この患者さんと日常生活のなかで出会えていたら、入院せずに済んでいたかもしれない──。そう考えた看護師の鍋島さんは、地域で働くコミュニティナースに転身。綾部市の公民館で「コミナスの部屋」を開いたり、診療所に顔を出すなどして、地域の人の健康づくりと、地域のつながりづくりに取り組んでいる。
掲載:2022年12月号
日常生活でできる健康づくりをサポート
コミュニティナースという仕事をして6年目になりました。人とかかわる仕事に就きたいと看護師になり、病院での仕事も好きでしたが、地域で働く看護師を目指して綾部市で働く道を選びました。
前職は生まれ育った秋田市の病院で看護師をしていました。病院では、長くお世話をしていた患者さんが亡くなることもあり、そんなとき、具合が悪くなってから出会う前に日常生活のなかで出会えていたら入院せずに済んでいたのかもしれないと思うようになりました。そして、地域で働く医療職に興味を持ち、コミュニティナースの育成講座に参加したのがきっかけで、そのフィールドワークで初めて綾部市を訪れたのです。
福井県境に近い山間部の老富(おいとみ)という地域で住民の方と交流し、地域での看護を前向きに考えるようになりました。年配の方がたは、1人暮らしでも規則正しい生活をして、塩こうじやお味噌を手づくりするなど、できることは自分の手を動かして暮らしています。そういう営みがすてきだなと思いました。
綾部市ではコミュニティナースを募集していて、ほかの自治体ではまだ取り組みをしているところがなかったので、このチャンスを逃したら次はないかも……と、思い切って移住を決めました。2017年から3年間は地域おこし協力隊として活動し、現在は市の保健師として、看護師としてやりたかったかかわり方をさせてもらっています。
コミュニティナースはこういう仕事という定義はまだありません。綾部市の場合は、健康づくりと地域のつながりづくりに取り組んでいて、週4日、山間部のエリアを中心に各地区の公民館で「コミナスの部屋」という集まりを開いたり、週1回開設される診療所に顔を出して声かけをしたりします。気軽に話をしていただけるように心がけていて、相手の家族や暮らしの様子を知ることができると、声かけの仕方も自然とその人に合わせられるようになります。
「コミナスの部屋」に参加した方が、日々の健康づくりについてお話ししたことや紹介した簡単な体操を家でも実践しているという声を聞くと、その人の生活が少し健康のほうに向いたかなとうれしくなります。
暮らしに寄り添い地域の人と向き合いたい
今は地域の人と仲よくなるのが仕事。地域行事に参加し、地域でつくられている農産物や加工品について、つくり方などを教えてもらうことも。皆さんの営みを知ることで、自分の暮らしも大切にできるようになった気がします。診療所が開設される公民館では、主事補さんの選んだ本が借りられるので、利用者同士で本をオススメし合えるのがおもしろくて、通うのも楽しみです。あの人が読んでこんな感想を言っていたから借りてみようかな、とか。
結婚したり、子どもがいると新しいコミュニティが広がると思いますが、仕事を通してゆっくりいろんな人に出会うことができています。コミュニティナースの仕事ができる限りは続けていきたいですし、地域の人と向き合いたい。そこから見えてくるものや、これからの自分の人生につながるものがあると思っているので、仕事を一生懸命やっていきたいと考えています。地域で受け入れてくれた方がたがこの先、「コミュニティナースがいてよかった」という活動になればと思います。
【京都府綾部市 あやべし】
京都府北部に位置し、自然豊かな里山と田園が広がる人口約3万1000人のまち。繊維、機械産業が盛んで、グンゼ発祥の地でもある。大阪から特急利用で約1時間50分。車で約1時間30分。
【綾部市 移住支援情報】
田舎暮らしや綾部市のことお気軽にご相談ください!
あやべ定住サポート総合窓口では綾部市までは来られないという方のため、毎月第2日曜日に、京都市役所近くにある店舗「京都ペレット町家ヒノコ」で職員が出張相談を実施。綾部の魅力を伝えるため、特産品や工芸品などを販売する「あやべ市」も同時開催。先輩移住者を講師に迎えて「あやべ田舎生活実践塾」も開かれている。
問い合わせ/あやべ定住サポート総合窓口 ☎︎0773-42-4270
綾部市移住ポータルサイト「移住立国あやべ」https://ijurikkoku.com
文/田中泰子 写真/木下清隆
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