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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(月)
890円(税込)

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異常気象―そしてパリ五輪/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(56)【千葉県八街市】

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 連日、「猛暑、熱中症、命の危険が伴う暑さ」・・・そんな言葉をテレビのニュースで聞くばかりの7月だったが、はや8月に入った。今日8月1日、仕事を終えて晩酌しながら見たテレビでは「今年の7月は過去120年で最も暑かった・・・」そう伝えられていた。では、今年に次ぐ暑さだったのはいつ・・・46年前、僕が31歳の時だということをそのテレビで知った。最初の田舎暮らしを始めたのは32歳で、31歳当時はまだ3Kの公団住宅での暮らしだった。そうか、アレは46年前のことだったのか・・・。アレとは、ある晩のことだ、寝苦しさで目が覚めた。4畳半の寝室から寝ぼけ半分で這い出して、フローリングになっている台所に行った。冷蔵庫の扉を開けて頭を突っ込み、しばらく僕は冷気を浴びた。今はどこの家にもあるエアコンというありふれた品。しかし当時はまだ金持ちの人だけが持つ贅沢品だったのだ。電話だってジーコン・ジーコンと穴に指を入れて回転させる黒電話だった。通りを歩きながら誰かと話ができる・・・スマホなんておとぎ話の世界だった。

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 全国的に米が不作、一等米が少ない。沖縄ではパイナップルが生育不良。野菜も高温に泣かされる農家が多い、そうメディアが伝える。いずれも遠い所での話だと思っていたが、身近な場所でも発生した。近隣に大々的にトウモロコシを栽培する農家がある。少しずつ播種時期をずらして3つの畑で作るトウモロコシ、その数は何千本かの単位。3つの畑での最初の収穫が始まったのは7月半ばだったと思う。ところが、収穫が始まって3日目に姿は全く見えなくなり、トラクターで粉砕されたトウモロコシが土に埋まっていた。品質不良だったのかな・・・僕はランニングの途中でそう思ったのだが、なんと、次の畑、もうひとつの畑、すべてが相次いでトラクターで粉々にされた。収穫皆無である。トウモロコシ栽培の名人とも言えるその人が栽培のミスを犯すはずはない。本人から直接話を聞いてはいないが、考えられるのは高温と短い梅雨がもたらした水不足だ。雄花の生育が悪く、授粉と結実が悪かったのではないか、僕はそう推測した。

 高温でひしゃげたピーマン、ひび割れたトマト、大きくなり過ぎたキャベツ・・・そういったものを農家から買い付けて低価格で販売する会社が登場したと聞く。「今までの育て方では難しくなっている。苗を植える時期や品種など何かしらの対策が必要になる・・・」あるブロッコリー農家はそう語っているが、僕も同感だ。フードロス削減のために不出来な野菜を買い付けて消費者に販売する、これはひとつの朗報であるのは間違いない。その一方で、僕の目を引いたものがある。『週刊新潮』8月8日号。そこに「新・日本の農業危機」と題するこんな記事があった。

1000万人超から30万人に激減へ

誰が農家を殺すのか

コスト倍増なのに「大根」は30年前も今も50円

 連日のこの暑さ。高齢者が多い農業の世界。熱中症で死亡したと伝えられる中で目立つ事例は畑作業での高齢者である。今後暑さに耐えきれず(人間も作物も)農業からギブアップするケースはさらに多くなるかもしれない。肥料も資材も値上がりするのに、大根1本50円(さすがこの安値には僕も?マークを付けるけれど)、相対的に野菜が安値を押し付けられていることは間違いあるまい。理由は、「毎日使う物」だからだ。頻繁に使う物ゆえ消費者は安くあってほしいと願う、わずかな額の値上がりにも敏感になる・・・野菜という商品、農家という職業・・・もしかしたらそれは宿命なのかも知れない。でも本当は、食べ物が人間の体を作り、それで生み出される活動力、維持される健康、これでもって人生の「必要経費」はむしろ安上がりになる。何十年にわたる自分の経験で僕は確信する。大根1本200円、キャベツ1個300円、費用対効果はこのプライスでも十分だろう。

 農家がいくら頑張ろうとしても地球規模の異常気象には太刀打ちできない。今後、我らにとって最悪のシナリオとは、この連日の暑さで肉体的な苦しみをまず強いられること。同時に野菜も果物もダメージを受け、海で言えばサンマもウニもブリもサケも獲れなくなってダブルパンチを食らうこと・・・。今年の暑さは具体的な数字にも表れている。7月、東京消防庁の出動件数は9万1614件、熱中症疑いの死者は123人だったという。

 今回のタイトルは、異常気象とオリンピック、これを並列に掲げた。前者は楽しいテーマではない。長期予報によると今の高温状況はさらに1カ月続くらしい。そんな中、ここで、ひたすら僕が暑さを嘆いては、読む人も、書く方も、息苦しさが募るばかりだ。少しは息抜きのシーンも必要だ。そうしないと「ココロの熱中症」に見舞われる。時あたかもパリ五輪が開催中。アスリートたちの戦いをまじえ、いっとき暑さを忘れるポジティブな場面を持ちたい。複合のテーマとするのはそのためである。

この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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