田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 11月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 11月号

10月3日(木)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

新規就農の若者が集まる有機農業の里。資源を循環させ、ヒノキのサウナも販売【岐阜県白川町】

標高約400~700m。白川にそそぐ黒川の流域に広がる山あいの集落・黒川。有機農業が盛んなこのエリアに移住する若者が増え、注目されている。資源を循環させる取り組みや研修生の積極的な受け入れで、地域が活気づいている。

掲載:2022年6月号

岐阜県白川町(しらかわちょう)
岐阜県中南部に位置する白川町は、町内を5本の清流が流れ、川沿いに集落が点在。木材産業や茶の栽培で知られる。年間平均気温は12℃。名古屋駅から白川口駅へ特急利用で1時間30分前後。黒川エリアは白川口駅から車で約30分。

 

有機農業のNPOが受け皿。会員数は10名から44名に増加

白川町 移住者の交流拠点/黒川農業研修交流施設「黒川Maruke(マルケ)」
2018年より始動した農業研修交流施設。2階に宿泊できる3部屋の個室とワークスペースがあり、1カ月以上の農業研修にも対応可能。1階の交流スペースにはキッチンが完備。レストラン、カフェ、加工施設としても利用できる。https://ku-sumu.wixsite.com/maruke

 塩月洋生さん(48歳)が黒川に移住してきたのは15年前。きっかけは、名古屋市で開催されている「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」で白川町の有機農家・西尾フォレストファームの西尾勝治さんに出会ったこと。そのなかで「米づくりからストローベイルハウスの家づくりを行うはさ掛けトラストを始めたい」と相談したことで、移住への道が開かれたのだという。黒川のキーマン・西尾さんはNPO法人ゆうきハートネットの理事。「有機農業で町内の農業とまちを元気にしたい」と農家が集い、1998年に立ち上がった団体だ。メンバーは当時10名程度だった。

 そこに新風を吹き込んだのが、就農志望で移住してきた伊藤和徳さん(44歳)。この移住がきっかけで団体は若いIターン者向けに研修制度をスタートさせることになった。さらに、2012年には児嶋健さん(42歳)も研修生となり、若い有機農業者の輪が広がっていった。現在の会員数は44名。今や白川町は有機農業のまちとして全国から注目される存在だ。

 まちに活気を与えるきっかけとなった3家族だが、皆が口を揃えて言うのが「まちに恩返しをしていきたい」ということ。まちの資源を循環させる取り組みを行ったり、研修生を受け入れたりと、パワフルに活動している。塩月祥子さんは志願して集落支援員になり、移住希望者の相談に乗る。児嶋陽子さん、伊藤純子さんらと黒川のパンフレットも制作した。

  「黒川とつないでくれる方がいたからこそ、今の自分がある」

 そんな思いが輪を広げ、モノやコト、人の気持ちまで好循環を生み出しているようだ。

黒川マルケは黒い壁のオシャレな建物。設計は塩月洋生さんが担当。

黒川マルケの1階交流スペース。土間とフローリングスペースがあり、語り合う場としても活用できる。奥のキッチンにはシンク3つ、ガスコンロ4口、HOSHIZAKIの冷蔵庫、冷凍庫が完備。

 

【白川町黒川】わたしの移住物語➀

クウスムデザイン/塩月洋生さん、祥子さん
玄関側の壁は、東京芸術大学の学生たちと一緒に積み、表面はあえてデコボコに仕上げている。

 2007年に家族で黒川に移住。「食べ物から出る副産物を循環させたい」と、建築家である洋生さんとともにわらと土を材料にしたストローベイルハウスをセルフビルドで建築。無農薬のわらを使うべく、黒川の田んぼで米も栽培した。洋生さんは建築家としてだけでなくアート関連の仕事も手がける。近年は伊藤さんと共同開発したサウナの販売も開始。祥子さんは4年ほど前から集落支援員として活動中。
https://www.kusumu.com

