掲載:2017年10月号
前回、イレギュラーでウッドデッキがほぼ完成した和田邸。邪魔な古材がなくなってスッキリした屋内で、今回は天井張りだ。やっと材を購入したと思ったら激安B級品で、助っ人の苦難は続く。
恒例の奥多摩、長瀞、石岡の気温比べ
阪口「いやー、夏本番だね」
(原稿を書いているのは8月の夏真っ盛りですが、作業は4月なので長袖のモコモコスタイル)
水野「都心は毎日暑くて死にそう」
阪口「長瀞も暑いよー」
和田「茨城も暑い!」
中山「かわいそうにねえ。奥多摩は毎日涼しくて快適だよー。おっほっほ」
阪口「えー。奥多摩だって暑いじゃん」
そこで昨年8月の平均最高気温を比較してみた(カッコ内は観測地点)。
中山「ホラホラ! ウチがダントツで涼しい! あー暑い暑い。こんな暑いとこにいたら死んじまうよ。早く涼しい奥多摩に帰りてー。おっほっほ」
一同「むかつく……」
和田「まあうちも夜になると、かなり涼しいけどね!」
阪口「うちも夜は涼しいよ。これも田舎暮らしの利点ですな」
水野「都心は夜も気温が下がらないから、エアコンかけっぱなし(泣)」
阪口「そういえば和田邸にはエアコン入れないの?」
和田「そんなゼイタクなものは入れません! うちは開口部が広いからね。自然換気で充分!」
水野「そうよねー。電気代かからないしねー」
和田「風はタダだからね!」
「奥多摩の恩を返せ」と本を突きつける和田
さて、今回からは本来の内装工事に戻り、天井の仕上げである。
天井の納めは、和室の場合は天井板を水平に張るのが普通だ。断熱のほか、屋根裏のホコリが落ちてこないなどのメリットがある。この場合の施工は、垂木(たるき)などから「釣り木」を下げ、下端に合わせて水平に野縁(のぶち)を組んで、下から「さお縁」で天井板を挟むようにして仕上げる。洋室の場合はクロス張りや石膏ボードで仕上げるのが普通だ。
一方で吹き抜けの場合は、屋根の「裏側」に天井板を打ち付けていくんだが、常に上を向いての作業なので非常にツライ。
和田「これ! このように!」
和田が手にしているのは、奥多摩の人力山荘での天井張りの写真である。
和田「天井張りは『大変!』だったんだから」
水野「恩があるから今返せって言いたいわけね(笑)」
阪口「あの晩のことはよく覚えてるよ。天井はがしたから、屋根のすき間から星が見えたんだよなあ。朝起きたら髪の毛凍ってたし」
中山「あれで室内温度が一気に下がったんだよね。やっぱ天井は、あったほうがいいんじゃないかと」
和田「いいの! うちは開放感が命だから!」
中山「……ちっ」(←じつは高いところに登りたくなかった)
仕方がないので作業を始めよう。天井板を張る前に、断熱材を入れていく。垂木の間隔は455㎜で、市販のグラスウールの断熱材も、それに合わせた幅になっている。しかし与えられたグラスウールは厚みがバラバラ。明らかにもらい物の寄せ集めだ。そのなかから厚手のものを選んで天井に入れていく。
阪口「なにしろ屋根は重要だからね。いいのを張らないと……、ってオイ! 裏表逆!」
和田「あれ!? そうなの?」
言ってる先から間違って張りはじめた和田であった。
中山「相変わらず説明書を読まない男だねえ。まったく……」
一同「アンタもな!」
グラスウールの長さの規格は、だいたい2740㎜で、一般的な壁の高さの最大(3mの角材を目いっぱい使った場合の長さ)に対応している。天井にもそのまま張っていけるが、和田家の場合、屋根材を打ち付けたときに貫通したビスのせいで、ビニールの包みがビリビリ破れ、作業ストレスが半端でない。仕方がないので切り張りすることに……。
二転三転で、翌月にはやり直し……
断熱材を入れたところから順に天井板を張っていく。天井板は、和田にしては珍しく「加工済み」の化粧野地板で、普通の製材したままのものより5割増しくらいの「高級品」である。
水野「和田さんが高いの買うなんて珍しい!」
和田「しかも『相じゃくり』だから!(えっへん)」
阪口「板の張り方は、『千鳥』にするの?」
和田「なにその千鳥って!?」
中山「ちっ、……また余計なことを」
「千鳥」とは板の合わせ目をずらして張っていくことで、普通の「突きつけ」で仕上げるよりも若干の手間がかかるが、意匠的に美しい仕上がりとなるのだ。
