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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

脱東京した女性の挑戦! 安曇野で農家になり、ヨーロッパ野菜を仲間と生産【長野県安曇野市】

安曇野の農家さんの手伝いをしたことがきっかけで、野菜の生産者となった三吉雅子さん。海外の珍しい野菜づくりに試行錯誤しながら取り組み、一緒に栽培する仲間も徐々に増えてきた。野菜とともに地域の元気も育む農園を紹介する。

掲載:2022年7月号

長野県安曇野市(あづみのし)
長野県北西に位置する安曇野市。西部は中部山岳国立公園の山岳地で、中心部には平野が広がる。日本一の水ワサビの産地、そして県内一の米どころ。雄大な景色と生活の便利さから移住先としての人気も高い。東京・八王子ICから中央自動車道、長野自動車道経由で約2時間30分。

 

地域の農家さんの力を借り、ホテルなどへ多品目を出荷

右手前が三吉雅子さん、左が農園のパートナーで野菜ソムリエの古田俊さん。この日は、三吉さんの友人が手伝いに訪れていた。https://www.facebook.com/yumekujira.farm/

 いまだ雪を冠した北アルプス連峰を背景に、『早春賦(そうしゅんふ)』を口ずさみたくなる田園風景が広がる安曇野市。5月上旬のよく晴れた朝、土づくり真最中の田んぼに交ざって、鮮やかな緑や褐色の葉もの野菜が植えられた畑があった。三吉雅子(みよしまさこ)さん(49歳)が代表を務める「信州ゆめクジラ農園」の圃場だ。

「色のバリエーションまで含めると、年間160から170品目をつくっています。最近はホテル業界からの注文も増えてきたので、少量多品目から中量多品目にがんばってシフトしています」

 三吉さんは北海道出身。東京都町田市で暮らしていたが、都会での生活が合わず体調不良に。安曇野のリンゴ農家さんの手伝いを通して農的生活のよさを実感し、2010年に移住した。

「農家さんで住み込みとして働きながら、夜は飲食店スタッフ、土日は農家民宿の夕食をつくる仕事。3つの仕事を3〜4年がんばって掛け持ちしたのち、農家として独立しようと安曇野市堀金に移り住みました」

三吉さんは、友人が探してくれた一軒家を借りて、ネコ2匹と暮らしている。

ネコとの触れ合いは、癒やしのひととき。三毛猫のミィちゃんは、ノラネコから生まれた。

「みんながつくっていない野菜を栽培したい」。そう考えた三吉さんは、赤い水菜など珍しい野菜を直売所に出荷。すると、いつも同じ人から予約注文が入るようになった。それが現在の農園のパートナー、古田俊(ふるたすぐる)さん(45歳)だった。

 古田さんも参加し、農園ではイタリア野菜を中心にさらに多くを栽培するようになった。出荷量が増えて音を上げそうになったとき、古田さんの「みんなの力を借りればできる」という言葉に背中を押され、地域の農家さんに声をかけてまわった。

「最初は断られまくりでしたが、できない理由を聞いてみると『こんな野菜、見たことないからつくれない』。だったら一緒に学びながら栽培しましょうと、仲間を増やしていきました」(古田さん)

約120aの畑でヨーロッパ野菜を中心とした農作物をつくっている。

毎年新しい野菜に挑戦。シェフと野菜ソムリエが生産にかかわることにより、特別な一皿をつくる素材が生まれる。

コウサイタイ(紅菜花)を摘む三吉さん。紫の茎と花芽はサラダでおいしく食べられる。

 小さなレストランを中心に販路が増えていったが、コロナ禍で打撃を受けた。三吉さんと古田さんは、ステイホーム中に家庭で映える料理が手軽につくれるようにと、色とりどりの野菜のネット販売をスタート。同時にYouTubeで、野菜についての知識やレシピの配信も。

「農家民宿で夕食をつくっていたとき、その野菜の背景にあるストーリーを知っていると、さらに料理が楽しく感じられたんです。だから、私は野菜の生産者になりました。『珍しいから買ったけど、調理方法がわからなくてダメにした』ということになってほしくない。『おいしい、また食べたい』という気持ちをこの畑から送り出して、畑と消費者の距離を縮めたいんです」(三吉さん)

 今後は、農業研修の里親制度など、新規就農希望者の受け入れにも積極的に取り組みたいと、三吉さんは夢を語る。

「安曇野は、『これになりたい』と声に出して言うと、なれるようなエネルギーが高い場所。笑顔で野菜づくりがしたい仲間を募集中です!」

ワサビ田の一角を借りてビニールハウスを建て、「安曇野湧水タルディーボ」を生産している。タルディーボは、イタリアの最高級野菜だ。現在はチコリー栽培の実験中。

三吉さんと古田さんが「みんなのお母さん」と呼ぶ、農業の大先輩の藤原弥生さん。

昼食用に、収穫した野菜を調理する三吉さん。「サラダに、食べられる花を少し添えるときれいですよ」。

名古屋からの友人も一緒に昼食。食卓には、農園の野菜を使ったサラダなどが並ぶ。

「早春賦の碑」近くの堤防は、三吉さんお気に入りの場所。周辺にはたくさんのワサビ田がある。

 

安曇野市移住支援情報
官民一体となって移住をサポート。まずはオンライン個別相談を

 移住・定住促進事業を実施する団体と行政による組織「安曇野暮らし支援協議会」が、さまざまな分野で移住をサポート。オンラインでの移住体験ツアーやセミナーも不定期で開催している。空き家バンクでの物件紹介や、移住者向けの空き家リフォーム補助金事業などもある。

問い合わせ:安曇野暮らし支援協議会 ☎︎0263-71-2081
https://azumino-ijyu.jp

正面に北アルプスの山々、眼下に安曇野が一望できる長峰山山頂。

市では移住セミナーを開催している。最新情報は公式ホームページで確認を。

 

文/はっさく堂 写真/尾崎たまき

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