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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

100万円で買った駅裏の家。仲間と改修して愛される宿に【福井県福井市】

大手ゼネコンを辞職してつくり上げたのは、「福井の玄関」を自負するゲストハウス。ゼロからDIYを学び、傷んでいた建物を仲間とリノベーションした。どのように誕生したのか、お話を伺った。

掲載:2022年8月号

玄関先に立つ森岡咲子(もりおかさきこ)さん(36歳)と永山千晴ちゃん(5歳)、陽一くん(2歳)。建物の外観は改修前とほとんど変わっておらず、年季を感じさせるたたずまいなので、親戚の家に来たような安堵感がある。

福井県福井市(ふくいし)
九頭竜川と支流の足羽川、日野川による堆積作用でできた福井平野にあり、福井県の県庁所在地。産業的にも文化的にも、中世以降、地域の中心地として栄えてきた。人口約25万8000人。福井駅へは、東京駅から北陸新幹線、特急サンダーバード・しらさぎ利用で約3時間10分。大阪駅からは特急サンダーバード利用で約2時間。

 

延べ200名に支えられたDIY改修工事

 「2時間悩みましたが、こんな好条件はほかにないと思ってその場で決めました」

 県庁所在地の主要駅から徒歩約5分の場所にある「福井ゲストハウスSAMMIE’S」。建物を購入したときのことを、森岡咲子さんはそう振り返る。

 築約60年の建物は買い取りで50万円、約30坪の土地は借地で諸費用を含めても総額100万円を切っていた。建物の傷みは激しかったが、それも咲子さんは想定内だったという。

 「建物は自分が思う通りにD IYで直そうと決めていたので、ワークショップに参加したりして最低限の技術は身につけていました」

 咲子さんは福井市出身。東京大学経済学部で芸術と公共性を研究し、ヨーロッパで歴史的建造物がリノベーションによって人びとが集う新たな場所となっている様子を見て強く共感していた。だが、大手ゼネコンに就職すると新しい建物ばかりつくる仕事や大量消費で成り立つ都市生活に違和感を抱くようになる。そうしたなか、近しい人の死や東日本大震災を経験した咲子さんは「いま、自分にできることをやろう」と決心する。

 そのころから帰省するたびに自然が豊かな福井の魅力を再認識していった。福井のガイドブック制作にも携わるようになり、福井市にゲストハウスがないことを知って「自分がやろう!」と思い立った。約7年勤めた会社を退職してUターンすると、購入した建物の改修に専念することになる。

大阪から来たリピーターを迎える咲子さん。「咲子さんがゲストにすごく興味を持ってお話ししてくれるので、『私はこれでいいんだ』と安心できちゃうんです」と、魅力を語るゲストさん。

最大4人まで利用できる男性専用ドミトリー。ベッドもすべて自作した。料金は、周辺宿泊施設のベッド数や稼働率、全国のゲストハウスを調査して決めた。

リノベーションしたなかで一番のお気に入りだというキッチン。大きな開口部があり、とても明るい。

 

 「前の仕事柄、すべきことはわかっていましたが、やってみると壁の下地づくりだけでヘトヘトになり、心が折れかけました。そんなとき、帰省を繰り返すなかで出会った延べ200人を超える人が手伝ってくれたんです」

 改修費は、建物代も含めて約480万円。2015年のオープン時には、出会った人びとが新たな人を呼び、自然とお客さんが来るようになっていた。夫の永山恭平さんももとは兵庫から来た宿泊客で、鯖江にあるメガネの企業で働いている。そして、千晴ちゃんと陽一くんが誕生し、いまはゲストハウスの近くに購入した家で暮らしている。

 咲子さんは、コロナ禍でできた時間を利用して、高校の非常勤講師を始めた。これを機に、小学校の教師の資格を取得しようと勉強中だ。

 「SAMMIE’Sは、ゲストの方にとって『福井の玄関』でありたいと思ってやっています。いつか、親子で長期滞在しながら、子どもたちが教育を受けられる環境をつくれたらいいな」

 自分にできることを求め続ける姿勢が、彼女のなかでいまも大きな原動力になっている。

改装当時のキッチン。床を取り払ってコンクリートの土間にし、太い梁の下にカウンターを設置して空間を仕切った。壁に張る石膏ボードが重く、持ち運びに苦労したという。

パッチワークのように越前和紙を張り合わせた壁に、器の跡がユニークな模様になった越前漆器の漆塗り台をカードラックとして使っている。

天井を抜いて2階の開口部から光が入るようにしたリビングで、ゲストとくつろぐ子どもたちと咲子さん。右奥にキッチンが見える。キッチンはシャワー、トイレ、洗面台とともに共用になっている。

家族でよく散歩に来るという足羽山(あすわやま)。市街地の中心にある標高116mの山で、「日本さくら名所100選」に選ばれている。フィールドアスレチックやミニ動物園もある。

 

【オーナー森岡咲子さんから田舎宿開業へのアドバイス】

ゲストの方にご縁のお裾分けをしたい!
小規模宿の強みは濃い接客ができること。私も対話を大事にし、ゲストの方の人柄や趣味を理解しようと努めています。ここに住む私たちの「ご縁のお裾分け」ができれば、再訪者も増えるはず。宿主やスタッフの人柄、ここでしかできない経験も宿の個性や魅力につながります。価格設定も自信を持って行って!

福井ゲストハウスSAMMIE’S  サミーズ

2015年にオープンした福井駅東口からすぐのゲストハウス。男女別ドミトリーと個室がある。駐車場2台分。
住所/福井県福井市日之出2-6-8  ☎0776-97-9559 
料金/ドミトリー1泊3300円、個室1泊6900円〜、駐車1台500円 
http://sammies.jp/

 

福井市移住支援情報
移・職・住の支援が多数! 移住支援金も充実

 福井市への移住を検討している人に対して、移(移住支援金)、職(起業、就業)、住(住まい、子育て)の視点からさまざまな支援を用意。さらに、オンライン相談窓口を設置しているので、日本全国どこからでも相談可能! 県外から移住し、就業等をした人が対象となる移住支援金(要申請、諸要件あり)も充実。

問い合わせ:福井市移住定住推進室 ☎0776-20-5514
https://www.city.fukui.lg.jp/sisei/plan/connect/teiju.html

足羽山から一望した福井市街地。

福井駅を出ると恐竜がお出迎え!

「福井市のよさ、余すことなく伝えます!」
移住定住推進室の荒川正さん、UIターンアドバイザーの益原佳織さん

 

文・写真/吉田智彦 写真提供/森岡咲子さん、福井県福井市

 

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