掲載:2022年11月号
盆地や高原ならではの気候を生かした多彩な農産物が自慢の三次市は、ワニ(サメ)料理や親鶏料理、B級グルメ「三次唐麺焼」など、一風変わった食文化が息づく。「このまちならではのおいしいものを食べてほしい」と、お好み焼き店開業に至った店主を紹介しよう。
大好きな三次の食文化を楽しんでもらいたい
広島市出身の田村千鶴(たむらちづる)さん(42歳)は、「お好み焼き店をやりたい」と言う夫の豊和(とよかず)さん(43歳)の夢に共感。広島市内のお好み焼きのテーマパーク「駅前ひろば」で独立も見据えたスタッフ募集を知り、会社を辞めて2人で応募し、修業を積んだ。間もなく同施設内で独立を果たすが、当初から豊和さんが考えていたゴールは、故郷の三次市で店を開くことだった。
「私もその夢を応援したいという気持ちでした。三次は、人口に対する飲食店の数が多くて楽しいという印象。そこでやるのも面白そうだと思って」
資金面などの環境が整うと、2009年に三次市へ移住して「たむ商店」を開店。16年には、アクセスがよくて広い三次駅前の施設内に新たな店を構えた。
オススメのメニューの1つが、ご当地B級グルメ「三次唐麺焼(みよしからめんやき)」だ。三次商工会議所青年部が命名したものだが、トウガラシを練り込んだ唐麺を使ったお好み焼き自体はそれ以前から提供してきたという。
「私たちも大好きだったので、広島市内での創業時からメニューに採用してきました。『三次唐麺焼』と名乗れるのは、一般に市販されていないカープソース辛口を使ったものだけですが、通常のソースでよければ全メニューで唐麺に変更できます」
さらに「ご当地のおいしいものをたくさん味わってほしい」と、エビ天のトッピング、「親鶏」を使った鉄板焼きなど、三次では定番の食材も積極的に取り入れてきた。すっかり人気店になり、一時は広島市内や福岡市内に支店も出したが、今はお好み焼き店を三次駅前のみに絞り、市内の旧店はラーメン店「じゃ軒」として経営している。
「コロナ禍を受けて、地元の方に愛していただくことの大切さを再認識しました。今は外へ広げることよりも、この環境で何ができるかを模索中です」
と、話す田村さん。夫妻それぞれ、オフの日も仕事に打ち込み、2人の子どもたちには寂しい思いをさせているというが、「通学路にはお店が多く、見守り隊がたくさんいる感じで安心です」と、このまちならではの子育て環境に助けられているという。
田村さんオススメ!ご当地グルメ
山間部の珍味「ワニ」料理
三次市を中心とした中国地方の山間部で「ワニ」といえばサメのこと。日持ちがする海の魚として古くから食べられ、さまざまな料理にされてきた。「くさみはまったくなく、料理店ではお刺身にしたり焼いたりして食べて、回転ずし屋さんでは握りで回っています(笑)。ハンバーガーもおいしかったですね」と田村さん。
文・写真/笹木博幸
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