安曇野の農家さんの手伝いをしたことがきっかけで、野菜の生産者となった三吉雅子さん。海外の珍しい野菜づくりに試行錯誤しながら取り組み、一緒に栽培する仲間も徐々に増えてきた。野菜とともに地域の元気も育む農園を紹介する。
掲載:2022年7月号
地域の農家さんの力を借り、ホテルなどへ多品目を出荷
いまだ雪を冠した北アルプス連峰を背景に、『早春賦(そうしゅんふ)』を口ずさみたくなる田園風景が広がる安曇野市。5月上旬のよく晴れた朝、土づくり真最中の田んぼに交ざって、鮮やかな緑や褐色の葉もの野菜が植えられた畑があった。三吉雅子(みよしまさこ)さん(49歳)が代表を務める「信州ゆめクジラ農園」の圃場だ。
「色のバリエーションまで含めると、年間160から170品目をつくっています。最近はホテル業界からの注文も増えてきたので、少量多品目から中量多品目にがんばってシフトしています」
三吉さんは北海道出身。東京都町田市で暮らしていたが、都会での生活が合わず体調不良に。安曇野のリンゴ農家さんの手伝いを通して農的生活のよさを実感し、2010年に移住した。
「農家さんで住み込みとして働きながら、夜は飲食店スタッフ、土日は農家民宿の夕食をつくる仕事。3つの仕事を3〜4年がんばって掛け持ちしたのち、農家として独立しようと安曇野市堀金に移り住みました」
「みんながつくっていない野菜を栽培したい」。そう考えた三吉さんは、赤い水菜など珍しい野菜を直売所に出荷。すると、いつも同じ人から予約注文が入るようになった。それが現在の農園のパートナー、古田俊(ふるたすぐる)さん(45歳)だった。
古田さんも参加し、農園ではイタリア野菜を中心にさらに多くを栽培するようになった。出荷量が増えて音を上げそうになったとき、古田さんの「みんなの力を借りればできる」という言葉に背中を押され、地域の農家さんに声をかけてまわった。
「最初は断られまくりでしたが、できない理由を聞いてみると『こんな野菜、見たことないからつくれない』。だったら一緒に学びながら栽培しましょうと、仲間を増やしていきました」(古田さん)
小さなレストランを中心に販路が増えていったが、コロナ禍で打撃を受けた。三吉さんと古田さんは、ステイホーム中に家庭で映える料理が手軽につくれるようにと、色とりどりの野菜のネット販売をスタート。同時にYouTubeで、野菜についての知識やレシピの配信も。
「農家民宿で夕食をつくっていたとき、その野菜の背景にあるストーリーを知っていると、さらに料理が楽しく感じられたんです。だから、私は野菜の生産者になりました。『珍しいから買ったけど、調理方法がわからなくてダメにした』ということになってほしくない。『おいしい、また食べたい』という気持ちをこの畑から送り出して、畑と消費者の距離を縮めたいんです」(三吉さん)
今後は、農業研修の里親制度など、新規就農希望者の受け入れにも積極的に取り組みたいと、三吉さんは夢を語る。
「安曇野は、『これになりたい』と声に出して言うと、なれるようなエネルギーが高い場所。笑顔で野菜づくりがしたい仲間を募集中です!」
安曇野市移住支援情報
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問い合わせ:安曇野暮らし支援協議会 ☎︎0263-71-2081
https://azumino-ijyu.jp
文/はっさく堂 写真/尾崎たまき
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