掲載:2024年6月号
初夏の日差しを浴びて
春野菜の収穫と夏野菜のお世話が本格化
気温が高まり地温が安定する6月は、日照時間も長くなり、日に日に野菜の生長を感じます。収穫、定植、誘引や整枝、草刈り草マルチ……。忙しくも充実した初夏の菜園シーズンです。
6月 気温上昇・地温安定
春先に定植した葉菜類の収穫期。伸びが早くなった草は刈って株元に敷き、草マルチに。
○高温性野菜の定植・種蒔き
最低気温も充分に上がり、地温が安定する6月は、熱帯原産の野菜が育ちやすくなります。スイカ、日本カボチャ、ゴーヤー、サツマイモ、ショウガなど、熱帯や砂漠出身の野菜たちは、遅霜の時期を過ぎればスタートできますが、5月初旬はまだ寒く生育は緩慢、地温が高くなってからのほうが育てやすいです。
○越冬・春蒔き野菜の収穫
冬越しで育てたタマネギやニンニク、エンドウやソラマメ、春蒔きした葉菜類や根菜類は本格的な収穫シーズンです。収穫遅れで傷みやすいので、適期を逃さず早めに穫って、フレッシュな初夏の味を楽しみましょう。
越冬野菜のソラマメは、サヤが下を向きはじめたら収穫。茎が倒れないよう支柱に誘引しておくとよく育つ。
○5月植え夏野菜のお世話
トマト、キュウリ、ピーマン、ナスなど5月に定植した夏野菜の生育は、最初はゆっくり、6月に入るとようやく大きくなってきます。育ちに応じて支柱に誘引しましょう。夏至を過ぎて日照時間が減少に向かうと、夏野菜は盛んに花を咲かせて実を付ける方向に向かいます。伸びたわき芽を除くお世話は、夏至の時期から本格化します。
5月に植えたトマトは、6月に入って気温が上がると伸び始める。支柱に誘引し、花が咲いたら芽欠きもスタート。
○梅雨入りと草マルチ
本格的な高温多雨は7月に入ってからですが、6月は梅雨入りのシーズン。草の生育も旺盛になってきます。野菜が草に負けないよう、株の周囲を草刈り草マルチしてください。発芽に水分が必要なニンジンの種蒔きは、梅雨の間に済ませましょう。
高温を好むサツマイモは気温の上がる6月が植え付け適期。土に挿したら水やりと草マルチで活着を促す。
最近は6月に高温乾燥する日が多い。スムーズな生育には水やりがたいせつ。
ナス
垂直仕立てで夏から秋まで長期収穫
ナスは1株の樹から、夏から秋まで長くたくさん収穫できます。コツは根を深くしっかりと張らせ、丈夫な樹を育てること。誘引して枝を上へと伸ばし、草マルチと水やりでスムーズな生長を促しましょう。
多くの種類があるナスのなかで、ポピュラーな中長ナス。育てやすく幅広く料理に使えてプチ自給菜園向き。写真は最もポピュラーな「千両二号」(交配種)の片親になったともいわれる「真黒早生」(固定種)。
自然菜園でプチ自給のための
ナス 3つのポイント
根を3m以上張るナスの樹は、夏に入って実を次々に付けるだけでなく、盛夏を過ぎると長期にわたって濃厚な味わいの秋ナスがなります。3つのポイントを押さえて育てましょう。
①草マルチと水やり
アジアモンスーン気候の高温多湿で肥沃な場所が原産のナスは、高い地温と充分な水分のもとでよく育ちます。生育初期から株の周囲を草マルチして土の乾燥を防ぐのがポイントですが、最初は地温を高めるため、定植した苗の根鉢の上には日が当たるよう草マルチしないのもコツです。また、最近は定植後の5月~6月に雨が降らず、乾燥する年が多いですが、週に1度のペースでたっぷり水やりして、根を深く張らせましょう。
②1本支柱に垂直に誘引
ナスの支柱の立て方はさまざまあり、私もいろいろ試してきました。いま、自然菜園で勧めるのは垂直に立てた1本の支柱に、すべての枝をまとめて誘引する方法です。
植物は枝を垂直方向に伸ばすほど、植物ホルモンの流れがよくなり、旺盛に生長します。ナスも根張りがよくなり、丈夫な樹に育って、長くたくさん収穫できるようになります。
③早めの収穫
果菜類は実を付けると樹の生長が抑えられます。実を収穫せずにおくと、樹が弱ってしまいます。早め早めに穫って、ナスの樹の勢いを保つのが長期収穫のたいせつなポイントです。
畑の準備
ネギクラツキを準備する
○はじめて野菜を育てる畝では定植1カ月前に、1㎡当たり●完熟堆肥2~3L●もみ殻燻炭1~2L●バットグアノ100gを施して表面の土を混ぜておく。○肥沃な畑を好むため、定植1カ月前に、予定地に完熟堆肥を一握り入れてネギを植えるネギクラツキを準備する。土の微生物が育まれ、土が豊かになる。
定植
遅霜の季節が過ぎてから
