掲載:2024年11月号
イチゴ
1~2年で植え替えて
小さい苗で大きな実がいっぱい
多年草のイチゴは一度植えれば同じ場所から毎年収穫できます。ただし年々実が小さくなるため、ランナーを伸ばして増える株を1~2年ごとに採って植え替えるのがコツ。プランターでもよく育ちます。
へたの反り返った完熟イチゴは家庭菜園の初夏の楽しみ。
自然菜園でプチ自給のための
イチゴ 3つのポイント
①品種を選んで浅植え
日本にも自生する多年草のイチゴ。とはいえ栽培種は冷涼で雨の少ないヨーロッパや南米原産で、高温多湿の日本では病虫害を受けやすく、無農薬で育てるのが難しい野菜です。農家ではハウス栽培されています。
自然菜園で露地で育てるには育てやすい品種を選ぶのがポイント。かつて西日本の主力品種だった「宝交早生(ほうこうわせ)」や、静岡で石垣イチゴとして栽培される「章姫(あきひめ)」、家庭菜園用に最近人気の「四季成りイチゴ」など、甘味とともに酸味のある品種が挙げられます。
根腐れしやすいため、苗は浅く定植してください。
②開花後は茎を縛って水やり
イチゴは過湿を嫌います。春に花が咲いたら、茎をまとめて縛ると風通しがよくなり、ナメクジやアリの被害も減ってよく育ちます。
花が青い実になる時期には、実を大きくするために水分が必要です。1週間雨がなければ朝か夕方にストチュウ水※をたっぷりやってください。葉に水がかかると病害が出やすいため、水やりは株元にするのもコツです。
※ 雨水に似た野菜の栄養ドリンク。酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL )3杯の原液を混ぜる。
③水やりは収穫後の夕方に
実が赤くなった後に、水分を与えすぎると実が傷みやすく味も落ちます。水やりせずにしっかりと草マルチして、病害につながる雨による泥はねなどを防ぎましょう。1週間雨がなければ、実を収穫した後、夕方にストチュウ水で水やりします。
畑の準備
水はけのよい畝に
バットグアノの補いが効果的
○水はけよく肥沃な土を好む。○水はけが悪い畑では病害を受けやすいため高畝にする。○ネギ、ニンニク、タマネギなど、ニラを除くヒガンバナ科の野菜の跡地でよく育つ。○リン酸を好みバットグアノの補いが効果的。○初めて野菜を育てる畝では1㎡当たり●完熟堆肥1~2L●もみ殻燻炭1L●バットグアノ100~150gを定植1カ月前までに施して表面の土と混ぜて準備する。
畝を立てたら完熟堆肥、もみ殻燻炭を全面に撒き、レーキを使って表面の土と混ぜておく。深く耕す必要はない。
定植
本葉3~4枚の若苗を浅植え
イチゴの苗は秋と春に出回り、秋春いずれも定植できますが、たくさん収穫できるのは寒さに当たって花がよく付く秋定植です。
苗はできれば葉が3~4枚のずんぐりした小さい若苗を選びます。活着がよく大きい実が付きます。大苗は花芽が多く付いて実が小さくなりがちで、寒さにも弱いです。
根腐れしやすいのでクラウンを土に埋めないよう、浅植えしてください。
定植の手順
①苗は定植2時間ほど前からポットの底を水に浸して底面吸水させておく。
②定植部分の草を地際から刈って除き、植え穴を掘る。
③花が咲き、実が付くのは親株から伸びたランナーの反対側。定植では親株から伸びたランナーを畝の内側に揃えて植え付ける。
④根鉢の上面が地面より少し高くなる程度の浅植えに。掘った土は上下そのまま根鉢と穴の隙間に戻す。隣の株との間隔は30cmほど。
⑤周囲からしっかりと鎮圧し、根鉢と土を密着させる。クラウンが埋まらないよう、根鉢の上に土をかけ過ぎないで。
⑥日中に地温が上がるよう、株元を空けて周囲に草マルチする。
⑦定植後、秋に咲いた花や伸びたランナーは切り除く。
お世話
越冬時期は草を刈らず
サクラが咲く前に下葉を欠き取る
定植後、冬の間は寒さと乾燥を和らげるため、ハコベやイヌノフグリなどの冬草を除かず、イチゴの枯れた下葉も付けたままにしておきます。
ニンニク、ネギと混植し、冬草に埋もれるように越冬したイチゴ。
サクラの開花前にはプランター、畑ともに枯れた下葉を除いて風通しをよくする。
茎を縛って株を直立させ
草を刈って草マルチを重ねる
開花前からは株の周囲の草を地際から刈り、草マルチを重ねて乾燥と雨による泥の跳ね返りを防ぎます。
さらに茎をまとめてひもで縛り、株全体を直立させると植物ホルモンがよく働いて病害を受けにくくなり、実の糖度も上がります。また、花や実が地面に届きにくくなってナメクジやアリの被害も減ります。
収穫時期までは、伸びたランナーを取り除く。枯れた下葉も欠き取って風通しよく育てる。
株元の草が生えたら適宜地際から刈り、周囲の草も刈って草マルチを敷き重ねていく。
開花前には草マルチの上から米ぬかを一握りぐるりと補う。実を付けた後の補いは病虫害の原因になるため避ける。
茎をまとめて株元を麻ひもで縛り、株全体を直立させる。
虫の少ない時期は人工授粉
実が青いうちは水やりを
開花後、低温や多雨、マンションの3階以上などで虫の飛来が少ないと、受粉不良のため実の形がいびつになります。この場合はほかの株の花粉が雌しべに付くよう、人工授粉をしてください。また、受粉を助けるハチを呼ぶには、マリーゴールドなどイチゴと同時期に咲く花を混植するのも効果的です。
実が赤くなるまでの期間、1週間降雨がないときはストチュウ水を水やりしましょう。実付きがぐっとよくなります。
人工授粉は耳かきの綿毛ややわらかい筆の先などで花をなで、雌しべに花粉をまんべんなく付ける。
水やりは朝か夕方に。葉にかからないよう、株元にストチュウ水をたっぷりと。
収穫
ヘタが反り返ったら完熟
降雨前日は未完熟の赤い実も穫る
実が赤くなり、ヘタが反り返ったら完熟、収穫です。遅れずにどんどん穫れば穫るほど次々に実を付けます。
雨に当たると実が傷みやすく味も落ちるので、降雨前日には赤い実は未完熟でも穫りましょう。
ヘタが反り返った完熟穫り自家製イチゴの味は格別。
苗採りと移植
1~2年に一度はプランターから苗を取り
次男(子株)以降を移植する
毎年大きな実を穫るには、1~2年に一度、移植します。収穫終了後にランナーを伸ばし、そこに付く子株をポットに受けて苗取り育苗してください。苗の病害を避けるには、畑に栽培した株も掘り上げてプランターに移植したうえ、伸びたランナーから次男以降を苗取りするのがコツです。
苗取り育苗した子株の移植時期や手順は定植にならいます。
ランナーを伸ばしながら、長男、次男、三男と子株を付けていく。
伸びたランナーの最初に付く長男は親の病気を受け継ぐことがあるため、もとのプランターに根付かせ、さらに伸びたランナーに付く次男以降をポットに受けて苗にする。親株からのランナーは移植時まで切らずにおく。
育苗土を詰めたポットにランナーの端をピンで留めるだけ。根を埋める必要はない。
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜 ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』、新装版『無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜』(すべて宝島社)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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