすることができます。
オートかマニュアルか、どっちが効く!?
風量調整も重要な操作
状況に応じて風量を頻繁に変えたほうがいい場合もあります。その理由は、刻々と車内の温度、それにリンクして体感温度が変わっていくからです。そこで登場するのがオートエアコンです。フルオートエアコンも増えていて、これならば温度を設定しておくだけで、風量と吹き出し位置を自動で調整してくれます。
ここで迷うのがフルオートでお任せがいいのか、マニュアルで小まめに調整するほうががいいのか問題。
基本は、フルオートのほうが、リアルタイムで自動調整してくれるため無駄がありません。
気がついたら暑くなってきたので風量を増したり、逆に冷えてきたので風量を減らしたりすることはよくありますが、こういった手間がなくなります。当然、燃費への影響も最小限に抑えられます。ただし、フルオート、オートともに、つけ始めは設定温度に最短で近づけるようにするため、一気に冷やすことにより、風量がマックスになってうるさいこともあります。その際は、温度設定を低くしすぎないようにするなど、手動で調整するといいでしょう。
エコモードがついている場合、車種にもよりますが、燃費をよくするだけでなく、エアコンも一番効率がいいように保ってくれるので、活用してみましょう。
「史上最も暑い夏」が毎年更新される時代のクルマ選びとは?
ここまで猛暑が当たり前になると、クルマ選び自体も変わってくるかもしれません。ボディカラーはシルバーや白などの明るい色と、黒などの暗い色では、20度ぐらい差があるとされています。これは表面温度なので、車内ではこれほどの差にはならないにしても、車内もカラー別での違いが若干は出ます。
また、装備面では快適にしながら、エアコンの負担を減らす効果のあるサーキュレーターがついていたり、オプションで選べるクルマが増えてきました。「扇風機の併用で効率がアップする」というのは、家庭用エアコンでよくいわれますが、これと同じ効果がクルマに搭載されたサーキュレーターで期待できるというわけです。
サーキュレーターとは扇風機のことで、天井に付けるのが一般的です。車内が広いミニバンやハイト系の軽自動車で増えています。
正しい知識が身につけば、夏場でも快適なドライブが可能になります。ぜひ試してみてください。「今まで何をやっていたんだ?」「知らなくて損してた!」って思う人も少なくないと思いますよ!
文:近藤暁史
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この記事を書いた人
近藤暁史
こんどう あきふみ|編集・ライター。男だてらにお堅く学習院大学文学部国文学科卒。ファッション誌から一気に転身して、自動車専門誌の編集部へ。独立後は国内外の各媒体で編集・執筆、動画製作なども。新車、雑ネタを中心に、タイヤが付いているものならなんでも守備範囲。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自身のYouTubeチャンネル「こんどう自動車部」では、洗車・自動車のメンテナンスなどを中心に、クルマに関わる裏技を紹介中!
Website:https://office-mushroom.com/
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