標高約400~700m。白川にそそぐ黒川の流域に広がる山あいの集落・黒川。有機農業が盛んなこのエリアに移住する若者が増え、注目されている。資源を循環させる取り組みや研修生の積極的な受け入れで、地域が活気づいている。
掲載:2022年6月号
有機農業のNPOが受け皿。会員数は10名から44名に増加
塩月洋生さん(48歳)が黒川に移住してきたのは15年前。きっかけは、名古屋市で開催されている「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」で白川町の有機農家・西尾フォレストファームの西尾勝治さんに出会ったこと。そのなかで「米づくりからストローベイルハウスの家づくりを行うはさ掛けトラストを始めたい」と相談したことで、移住への道が開かれたのだという。黒川のキーマン・西尾さんはNPO法人ゆうきハートネットの理事。「有機農業で町内の農業とまちを元気にしたい」と農家が集い、1998年に立ち上がった団体だ。メンバーは当時10名程度だった。
そこに新風を吹き込んだのが、就農志望で移住してきた伊藤和徳さん(44歳)。この移住がきっかけで団体は若いIターン者向けに研修制度をスタートさせることになった。さらに、2012年には児嶋健さん(42歳)も研修生となり、若い有機農業者の輪が広がっていった。現在の会員数は44名。今や白川町は有機農業のまちとして全国から注目される存在だ。
まちに活気を与えるきっかけとなった3家族だが、皆が口を揃えて言うのが「まちに恩返しをしていきたい」ということ。まちの資源を循環させる取り組みを行ったり、研修生を受け入れたりと、パワフルに活動している。塩月祥子さんは志願して集落支援員になり、移住希望者の相談に乗る。児嶋陽子さん、伊藤純子さんらと黒川のパンフレットも制作した。
「黒川とつないでくれる方がいたからこそ、今の自分がある」
そんな思いが輪を広げ、モノやコト、人の気持ちまで好循環を生み出しているようだ。
【白川町黒川】わたしの移住物語➀
2007年に家族で黒川に移住。「食べ物から出る副産物を循環させたい」と、建築家である洋生さんとともにわらと土を材料にしたストローベイルハウスをセルフビルドで建築。無農薬のわらを使うべく、黒川の田んぼで米も栽培した。洋生さんは建築家としてだけでなくアート関連の仕事も手がける。近年は伊藤さんと共同開発したサウナの販売も開始。祥子さんは4年ほど前から集落支援員として活動中。
https://www.kusumu.com
【白川町黒川】わたしの移住物語②
2012年に移住。「ローカル経済をつくること」を追求し、有機農業を軸とした活動を行う。シャワークライミング、キャンプイベントを手がけ、敷地内にはバーベキューができるスペースも。最近は地域に家畜がいた風景を取り戻すべく、ヤギやヒツジを飼い始めた。農産物、加工品を販売するショップを建築し、イベント時などにオープンさせている。今後はさらにクラフトビールの製造を目指すという。
https://farm-sunpo.com
【白川町黒川】わたしの移住物語③
和徳さんは名古屋市で浄水場設備の研究開発などを行う職に就いていたが、自然に寄り添う仕事を求め脱サラ。2010年より黒川で有機農業を開始した。移住後、塩月祥子さんの同級生で、東京生まれの純子さんと出会い結婚。2人の子どもに恵まれた。現在は、ゆうきハートネット理事として有機農業の研修生の受け入れを行う。東濃ひのきのバレルサウナを塩月さんらと共同開発するなど、森の整備・再生にも貢献。純子さんはデザインの仕事も手がける。
http://wagokoro.xyz/
【白川町】移住支援情報
移住や子育て支援も充実。清流と緑に恵まれたまち
白川町では2015年から役場内に専門窓口を設置。現在は白川町移住交流サポートセンターの専門スタッフが移住と空き家の相談を受け付けている。空き家の購入や改修に係る費用の補助(上限95万円)は、若者世代や子育て世帯の移住であれば、移住支援金をさらに交付。保育園の保育料や、18歳までの医療費も無料だ。
<補助制度>問い合わせ先
企画課 ☎0574-72-1311
https://www.town.shirakawa.lg.jp
<移住相談>問い合わせ先
移住交流サポートセンター ☎0574-80-0384
https://shirakawa-ijuu.com
文/横澤寛子 写真/古川寛二
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