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田舎暮らしの本 1月号

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田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

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収穫量&味が年々よくなる!家庭菜園おすすめプラン

掲載:2022年4月号

田舎暮らしでぜひ始めたい家庭菜園。ほんの小さな庭先の菜園でも種を蒔き、苗を植えれば、やがてうれしい収穫を迎え、自家製の野菜の味が楽しめる。田舎で自前の菜園を持つメリットは、毎年続けて栽培できること。野菜の育ちを観察して適材適所を見極め、年々よくなる菜園を育てよう。

手入れしやすい小さい菜園から始めよう

 菜園付きの住まいは、田舎ならどこででも探せる。菜園の広さは、庭の一角に畝をつくるミニサイズから、出荷用の栽培ができるほどの面積までさまざま。とはいえ畑仕事に慣れるまでは、小さく始めたほうがよい。

 菜園付きといっても直前まで耕作されていた畑は少なく、たいていは、しばらく放置され草が茂った状態になっている。菜園にするには、いったん草を除き耕して畝を立てる必要がある。例えば10㎡ほどの菜園(下図参照)なら鎌で除草し、スコップで耕したとしても、少し頑張れば畝を立てられるだろう。年数を重ねて少しずつ面積を広げていけば無理がない。

 張り切って耕うん機などを使い、最初から面積を広げた結果、除草や野菜の世話が間に合わず、かえって収量を落とすのは、移住初期に陥りやすい失敗。小さい菜園でも手入れがよいと地元の人からの信用も得られる。

野菜の育ちを観察して、畑の性質をつかむ

 初めての家庭菜園で人気の野菜は、春ならトマトやナス、キュウリなどの夏の果菜類や、レタスやキャベツなどの葉菜類。図のように10㎡あれば、これら多種類の野菜を育てられる。

10m²の菜園で多種類を育てるには
春に定植し夏から秋に収穫する果菜類の畝と、春と秋の二作栽培する葉菜類を育てる畝とをつくり、年ごとに畝を交換するとよい。野菜の株数を増やそうと間隔を狭くすると大きく育たずかえって収量を落とすので注意しよう。育てやすいのは野性味の強いミニトマトや、根の強いカブやダイコン、虫害を受けにくく混植で虫を避けるシュンギクやリーフレタス。バジル、イタリアンパセリなどは果菜類との混植でお互いよく育つ。ネギとの混植は病虫害を予防する。

ナスをはじめ夏の果菜類は株をしっかり育てて次々に穫れば秋まで長く収穫できる。季節とともに変わる風味は家庭菜園ならではの楽しみ(ナスの栽培方法については来月号の「自然菜園のスゴ技」ページで解説します)。

 ホームセンターの店頭に野菜の苗がずらりと並ぶ春。あらかじめ畝の準備をしておき、夏の果菜類なら遅霜の季節が過ぎてから苗を求めて植え付ける。それぞれの野菜の育て方の基本は事前に書籍やインターネットで調べておきたい。

 同じように育てても、野菜の出来は畑によって左右される。実際には、どんな野菜も1年目からよくできる恵まれた畑は少ない。とはいえ、毎年続けて使えるのが田舎の菜園のよさ。栽培を続けながら、数年後には望みどおりの収穫ができる畑に変えていこう。

 1年目は特に、日々の畑の状態と野菜の育ちをよく観察しながら、畑の性質をつかむようにする。注目したいのは、①日当たり、②水はけ、③肥沃度。野菜を育てるには半日以上、日が当たる必要がある。また、雨が降って水がたまる畑では、野菜が浸からないよう高畝にするなどの対策をとる。庭や荒れ地などを畑にする場合は、肥沃度の低い、いわゆるやせた土のケースも多い。堆肥を施すなど栽培に先立つ準備が重要になる。

 畑全体の性質だけでなく、1枚の畑の中にも状態に差がある。野菜の好む環境(表1参照)に応じて適材適所の配置を考えるのは収量アップへのコツだ。

 菜園を手入れしていると、近所の人から声をかけられる。慣れないので教えてくださいと話せば、地域での蒔きどきなど、いろいろな情報が得られる。余った苗を分けてもらえたりもする。野菜とともに、地域でのコミュニケーションも育つ田舎の菜園。ぜひ楽しんでほしい。

春から夏に向かうころ、葉菜類を中心に育てた畝。赤葉のリーフレタスは虫が好まず、隣のキャベツにも虫が寄りにくくなる。家庭菜園に取り入れたい混植の例。秋蒔き冬越しで育つソラマメは、毎年続けて使える畑で楽しみたい野菜。

