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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

空き家改修を軸にまちを活性化。地域の課題を活躍の場にする若者たち【静岡県東伊豆町】

30年ぶりの社会増となった東伊豆町。なかでも、稲取は若者の移住者が増えている。空き家を改修してつくったシェアオフィスや宿泊施設が人を呼び、地域や自然にふれて町のファンとなり再訪する。港町・稲取に引き寄せられるように集まった若者たちを取材した。

掲載:2022年6月号

静岡県東伊豆町(ひがしいずちょう)
伊豆半島東海岸のほぼ中央に位置し、北西は天城連山を望み、東南は相模灘に面している。人口は1万1563人(2022年3月31日現在)。10年前から学生を受け入れ、現在は10大学が町をフィールドに活動。東京駅から特急踊り子号で約2時間15分。

 

ふらっと訪れて町のファンに。昨年度は11人が地区に移住!

「EAST DOCK」の目の前の堤防にて。

今年4月に子どもが誕生した荒武さん。「改修した空き家を拠点に、さまざまな人が交流できれば」と話す。

 昨年、30年ぶりに転入者が転出者を上回る「社会増」となった東伊豆町。別荘地に移住したシニアが中心だが、若い世代が増えている地域がある。漁港や観光地として栄えてきた稲取だ。

「稲取では昨年度の移住者や二拠点居住者が11人もいたんです。そのほとんどが20 代です」

 そう話すのは、稲取で空き家を改修したシェアオフィスや宿などを運営しているNPO法人「ローカルデザインネットワーク」の荒武優希(あらたけゆき)さん(31歳)だ。

 荒武さんは、大学時代に空き家改修プロジェクトで東伊豆町を訪れたが、改修した1軒目はあまり活用されなかった。「地域の人たちの意見を取り入れ、運営も自分たちで責任を持たないといけないと思ったんです」。

 2016年から3年間は地域おこし協力隊として活動。シェアキッチンスタジオ「ダイロクキッチン」、シェアオフィス「EASTDOCK」、さらに3軒の宿泊施設も改修し、卒業後の現在は、仲間たちとこれらの運営を行っている。

「港町であり観光地である稲取はオープンな風土。僕たちを受け入れ応援してくださいます」

 人口が減っていた稲取は、店が閉まったり、人手が足りなかったりと課題を抱えていた。

「外から来た人にとって、それは活躍できる〝余白〞に思える。少しずつ活躍する人が増えてきました。僕の役割は、余白を可視化し、活躍の場を求める人とのマッチングしていくことです」

 シェアオフィスや宿泊施設を訪れた人が、町内の飲食店などを利用、さらに町のファンになり再訪……、こうした好循環が町を活気づけ、多くの若者が集まってくるのだろう。

東伊豆町 移住者の交流拠点❶ EAST DOCK(イースト ドック)
稲取と伊豆大島を結ぶジェット船の切符売場が伊豆大島椿まつりの期間しか利用していないため、町から話をもらいフルリノベーション。コワーキングスペースや会議室、イベントスペース、キッチンなどがあり、ものづくりイベントやワークショップなどに使われることも。https://www.dai6kitchen.com/eastdock

1階は切符売場があり、奥はイベントスペースになっている。

2階のコワーキングスペースは、窓から海が一望。利用料は1日1500円、月1万円(利用は事前予約制)。


東伊豆町 移住者の交流拠点❷ ダイロクキッチン

長い間使われていなかった第六分団器具置場を、空き家改修プロジェクトにより地域住民と一体となり改修。シェアキッチンスタジオとして生まれ変わった。チャレンジショップのほか、地元高校生が部活動で食事を提供したり、地元住民が読書会を開催したりさまざまに活用されている。https://www.dai6kitchen.com/about

第六分団器具置場の文字が残る、レトロな外観。チャレンジショッププランは1日3500円、レンタルスペースプランは3時間2000円。

ダイロクキッチンの管理人であり、毎週水曜にカフェを営業している稲岡麻琴さん。「地元住民として、町を盛り上げてくれる人たちがいることがうれしい」と話す。

コロナ禍以前のダイロクキッチンでのイベント。写真展や交流会などが行われ、多くの人が集まった。

荒武さんが代表を務める「合同会社so-an」が運営する「湊庵 赤橙(そうあん せきとう)」。ここは、広場、カフェ、宿が複合した拠点となり、カフェは荒武さんの妻・悠衣(ゆい)さんが担当する。

空き家改修の様子。2014年に始まった「空き家改修プロジェクト」は後輩たちが引き継ぎ、9年も続いている。

東伊豆町 わたしの移住物語

藤田 翔(ふじたかける)さん●23歳

自然体験のコンテンツの充実を目指す
「合同会社so-an」のメンバーで、宿泊施設「湊庵」の運営担当。自然環境の専門学校を卒業し、伊豆半島ジオパーク認定ガイドでもある。「東伊豆町は海も山も楽しめるところ。この自然を活かしてキャンプやジオハイキング、クロスカントリーなど、さまざまな自然体験を提案し、過ごし方を充実したものにしていきたいです」。

星野海輝也(ほしのみきや)さん●22歳

フィールドワークの延長であれこれ体験中
 大学の地域創生フィールドワークとして稲取で3年間活動。海外留学の予定だったが、コロナ禍で行けず、稲取に1年前に移住。ダイロクキッチンのチャレンジショップでカフェを開いたり、農家のお手伝いをしたり、漁師さんと話をして過ごす。「学生が活動している下地があるので、何でも挑戦できる環境があるのがいいです」。

森本健介(もりもとけんすけ)さん●30歳

東京のサラリーマンから地域おこし協力隊に
 大学時代に地域づくりインターンの会で東伊豆町を訪れ、ファンになる。東京の建築コンサルタント業界で働くが、今年4月から地域おこし協力隊に着任し、ワーケーションや移住・定住推進を担当。「妻も、東伊豆町ののどかな風景を見て、また温泉付きの家を借りられると知って賛成してくれました」。将来的には独立を目指す。

木村友哉(きむらともや)さん●26歳

友人に誘われ遊びに来て、魅力にはまり移住
 友達に誘われて稲取に遊びに来た木村さん。「堤防にテントサウナを立てて入り、そのまま海へドボン。そんな体験をしたら、東京での暮らしや仕事がつらくなって」。ITの仕事を辞め、今年3月に移住。近所の食堂に食べに行ったら、お手伝いを頼まれ、今はその仕事をしている。「人との距離感が近く、とても温かい。ここは最高です」。

東伊豆町移住支援情報
随時、移住相談を受け付けお試し移住体験施設も用意

 伊豆半島東海岸の中央に位置し、観光業を基幹産業とする、山と海に囲まれた自然豊かな東伊豆町。気候も温暖で過ごしやすい。町では随時移住相談を受け付け、対面や電話のほか、オンラインでも可能。空き家バンク制度や若者定住支援(住宅新築または購入)がある。お試し移住体験施設も短期、長期と用意されている。
東伊豆町企画調整課 ☎0557-95-6202 https://www.town.higashiizu.shizuoka.jp/bg/life/ent/1763.html

稲取ふれあいの森「展望テラス」から見た稲取の全景。

移住相談は随時受け付けている。写真は相談会の様子。

 

文/水野昌美 写真/鈴木千佳 写真提供/荒武優希さん

 

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