海を身近に感じながら生活ができ、少し車を走らせれば山も島も楽しめる。そんな心身ともに気軽にリフレッシュできる環境でありながら、便利さも併せ持つ尾道市。自然に囲まれて暮らしたいと、2022年に東京からこの地に移住した夫妻に、その魅力を教えてもらった。
掲載:2023年1月号
島で豊かな自然を楽しみ、街へは約20分と便利
「街が近いのに、こんなに自然に囲まれている場所があるんだなって驚きました」
そう話すのは、2022年5月に東京から尾道市向島(むかいしま)へIターンした椛澤亮(かばさわりょう)さん(37歳)・幸世(ゆきよ)さん(32 歳)。
海、山、島が身近にある豊かな自然環境と、住みやすさが共存する尾道市。椛澤さん夫妻が暮らす向島は、尾道市街から尾道水道を隔てた島で、橋と渡船で結ばれている。
以前から、自然に囲まれた場所で暮らしたいという気持ちがあった2人は、コロナ禍のリモートワーク推進の波にのり、「永住じゃなくてもいいから、とりあえず東京を出よう」と決意。亮さんが勤める経営支援の会社やクライアント、家族の理解のもと行動を起こした。
尾道市に絞り込んだのは、亮さんが瀬戸内の海が好きで「住むなら中・四国地方がいい」と思っていたことから。また、朝イチに出れば昼には東京に着く、そのアクセスのよさも気に入った。なにより、移住フェアで知り合った広島県職員から、尾道市の移住推進担当者を紹介され、そこから人脈が広がったことが大きく後押しした。
「シェアオフィス『ONOMICHI SHARE(オノミチ シェア)』と、同施設のコンシェルジュ・後藤 峻(たかし)さんに出会えたことで、ここでやっていけるんじゃないかなって思いました」
その後、向島の古民家を内見で訪れ、一目惚れしたのが現在の家だ。
「柴犬を飼うのが夢だったので、一軒家というのが条件の1つ。手を加えることなくすぐに住めて、庭と畑があり、大好きな山に囲まれている。しかも家賃は東京の4分の1ほど。求めていた暮らしのイメージが湧き、すぐ契約しました」(幸世さん)
移住後も「何の不満もありません。毎日充実しています」と2人とも大満足の様子。「島といっても、渡船が10分ほどの間隔で運行していて、乗船時間はわずか5分ほどです」と話す亮さんは、仕事をしに対岸の「ONOMICHI SHARE」へ通っている。
野草や蜂蜜が好きな亮さんは、自宅近くで採れたクワの実でジャムをつくったり、地域活動の草刈りで切ったヒノキでハーブウオーターをつくったりと自然を満喫。将来は、商品開発やセレクトショップ運営を考えているという。
幸世さんは、愛犬の紺との散歩が一番の楽しみ。山コース、海コースとその日の気分で行き先を変え、休日には亮さんも一緒に1時間半〜2時間ほどのんびり散歩するのが定番だ。
「東京での生活に比べ、家賃が下がり、気持ちや時間にも余裕ができました。将来的には私の地元の八ヶ岳やほかの縁ある場所にも拠点を持ちたいです」
椛澤さん夫妻のように場所にとらわれない生き方を視野に入れることで、「自分が住みたい街で暮らす」という理想のライフスタイルがもっと気軽にかないそうだ。
椛澤さん夫妻にお聞きしました!
Q移住前後で大きく変わったこと
体調がよくなったこと。自転車での通勤がよい運動となり、空気がおいしいからか、整体通いの必要がなくなりました。(亮さん)
Q移住して驚いたこと
自宅付近は街灯がないので本当に真っ暗。慣れていないと、夜は自転車や徒歩だと怖いですね。内見は可能なら昼だけじゃなく夜も足を運ぶといいと思います。(幸世さん)
Qこれから移住する読者にアドバイス
よく「お金が貯まったら」という話を聞きますが、お金がなくても移住はできます。家賃や光熱費など固定費が下がったり、出費が抑えられたりと、意外と何とかなるものですよ。(亮さん)
尾道市移住支援情報
山、街、海が楽しめ、移住者が多く、子育て世代に人気
ふるさと回帰支援センター(東京)の「移住希望地ランキング(セミナー参加者)」で、2021年に全国1位となった広島県のなかで、移住者数がトップの尾道市。子育て世代の移住者が多い。田園風景が広がる「やまなみ」、情緒ある「まちなみ」、瀬戸内の「しまなみ」とバラエティ豊かな風景が楽しめる。市では、高校卒業までの医療費を助成(令和4年10月より対象年齢を拡大)。空き家バンクは市内4カ所(尾道、御調、因島、原田)で情報を提供している。
問い合わせ:尾道市政策企画課 ☎︎0848-38-9316
https://hito-onomichi.jp
文/佐藤明日香 写真/福角智江
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