子育てを機に故郷である大分県に移り住んだ女優の財前直見さん。ドラマや映画の仕事があるときだけ上京し、普段は両親と息子の4人で大分で暮らしています。広大な畑で作物を育て、収穫し、料理し、加工する自給自足に近い生活。その充実の「食道楽」暮らしをご紹介します。
父母を助け、息子に大分の自然と暮らしを見せたい
「故郷である大分県に戻り、14年が経ちました。今、私はここ大分で、息子と父母と4人で暮らしています」
普段は大分市にある実家で生活している財前さんだが、車で1時間半ほどの国東(くにさき)半島には財前家が管理する土地がある。山と田んぼと畑がそれぞれ1800坪あり、一年を通してさまざまな作物が穫れる。
「家族4人が食べるだけなので、父が1人で山の手入れをし、畑を耕しています。若いころからの農作業で足腰が強く、病気ひとつしたことがない父でも、さすがに80歳を超えた身にとってはなかなかの重労働。父を少しだけでも支えられたらと、大分に戻ろうと思ったのです」
また、お母さまは料理好きが高じて調理師免許まで取得してしまったほどの料理の達人。
「我が家の数々のレシピは母の頭の中にしかないので、今、私はそのレシピを1つひとつ紙に書き起こしています。母のレシピを習得し、形に残すのも、私が大分へ戻ることを決めた理由です」
そして、大分への移住を決めたいちばんの理由が、今年15歳になる一人息子の存在だ。
「18歳から20年余りを東京で暮らしてきた私にとって、幼少期の大分での暮らしはとても貴重なものでした。人と自然の営み――父と母は、それを言葉にすることなく、当たり前のこととして80 年以上生きてきました。私自身、残り半分の人生を大好きな大分で過ごしたい。そして、その暮らしを息子にも見せたい――そんな想いで、日々暮らしています」
常備菜、スキンケア、衣服まで手づくりを楽しむ
春夏秋冬、季節ごとにさまざまな作物が穫れる財前家では、人の営みも活気に満ちている。作物をどんどん形に変えるさまは、さながら「直見工房」と呼びたいほどだ。
「タケノコは、まだ露が付いているうちに皮をむいて砂糖とみりんで煮絡め、コーティング。そうすることで、冷蔵しても冷凍しても、スカスカになることなく、ずっとおいしくいただけるんです。毎年、梅雨入りすると大量に穫れる梅は、梅干し、はちみつ漬け、梅酒、しょうゆ漬けなど、いろいろな保存食にして一年中楽しみます。田舎の山に自生しているビワの木は、実をお酒やはちみつに漬けたり、
葉をホワイトリカーに漬けてビワの葉エキスや化粧水をつくったり。ビワの葉エキスは、やけどや切り傷、虫刺され、なんにでも効いて重宝しています」
料理だけにとどまらない。たんすに眠っているたくさんの古い着物をリメイクして、スカートやバッグ、テーブルランナー、マスクなどをつくり、新たな命を吹き込んでいる。
「田舎暮らしというと、皆さん、さぞかしゆったり時間が流れているだろうと想像なさるのですが、自然には旬があって、人間の都合には合わせてくれないことがおわかりいただけるでしょう? そう、我が家の田舎暮らしは、朝から夜まで大忙しなんです」
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする