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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【18】

掲載:2017年10月号

前回、イレギュラーでウッドデッキがほぼ完成した和田邸。邪魔な古材がなくなってスッキリした屋内で、今回は天井張りだ。やっと材を購入したと思ったら激安B級品で、助っ人の苦難は続く。

内装工事2発目は天井板張り。ずっと上を向いて、しかもこんな体勢での作業だけにツライ……。

恒例の奥多摩、長瀞、石岡の気温比べ

阪口「いやー、夏本番だね」
(原稿を書いているのは8月の夏真っ盛りですが、作業は4月なので長袖のモコモコスタイル)
水野「都心は毎日暑くて死にそう」
阪口「長瀞も暑いよー」
和田「茨城も暑い!」
中山「かわいそうにねえ。奥多摩は毎日涼しくて快適だよー。おっほっほ」
阪口「えー。奥多摩だって暑いじゃん」
 そこで昨年8月の平均最高気温を比較してみた(カッコ内は観測地点)。

中山「ホラホラ! ウチがダントツで涼しい! あー暑い暑い。こんな暑いとこにいたら死んじまうよ。早く涼しい奥多摩に帰りてー。おっほっほ」
一同「むかつく……」
和田「まあうちも夜になると、かなり涼しいけどね!」
阪口「うちも夜は涼しいよ。これも田舎暮らしの利点ですな」
水野「都心は夜も気温が下がらないから、エアコンかけっぱなし(泣)」
阪口「そういえば和田邸にはエアコン入れないの?」
和田「そんなゼイタクなものは入れません! うちは開口部が広いからね。自然換気で充分!」
水野「そうよねー。電気代かからないしねー」
和田「風はタダだからね!」

「奥多摩の恩を返せ」と本を突きつける和田

 さて、今回からは本来の内装工事に戻り、天井の仕上げである。
 天井の納めは、和室の場合は天井板を水平に張るのが普通だ。断熱のほか、屋根裏のホコリが落ちてこないなどのメリットがある。この場合の施工は、垂木(たるき)などから「釣り木」を下げ、下端に合わせて水平に野縁(のぶち)を組んで、下から「さお縁」で天井板を挟むようにして仕上げる。洋室の場合はクロス張りや石膏ボードで仕上げるのが普通だ。
 一方で吹き抜けの場合は、屋根の「裏側」に天井板を打ち付けていくんだが、常に上を向いての作業なので非常にツライ。
和田「これ! このように!」
 和田が手にしているのは、奥多摩の人力山荘での天井張りの写真である。
和田「天井張りは『大変!』だったんだから」
水野「恩があるから今返せって言いたいわけね(笑)」
阪口「あの晩のことはよく覚えてるよ。天井はがしたから、屋根のすき間から星が見えたんだよなあ。朝起きたら髪の毛凍ってたし」
中山「あれで室内温度が一気に下がったんだよね。やっぱ天井は、あったほうがいいんじゃないかと」
和田「いいの! うちは開放感が命だから!」
中山「……ちっ」(←じつは高いところに登りたくなかった)

「あのときの天井張りの恩を返せ!」と写真が掲載された本を、中山に突き付ける和田。

 仕方がないので作業を始めよう。天井板を張る前に、断熱材を入れていく。垂木の間隔は455㎜で、市販のグラスウールの断熱材も、それに合わせた幅になっている。しかし与えられたグラスウールは厚みがバラバラ。明らかにもらい物の寄せ集めだ。そのなかから厚手のものを選んで天井に入れていく。
阪口「なにしろ屋根は重要だからね。いいのを張らないと……、ってオイ! 裏表逆!」
和田「あれ!? そうなの?」
 言ってる先から間違って張りはじめた和田であった。
中山「相変わらず説明書を読まない男だねえ。まったく……」
一同「アンタもな!」
 グラスウールの長さの規格は、だいたい2740㎜で、一般的な壁の高さの最大(3mの角材を目いっぱい使った場合の長さ)に対応している。天井にもそのまま張っていけるが、和田家の場合、屋根材を打ち付けたときに貫通したビスのせいで、ビニールの包みがビリビリ破れ、作業ストレスが半端でない。仕方がないので切り張りすることに……。

これまた膨大な量の断熱材に四苦八苦。適当な大きさに切り揃えていく。

切った断熱材を垂木の間に押し込み、タッカーで留めていく。最初は脚立のテッペンと桁に足をかけるという危なっかしい状態で作業していたが、そのうち足場を組んだほうがいいということに気がついた。

二転三転で、翌月にはやり直し……

 断熱材を入れたところから順に天井板を張っていく。天井板は、和田にしては珍しく「加工済み」の化粧野地板で、普通の製材したままのものより5割増しくらいの「高級品」である。
水野「和田さんが高いの買うなんて珍しい!」
和田「しかも『相じゃくり』だから!(えっへん)」
阪口「板の張り方は、『千鳥』にするの?」
和田「なにその千鳥って!?」
中山「ちっ、……また余計なことを」
「千鳥」とは板の合わせ目をずらして張っていくことで、普通の「突きつけ」で仕上げるよりも若干の手間がかかるが、意匠的に美しい仕上がりとなるのだ。
中山「あとで目隠し(釘頭やすき間などの見苦しい部分に打つ化粧材のこと)打てばいいじゃん」
和田「それと、ビスの頭は気にしなくて大丈夫! これ買っといたから!」
 和田が取り出したのは、最近某ホームセンターで売り出し中の黒ビスである。
和田「これでビス頭が見えてもOK! 張り方も突きつけでいいよ」
 というわけで、普通に突きつけ打ちの黒ビス仕上げとなったんだが……。
 その翌月の作業のこと。
和田「ちょっとこれ塗ってほしいんだけど!」
 和田が持ち出したのは「砥の粉(とのこ)」であった。砥石を削った粉末で、板材などの塗料に使用するものだ。
阪口「なにすんの?」
和田「ビスの頭に塗ってって!」
一同「はあ?」
和田「黒ビスで仕上げようと思ったんだけど、思ってたのと違うから、これ塗って隠そうと思ってさ! よろしく!」
 言ってることが二転三転するのも和田邸の特徴である。
中山「オレはもう高いところ嫌だから! 阪口、よろしく!」
阪口「しょうがねえなあ……。じゃあ代わりに水野さん、写真撮ってよ」
 もはや誰がカメラマンやら、わからなくなってしまった人力社であった。

