【移住者リポート②】空からの風景に憧れた町で、挑戦を楽しむセカンドライフ
中村哲郎さんは学生時代に仲間と熱気球を自作、卒業後は都内で金融関係の会社に勤め、60歳で退職して上士幌町に来た。
「初めて上士幌町を訪れたのは大学生のときです。熱気球の大会は、当時から開かれていました。空からの景色が素晴らしくてね。『いつかはここに住みたいな』と憧れました」
サラリーマン時代は忙しく、熱気球からもしばらく遠ざかっていた中村さん。定年退職を迎えるにあたり、セカンドライフは「東京以外で暮らそう」と考えた。夫婦で相談して決めたのは札幌。マンションを購入して月に1、2度通った。
「でも、札幌は通ってみると東京と大して変わらない。北海道で別の場所をと探すうち、立ち寄ったのが『かみしほろ情報館』でした。『いい物件がありますよ』と家を見せてもらって、その場で衝動買いしてしまいました」
移住後は町議会議員選挙に立候補。当選して議員を務める。
「政策や地盤があったわけではないんです。議員になれば町の人と知り合えるし、町がわかると思いました。選挙では町内の約2500世帯のうち2000世帯ほどを回りました。『上士幌町に骨を埋めます』ってね」
この夏は、上士幌産大豆を使った豆腐の製造販売を始める。
「豆腐には向かない品種だと聞きましたが、つくってみると抜群においしくて。週2回40丁ずつ販売予定です。町内にリニューアルした食品加工センターがあり、設備が利用できるんです。販売にあたっても、皆さんが口コミで広めてくれて。いろいろなチャレンジを応援してくれるのは、この町の魅力ですよ」
熱気球は上士幌バルーンクラブで活動し、上士幌高校熱気球部の顧問も引き受けた。風がよければ朝6時から飛ぶ。
「高校生を育てるのは楽しいですね。ただ、パイロットの資格を取れるのは18歳から。彼らは取得後すぐにここを離れてしまいます。だから若い人たちが、『この町に留まろう』『いずれ戻ろう』と感じられる上士幌町になってほしいと思っています」
【上士幌町ミニ交流会】上士幌町のココが好き!
上士幌町は移住者同士の交流が活発。毎月1回は参加者1品持ち寄りで「誕生会」という集まりが開かれる。今回は、取材に際してお声がけしたミニ交流会。皆さんに町の魅力を伺った。
「おせっかいがありがたい」と喜べる人が住みやすい町
伴「北海道は以前からよく旅行していました。上士幌町を選んだのは、特に景色がいいからです。広い大地の向こうに大雪山があります。そのうえ、北海道のほぼ真ん中にあるので、写真を撮るためにどこへ出かけるにもアクセスがいい。雪も少ないと聞きましたが、体験してみると本当で、雪下ろしも必要ありません」
上川「私たちは二地域居住で、冬は神奈川県横浜市に滞在しています。上士幌の家の内装は、自分たちでリフォームしました。地元の方がたにご協力いただいたり、友人にもお手伝いいただいたりして、昨年、4カ月ほどでほぼ完成。今は庭と畑づくりに頑張っています」
東元「私たちはバリ島で知り合った友人たちに誘われて上士幌町で移住体験生活をしています。大阪の夏は非常に蒸し暑く、涼しく過ごせる上士幌町は最高ですね。昨年は友人宅のリフォームにも協力させていただきました。バリ島の生活も8年間楽しみましたが、高齢になり医療の心配なところより、安心できるところがいいかなと。上士幌町には診療所もあり、帯広には大きな病院もあるので安心して生活ができます」
北上「私は50歳で早期退職し、1人で旅をしました。北海道を回って、上士幌町に来て、住まいを探してそのまま留まったんです。周りに家のない離農農家に住んだこともありますが、今は役場やスーパー、町営温泉などが徒歩圏の街なか住まいです。移住当時は今のような町の移住支援はありませんでした。それでも、この町が気に入って移り住む若い人は多かったですね。お互い知り合える場をつくって情報交換できればと始めたのが、今も続く『誕生会』です」
千葉「『誕生会』は移住された方だけでなく、地元の私も参加できるのがいいですね。この町にいるだけでは気がつかない見方に出合えるのが面白くて」
北上「地元の人が参加してくださるからこそ、移住者にもいろいろな情報が入ってきます。ここには、おせっかいがあって、それをありがたいと喜べる人には住みやすい町です」
戸崎「毎年夏になるとこの町に来て、最初は行事に参加したりするのが楽しみでした。今は待っていてくれる人と会うのが楽しみ。受け入れてくれるのが上士幌町のよさですよ」
職探し、チャレンジイベントから起業まで応援「ハレタかみしほろ」
「㈱生涯活躍のまち かみしほろ」は、町のなりわい・コミュニティづくりを担っているまちづくり会社。窓口での相談のほか、パートから正社員まで求人情報をWebでも公開。登録者に単発の仕事を紹介する「まちジョブハレタ」、起業を支援する「かみしほろ起業塾」、自身の趣味や特技を活かした小さな挑戦を応援する「ハレたねチャレンジ企画」も行っている。
お問い合わせ ㈱生涯活躍のまち かみしほろ ☎︎01564-7-7630 kamishihoro-town.com
文・写真/新田穂高 写真提供/上士幌町、瀬野さん、中村哲郎さん
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