Column 草を味方につける「草マルチ」

 種蒔きや植え付け後に放置したまま、気がつくと野菜が草に埋もれて育たない“草負け”に陥るのは、初めての菜園でありがちな失敗。特に野菜の外周15cmまでは根が生長して伸びるエリアなので、草の根にじゃまされると育ちが悪くなる。草は生やさないよう地際から刈ろう。そのほかのエリアの草も、野菜より高くなり過ぎないように刈る。今月号からの連載で紹介する「自然菜園のスゴ技」では、刈った草を畝の敷き草(草マルチ)として活用。草を味方につけることで、益虫や土中の微生物が増え、野菜を育てると同時に菜園の土と環境がよくなる。田舎では草刈りを怠るとご近所の信用を落とす。菜園内だけでなく、畦や家周りもこまめに草を刈りたい。

草マルチは土の乾燥や地温の上がり過ぎを和らげ、土の生き物や微生物を増やす。気温の上がる夏に向かって適度に敷き重ねていく。

家庭菜園おすすめプラン

地域の気候と野菜の栽培適期を知る

 野菜ごとの適期に栽培するのも大切。種の袋の裏側には暖地、温暖地、寒冷地の区分(表2参照)で適期が示されている。気温が上がっていく春から夏の場合、果菜類は栽培開始が遅れても挽回して収穫できる。チンゲンサイやレタスなどの葉菜類は暑さに弱いため、暖地や温暖地では特に、蒔き遅れると充分に育たずに終わるので注意する。

 気温が下がり日も短くなっていく夏から秋の種蒔きの適期は短い。早いと虫害が多くなり、遅れると充分に生育しない。確実に収穫するには3〜7日おきに数回蒔くとよい。

Column 鳥獣害対策は1年目から万全に

 田舎の菜園ではイノシシやシカ、サル、ハクビシン、カラスなどの鳥獣害が増えている。一度狙われた菜園は餌場として覚えられ、繰り返し被害を受けるうえ、繁殖を助けて個体数を増やす原因にもなる。被害地域では必ず対策を施してから栽培を始めよう。鳥害はネットや防鳥糸などで防ぐ。豆類などは鳥に見つからないよう薄暗くなってから種蒔きする。獣害避けの電柵は獣の種類ごとに対応しているものを求め、伸びた草が触れて放電しないよう草を刈り、こまめに見回る必要がある。

里山で被害の多いイノシシは上下2本の電柵で避けられる。田舎ではホームセンターでも売られている。

注目県の担当者に聞く!
山口県で菜園生活!エリアによる適作の違いは?

柑橘類、在来種、露地野菜、高原野菜も

 三方が海に面している山口県。瀬戸内海や日本海の沿岸から中国山地まで、地域ごとに個性豊かな風土が育まれています。

 温暖で比較的雨の少ない瀬戸内海側では、平坦な干拓地でのタマネギやキャベツなどの露地栽培が盛ん。霜の降りない地域もあり、春みかんとして親しまれる「せとみ」をはじめ、柑橘類の産地です。

 冬には降雪もあり、年間を通じて比較的湿潤な日本海側では、長門市(ながとし)の「田屋(たや)なす」、萩市の「萩ごぼう」などの在来野菜も伝わります。

 各自治体の空き家バンクでは、菜園を楽める物件が多数見つかります。下の写真の空き家のある山口市阿東(あとう)地域は、スキーもできる高原。日本最南端のリンゴの産地で、酒米の「山田錦」、「山口あぶトマト」の産地としても知られています。昼夜の寒暖差が大きいため、おいしい野菜が穫れます。

 菜園生活はもちろん、歴史文化を感じる街、新幹線や空路にアクセスしやすい地方都市など、ニーズに合わせた選択ができるのも山口県の特長です。県では、地域に滞在しながらテレワークのできるワーケーション施設(※)を各地に多数用意しています。気になるエリアの施設に滞在して、地域の魅力を味わってみてください。移住前のお試しとしてもご活用いただけます。

※山口県テレワーク・ワーケーション総合案内サイト https://yamaguchi-workation.com/

山口市阿東地区の平屋は築約50年、家庭菜園ができ日当たり良好。面積は延床約40坪、敷地約180坪。物件の価格は100万円(応相談)。

山口宇部空港国内線ターミナルビル2階に設けられたワーケーションについての総合案内拠点施設。

「ワーケーション施設は県内に40カ所 。企業や起業家、地域との交流プログラムも提供しています」と、中山間地域づくり推進の弘忠宜さん。

問い合わせ先:「住んでみぃね!ぶちええ山口」県民会議 (山口県総合企画部中山間地域づくり推進課内)

☎083-933-2546

文/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香

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