ナスは霜に当たると枯れるため、遅霜の季節を過ぎてから畑に定植します。地温15℃、平均気温18℃、フジの花が満開、小麦が出穂するころです。
苗の選び方
フレッシュな若苗が根付きやすい
生育中の若苗は根が白く勢いがあり、定植後にそのまま根を伸ばします。○本葉5~6枚の若苗がベスト。○できれば双葉が付いたものを。○節間が短くがっちりした姿の苗を選ぶ。○定植直前に購入するが、しばらく置く場合は一回り大きいポットに培養土を足して移植する。
定植の手順
①バケツに3cmほどストチュウ水※1を入れ、定植の3時間ほど前からポットの底を浸して、苗にたっぷり水を吸わせておきます。
※1 雨水に似た野菜の栄養ドリンク。酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL )3杯の原液を混ぜる。
②ネギクラツキのネギを抜き、支柱の南側に植え穴を掘ります。苗の根鉢の上面と地面が同じ高さになる深さにしてください。
③コンパニオンプランツのネギ(ネギクラツキから抜いたものでよい)またはニラを、植え穴の壁に立てかけるように置きます。長く伸びた葉は切り落としたほうが根付きが早いです。
④根鉢にネギが沿うように苗を植え穴に置き、掘った土を天地そのまま隙間に入れ、鎮圧して根鉢と周囲の土に密着させます。
⑤刈った草で株の周囲を草マルチします。ただし根鉢の上は草マルチせず、日を当てて地温を上げましょう。苗は風で傾かないように、麻ひもなどを8の字にかけて支柱に誘引します。
⑥配置は幅1mの畝なら両側互い違いになるように。株間は最低50cm、面積にゆとりがあれば80cm以上とります。
お世話
一番花が咲いたらわき芽欠き
一番花が咲いたら、花のすぐ下から出る太いわき芽を残し、それより下のわき芽はすべて欠き取ります。一番花より上に出るわき芽は欠かずに伸ばし、支柱に誘引してください。
枝をまとめて垂直支柱に誘引
枝が伸び始めたら広がらないようにまとめて誘引します。初回に各枝がくっつくほどまで絞るのがコツです。
垂直に立てた1本の支柱にすべての枝を誘引。
それぞれの枝に麻ひもを8の字にかけ、まとめて支柱に引き寄せる
各枝ごとにひもがけして支柱に縛ってもよい。
枝が伸びたら上側も同様に誘引する。枝をしっかり絞って垂直に伸ばすと葉や実は外向きに付く。枝が中途半端に開くと内側に実が付いて収穫しにくくなるので注意。
週に1度たっぷり水やり
ナスの生長には水分が欠かせません。水分不足で生育が滞ると、なかなか回復せず、その後の実付きも悪くなります。定植後は降雨の有無にかかわらず、週に1度のペースでストチュウ水を用いて土深くまで届くようたっぷり水やりして、根の生長を促してください。
水やりは早朝か夕方、葉の上から夕立のようにかける。
真夏に向けて草マルチを重ねる
梅雨も後半になり気温が充分に上がったら、株元を開けずに草マルチを敷き詰め、通路や畦の草も刈って敷き重ねていきます。梅雨明け直前には畝全体を草マルチや敷きワラで覆い、真夏の高温乾燥に備えましょう。梅雨で湿った土をできるだけ乾かさないよう、ナスには厚く草マルチしておくのがコツです。
収穫
小さめで早めに穫るほど次々に実が付く
実が付きはじめた後は、市販のナスより小さめで穫ると、樹が勢いを保って次々に実を付け、長くたくさん収穫できます。なり始めの6月、7月中は特に、早めの収穫がたいせつです。
収穫開始後の水やりと補い
収穫が始まると、ナスは実を大きくするためにさらに水分を必要とします。週に1度の水やりは、1株当たり10Lほどを3回に分けて、しっかりと土に染み込ませましょう。水やりはナスにとっていちばんの補いです。そのうえで水やりと同時に週に1度、株の周りに米ぬか1:油かす1を混ぜて補ってください。
米ぬかと油かすを混ぜて、1株に一握り、草マルチの上からぐるりと補う。
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜 ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』、新装版『無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜』(すべて宝島社)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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