――最近、キャンプや山遊びの場として自分の山林を持ちたいというニーズが高まっています。どんな手入れが必要ですか?
清水さん 下草や篠竹を刈り、倒木を片付けるだけでも、かなり気持ちのいい山になります。さらに混み過ぎた木を切り、道をつけたりできれば勝手のよい山になるでしょう。
――人が入らないと道まで草や篠竹に覆われてしまいますね。
清水さん 植林地を皆伐して放置すると、草に覆われ、落葉する広葉樹や、カシなど常緑の広葉樹も生えてきます。ただしとんでもなく人を寄せ付けない山になる。ですから再び植林しないなら、自然に生えた中から育てる木を選んで手を入れます。
――手入れは気持ちとともに経験がないと難しい面もあります。
嶋田さん 森林組合は戦後、一括で苗木の補助を受けて山主に分けるために設立されましたが、今は幅広く「山主ができない山仕事をできるようにする」ことが役割になりました。
――新たに自分の山を持ったら、森林組合に相談できますか?
清水さん 作業を頼むのなら人を紹介できますし、組合員(つくばね森林組合の場合、出資金は1口1000円。何口出資するかは面積に応じてだが決まりはない)になってもらえば、こちらで請け負うことも可能です。道づくり、手入れから伐採、搬出、販売、植林まですべてできますよ。
嶋田さん 茨城県では平成20年に森林湖沼環境税が設けられ、国の補助と併せて山の整備への支援事業が行われるようになりました。面積30ha以上で森林経営計画を立てて支援を受けますが、自前で申請できる山主は限られます。そこで森林組合は複数の所有者の山をまとめて計画申請しています。エリアの山主さん全員に連絡を取るわけです。ですから山を持ったら森林組合を訪ねていただいたほうがいい。その山は補助を受けて手入れができたり、すでに計画に入っていたりする場合もあります。
――地元の人以外が山を持つことに不安はないですか?
清水さん 代替わりで連絡が取れなくなる心配です。山を持ったら、一度私たちを訪ねてもらうと同時に、自分の山を家族にも知っておいてもらってください。
嶋田さん 山を買うのではなく、地元の山主さんとよい関係を保ちながら借りて楽しんでいる人もいます。これもよい方法です。
――山主さんと知り合いになるには、どうしたらよいでしょう。
清水さん 森林ボランティアグループに参加するのもおすすめです。草刈りや伐採など山仕事の基本も学べますし、山主さんとのつながりもあり、山の情報がいろいろ得られると思います。
【山林のエリアによる規制】
国定公園や自然公園などに指定されたエリアの山林では、建物の建築やキャンプ場を営業するなどの開発には届け出や許可が必要になる。一方、山の手入れを兼ねてプライベートのキャンプサイトをつくる程度なら、一般的に規制は受けない。水源のかん養、土砂の崩壊、そのほか災害の防備などを目的とする保安林は、立ち木の伐採や土地の形質の変更に許可が必要。森林整備には届け出が求められる。災害防備の保安林は危険地域の場合も多く注意が必要だ。
【固定資産税は気にならない額】
山林にかかる税金は、道路や貯木場からの距離、立木の本数や種類など山の経済的価値を考慮して算出される。山林の税金は、大面積の山主の相続税は例外として、ほとんど気にならない額だといえる。
【火の始末はしっかりと】
山で最も気をつけたいのは火の始末。特にスギ・ヒノキは外皮の一部が焦げただけでも立ち枯れてしまい、よその山に被害が出れば補償問題にもなる。焚き火は地面の落ち葉や枯れ草を除き、積んだ枝などから離れた場所でする。火から離れるときはしっかりと消火を。風が強いと感じたら焚き火は避けよう。
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美
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