中山「あとで目隠し(釘頭やすき間などの見苦しい部分に打つ化粧材のこと)打てばいいじゃん」
和田「それと、ビスの頭は気にしなくて大丈夫! これ買っといたから!」
和田が取り出したのは、最近某ホームセンターで売り出し中の黒ビスである。
和田「これでビス頭が見えてもOK! 張り方も突きつけでいいよ」
というわけで、普通に突きつけ打ちの黒ビス仕上げとなったんだが……。
その翌月の作業のこと。
和田「ちょっとこれ塗ってほしいんだけど!」
和田が持ち出したのは「砥の粉(とのこ)」であった。砥石を削った粉末で、板材などの塗料に使用するものだ。
阪口「なにすんの?」
和田「ビスの頭に塗ってって!」
一同「はあ?」
和田「黒ビスで仕上げようと思ったんだけど、思ってたのと違うから、これ塗って隠そうと思ってさ! よろしく!」
言ってることが二転三転するのも和田邸の特徴である。
中山「オレはもう高いところ嫌だから! 阪口、よろしく!」
阪口「しょうがねえなあ……。じゃあ代わりに水野さん、写真撮ってよ」
もはや誰がカメラマンやら、わからなくなってしまった人力社であった。
激安の化粧野地板を「むぎゅーっ」と矯正
さらに天井張りは続く。
和田が用意したのは12尺(3.64m)の化粧野地板なんだが、相変わらず激安のを買ったらしく、狂いが凄まじい。手元では些少な誤差が、距離が長くなるにつれてどんどん拡大していくのだ。2人一組になって、1人が板を「むぎゅーっ」と矯正している間に1人がビスを打ち込んで固定するしか方法がない。
阪口「こりゃまたB級品にもほどがあるな。とほほ」
中山「12尺の材だから、なおさら反りがひどいんだよね。半分に切ればいいのに」
和田「ダメ! せっかく長いの買ったんだから!」
中山「じゃあけっこうすき間できるけど、いいのか?」
和田「いい!」
そうはいっても人力では限度がある。満身の力を込めて矯正しても、最大で1㎝ものすき間ができた。仕方ないのでそのままビス留めしたんだが……。
和田「これはさすがにひどくね⁉」
中山「えー、すき間できるけどいいかって聞いたじゃんよ」
和田「にしてもひどすぎ!」
一同「安物を買ったオマエが悪い!」
不平不満が噴出する天井板張りである。しかしそれ以上に困るのは足場板が不安定でグラグラなことだ。
中山「『けがと弁当は自分持ち』とはよく言うけど、他人の現場でけがしちゃ丸損だよ……。ほかの作業ないの?」(←奥多摩で墜落して右肩を強打して以来、高所恐怖症が倍増した)
和田「あるよ。壁材の受けの取り付け」
壁材の「受け」……、つまり野縁材の端材を梁や柱に打ち付けて、石膏ボードや野地板などの壁材の受けにするんだが、しかしこれがまた地味で面倒な作業なのだ。しかも二重梁のすき間に至っては、インパクトドライバーが使えるスペースさえなく、面倒なことこのうえない。
中山「面倒くさい! ほかの仕事希望!」
和田「ワガママ言わない!」
施主に一蹴されて渋々、つまらない「受け」の取り付け作業に従事する中山であった。
その一方で、DIY女子部隊は、粛々と壁の施工。
女子「あのー……。断熱材間違って切っちゃったんですけど」
和田「あ! 全然大丈夫だから! 気にしないで!」
助っ人一同「態度違いすぎじゃね?」(プンスカ!)
一方、助っ人の大谷さんは間柱(まばしら)の加工である。筋交いが交差する箇所に切り欠きを入れるんだが、以前、中山が逆に欠いたのとまったく同じ過ちを、大谷さんがやらかした。
大谷「す、すみません(汗)」
和田「弁償して! 弁償!」
そしてやっとの思いで大谷さんが仕上げた間柱は、今度は天地が微妙に長すぎ……。そこで和田がお得意の力業で、木槌で強引に叩き込んだ。その途端、嫌な音とともに、間柱が真っ二つに割れてしまった。
阪口「あーあ。またやらかした」
中山「もはや建ててるんだか壊してるんだか、わからんな」
和田「誰か弁償して! 弁償!」
一同「自分で弁償しろ!」
文/中山茂大 写真/阪口 克
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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