柱や梁は、森で倒れそうになっていたマツ、ヒノキ、スギなどを新月伐採して使用している。

デッキから見える黒川の風景が祥子さんのお気に入りだという。

 

【白川町黒川】わたしの移住物語②

暮らすファームSunpo/児嶋健さん、陽子さん
昨年春から飼い始めたヤギのジャンパー、ヒツジのセーターと一緒に。

 2012年に移住。「ローカル経済をつくること」を追求し、有機農業を軸とした活動を行う。シャワークライミング、キャンプイベントを手がけ、敷地内にはバーベキューができるスペースも。最近は地域に家畜がいた風景を取り戻すべく、ヤギやヒツジを飼い始めた。農産物、加工品を販売するショップを建築し、イベント時などにオープンさせている。今後はさらにクラフトビールの製造を目指すという。
https://farm-sunpo.com

ショップでは農園で穫れた野菜をはじめ、陽子さん作のドライフラワーなども展示販売。

 

【白川町黒川】わたしの移住物語③

和ごころ農園/伊藤和徳さん、純子さん
里山のサウナ体験では、有機野菜を使用した「農家のサ飯」も用意。開催日や料金、予約方法はサイトより確認を。https://satoyama37.jp

 和徳さんは名古屋市で浄水場設備の研究開発などを行う職に就いていたが、自然に寄り添う仕事を求め脱サラ。2010年より黒川で有機農業を開始した。移住後、塩月祥子さんの同級生で、東京生まれの純子さんと出会い結婚。2人の子どもに恵まれた。現在は、ゆうきハートネット理事として有機農業の研修生の受け入れを行う。東濃ひのきのバレルサウナを塩月さんらと共同開発するなど、森の整備・再生にも貢献。純子さんはデザインの仕事も手がける。
http://wagokoro.xyz/

 

【白川町】移住支援情報
移住や子育て支援も充実。清流と緑に恵まれたまち

 白川町では2015年から役場内に専門窓口を設置。現在は白川町移住交流サポートセンターの専門スタッフが移住と空き家の相談を受け付けている。空き家の購入や改修に係る費用の補助(上限95万円)は、若者世代や子育て世帯の移住であれば、移住支援金をさらに交付。保育園の保育料や、18歳までの医療費も無料だ。

<補助制度>問い合わせ先 
企画課 ☎0574-72-1311
https://www.town.shirakawa.lg.jp

<移住相談>問い合わせ先
移住交流サポートセンター ☎0574-80-0384 
https://shirakawa-ijuu.com

JR白川口駅が開業した1926年に完成した鋼製の吊り橋。床材がコンクリートになった以外、100年以上変わらない姿をとどめている。

白川茶の生産地として知られる。山あいに清流が流れる独特の地形は、朝夕に霧がかかるため茶の栽培に適している。

 

文/横澤寛子 写真/古川寛二

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

【東海エリアの憧れ移住スタイル~岐阜県大垣市~】地域に溶け込み、工房とカフェを営む

移住者に寄り添った支援が充実!「飛驒市暮らし」のススメ【岐阜県飛驒市】

★前回の結果【公式】2022年版 12エリア別&3世代別「住みたい田舎」ベストランキング!【東海エリア】

リモートワークや趣味の隠れ家に最適!最新&定番キットハウス 10選

二拠点居住の移動費用を抑えるコツ【首都圏・中京圏・近畿圏】

女子キャンプ! 「さばいどる かほなん」に「デイキャンプの道具選び」を聞いてみた

移住者数が3年で3倍に! ずっと住み続けたいまち【愛媛県今治市】本誌ランキング2年連続 全4部門1位!

【築100年古民家】絵本のような絶景に包まれた秘境の美しい伝統住宅!200万円の9LDKはほぼ改修不要!? 宿泊施設や飲食店にも活用可能!【福島県金山町】

海・山一望の大規模ニュータウン「伊豆下田オーシャンビュー蓮台寺高原」には素敵な物件がたくさん【静岡県下田市】