某ホームセンターで売り出した黒ビス。和田にとっては「清水の舞台から飛び降りる」ほどの買い物(←和田「そこまでじゃない」)。

黒ビスで仕上げていったんだが、次の作業日には心変わりしていた和田は、「砥の粉」を練って我われを待ち構えており……。

なぜか担当・水野が撮影し、カメラマン阪口が、砥の粉を塗るという訳のわからない結果に……。

激安の化粧野地板を「むぎゅーっ」と矯正

 さらに天井張りは続く。
 和田が用意したのは12尺(3.64m)の化粧野地板なんだが、相変わらず激安のを買ったらしく、狂いが凄まじい。手元では些少な誤差が、距離が長くなるにつれてどんどん拡大していくのだ。2人一組になって、1人が板を「むぎゅーっ」と矯正している間に1人がビスを打ち込んで固定するしか方法がない。
阪口「こりゃまたB級品にもほどがあるな。とほほ」
中山「12尺の材だから、なおさら反りがひどいんだよね。半分に切ればいいのに」
和田「ダメ! せっかく長いの買ったんだから!」
中山「じゃあけっこうすき間できるけど、いいのか?」
和田「いい!」
 そうはいっても人力では限度がある。満身の力を込めて矯正しても、最大で1㎝ものすき間ができた。仕方ないのでそのままビス留めしたんだが……。
和田「これはさすがにひどくね⁉」
中山「えー、すき間できるけどいいかって聞いたじゃんよ」
和田「にしてもひどすぎ!」
一同「安物を買ったオマエが悪い!」
 不平不満が噴出する天井板張りである。しかしそれ以上に困るのは足場板が不安定でグラグラなことだ。
中山「『けがと弁当は自分持ち』とはよく言うけど、他人の現場でけがしちゃ丸損だよ……。ほかの作業ないの?」(←奥多摩で墜落して右肩を強打して以来、高所恐怖症が倍増した)
和田「あるよ。壁材の受けの取り付け」
 壁材の「受け」……、つまり野縁材の端材を梁や柱に打ち付けて、石膏ボードや野地板などの壁材の受けにするんだが、しかしこれがまた地味で面倒な作業なのだ。しかも二重梁のすき間に至っては、インパクトドライバーが使えるスペースさえなく、面倒なことこのうえない。
中山「面倒くさい! ほかの仕事希望!」
和田「ワガママ言わない!」
 施主に一蹴されて渋々、つまらない「受け」の取り付け作業に従事する中山であった。

足場を組んでから、作業はすこぶる順調に。二人三脚で野地板を留めていく。やはりインフラって大事。

目線どころか、板で顔がすっぽり隠れている3人(右から助っ人・柴田さん、男子部隊の助っ人に入った担当・水野、中山)。

全体の4分の1ができたところで記念写真。3人も乗ると足場のたわみがけっこう怖い。

中山は地味な壁材の受けを取り付ける作業を黙々と。


 その一方で、DIY女子部隊は、粛々と壁の施工。
女子「あのー……。断熱材間違って切っちゃったんですけど」
和田「あ! 全然大丈夫だから! 気にしないで!」
助っ人一同「態度違いすぎじゃね?」(プンスカ!)

DIY女子は壁の断熱材張り。そういえば彼女らが切っているのは、例の古畳から回収したスタイロフォーム®ではないか。

阪口がスタイロフォーム®の切り方を説明。

 

適当な大きさに切ったスタイロフォーム®を間柱の間に押し込み、下地合板を張る。もちろん入らないときは「蹴り入れる」。

前回も登場の竹沢さん(右)と田辺さん(左)、初登場の塚田さん(中央)。3人揃ってキメカット!

 一方、助っ人の大谷さんは間柱(まばしら)の加工である。筋交いが交差する箇所に切り欠きを入れるんだが、以前、中山が逆に欠いたのとまったく同じ過ちを、大谷さんがやらかした。
大谷「す、すみません(汗)」
和田「弁償して! 弁償!」
 そしてやっとの思いで大谷さんが仕上げた間柱は、今度は天地が微妙に長すぎ……。そこで和田がお得意の力業で、木槌で強引に叩き込んだ。その途端、嫌な音とともに、間柱が真っ二つに割れてしまった。
阪口「あーあ。またやらかした」
中山「もはや建ててるんだか壊してるんだか、わからんな」
和田「誰か弁償して! 弁償!」
一同「自分で弁償しろ!」

試行錯誤の末、間柱に筋交いの切り欠きを入れ終えた大谷さんであったが、いざはめ込んでみると切り欠きの方向が逆! なんてこった!

しかも再チャレンジで完成した間柱を叩き割ってしまった和田の、うれしそうなこの顔。

DIYキッズも奮闘。お手伝いしたい年ごろの和田家長女・弥生。工具セットにご満悦の長男・康陽。

 

文/中山茂大 写真/阪口 克

過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回  壁の施工、窓の取り付け
第12回  差し鴨居 
第13回  外壁
第14回  はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ

人力社

ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com

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