長野県北部の豪雪地帯に引っ越した最初の冬、いくらファンヒーターを焚いても部屋が暖まらない状況に苦悶し、薪ストーブ購入を決めた筆者。そこから薪となる木を探し、運搬手段を検討し、かたい木を割るために奮闘する日々が始まった。
私が長野県北部の豪雪地帯の森に立つ家に引っ越してきたのは2017冬の春のこと。引っ越し直後は薪ストーブ購入は考えていなかったが、寒さに震え結露に頭を抱えた最初の冬ををやっとのことで乗り越えたとき、薪ストーブはダークホースのごとく、ほしいものリストのぶっちぎりトップに躍り出ていた。
選んだストーブは、モキ製作所のMD70。ガラス窓がないので、ソファでくつろぎながら炎を眺める暮らしは実現できそうにないが、天板に複数の鍋を載せてコトコト煮込める実力派だ。
薪ストーブを設置したら、次なるミッションは燃料である薪を、できれば無料で調達すること。しかし、そこからが苦労の連続だった。
森林整備や河川整備などの伐採木の配布は行われているようだが、私の車は小回り自慢のアルト。積載量が限られ過ぎており、配布場所がそう近くないことを考えるといい方法とはいえない。知り合いのリンゴ農家さんにも剪定した木をもらえないか聞いてみたが、「いつも決まった人にあげている」や「うちは薪焚きのお風呂なの」といった返事だった。
そんなとき、「いつも木をもらってくれる人が薪をやめたから、あげますよ」というリンゴ農家さんと知り合いに。剪定するたびにアルトの荷台いっぱいに積んで2往復分くらいの木や枝をもらい、さらに秋にはおいしいリンゴまで頂けることになった。
リンゴの木はかたいので、すべて手割りは難しい。薪割り機レンタルもあるが、車で取りに行かねばならず、アルトにはとうてい無理な相談である。熟考の末、奮発して薪割り機を購入。作業効率が格段にアップした。
現在、いつも本誌の取材で撮影を担当してもらっている村松弘敏カメラマンと一緒に、わが家で薪づくりをしている。「大きな車はあるが、薪割り機がなく、自宅の薪置き場が限られている」という村松カメラマンと、「車は小さいが、広めの庭と薪割り機がある」というわが家。村松さんに木を運んでもらい、わが家で薪割りを行う。予定が合う日は一緒に作業。そして、村松さんの自宅の薪棚が空くたびに、薪をまとめて持っていってもらう……。その方法がお互いにメリットが大きいということになったのだ。
私たちのように木を無料でもらったり、原木を購入して自分で薪割りをするのなら、薪ストーブ設置までは「助走」のようなものなのかもしれない。木の調達、薪割り、煙突掃除、灰取り、そして積み上げられた薪棚を前にしたときの達成感や、吹雪を見ながら暖をとる幸福感など、本当の大変さと喜びは、その後の薪ストーブ生活のなかで見つけていくものなのだから。
【薪ストーブ生活にあると便利なアイテム5選】
薪ストーブを使って3年。「これがあると便利!」というわが家のアイテムを紹介する。
文/はっさく堂 写真/村松弘敏
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