掲載:2022年12月号
種を水に浸してから蒔くのがコツ
寒さに当たって甘味を増す
ホウレンソウはカスピ海南西部の原産で、ペルシャ(現在のイラン)で栽培が始まったとされ、ペルシャ草と呼ばれました。中国に伝わり秋蒔きに適した東洋種が生まれ、これが16世紀に日本に渡来。ヨーロッパで生まれた西洋種は幕末から明治初期に導入されました。無農薬で虫害が少ない野菜ですが、やせた畑だと生育が止まり、養分を与えすぎるとえぐ味が出ます。夏野菜やネギの後作が適地で、自然とよく育ちます。
1 土づくり
初めての菜園では畝を準備
日当たりと水はけのよい畑を好む
酸性土壌と水はけの悪い畑が苦手で、1時間水没すると根腐れし、枯れてしまいます。先に苦土石灰を鋤き込んでpH6.5を目安に土の酸度を調整しておき、その後、完熟堆肥に加えて、水はけをよくするもみ殻燻炭、ゼオライトを施しましょう。根が根菜のように発達するホウレンソウには、少し深めに鋤き込んでください。条件が悪いと生育をピタッと止めてしまうホウレンソウ。夏野菜がよく育った畝や、ネギの後作なら、土づくりなしでそのまま種蒔きできます。
2 準備
種蒔き前に種を浸水
ホウレンソウの原産地は雨期と乾期が分かれた地域です。雨期を待って発芽できるよう、種はかたい殻に覆われています。スムーズに発芽させるコツは、種を蒔く前に24時間水に浸し、殻の発芽抑制物質を溶かすこと。ただし芽出しまではしません。種蒔き後に乾いて枯れてしまうなど、失敗しやすいからです。
3 種蒔き
①2cm間隔で種を蒔く
浸水してから蒔いた種は、時間差はあっても、ほとんどが発芽します。2cmほどの間隔で蒔いてください。密蒔きしすぎるとうまく育ちません。
②覆土1cm・しっかり鎮圧・水撒きなし
ホウレンソウの発芽に光は必要なく、覆土の深さは種の厚みの2倍、1cmほどにします。もみ殻燻炭を撒いてから覆土すると、pH調整と水はけ改善に役立ち、育ちがよくなります。
覆土したらしっかりと鎮圧して発芽を促してください。水撒きはしません。発芽から本葉2枚までは、湿害で枯れやすいからです。
4 お世話
①混み合ったら間引いて食べる
2cm間隔で種蒔きすれば、ごく初期の間引きは不要です。本葉2~3枚に育ったら間引いて4cmほどの間隔に、4~5枚に育ったら8cmほどの間隔にするのが目安。発芽と生育にばらつきがあるので、大きくなったものから間引いて食べましょう。
②生育がよくないなら本葉2~3枚でボカシ肥を
葉が黄色っぽく、育ちがよくないときは、本葉2~3枚で1度目の間引きをしたタイミングで、ボカシ肥※を補います。
※ボカシ肥…米ぬかなど栄養分を多く含む材料を発酵させたもの。前もって微生物によって有機物を発酵させ、分解を早めておくことで、野菜が養分を吸収しやすくなる。また、微生物の働きで野菜が育ちやすくなる。
5 収穫
日中穫りがおいしい
大きく育ったものから間引き収穫します。旬は霜に当たって甘さを増す冬。凍っている朝と、アクの成分が増える夕方を避け、日中に収穫してください。
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』(宝島社)、最新刊『苗で決まる!自然菜園』(農文協)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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