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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

利根川沿いの小さなまちは子育て支援の先進地。ファミリー向け賃貸住宅も充実【茨城県境町】

掲載:2023年1月号
※【注意】アイレットハウス オハナタウンの募集は終了しています

利根川と江戸川の分岐点に位置する境町。江戸時代には河岸のまちとして水運の要を担った。現在も圏央道のインターチェンジができるなど道路交通の利便性が向上。町は移住定住促進に力を入れ、過去6年のうち4年間、転入者数が転出者数を上回る社会人口増を実現した。子育て支援が特に充実し、新たな賃貸戸建て住宅も建設中。ファミリー層からの注目度は高い。

茨城県境町 (さかいまち)
茨城県西部、利根川を挟んで千葉県と接する。人口約2万4000人。平均気温は1月3.6℃、8月26.8℃。夏から秋に開かれる利根川大花火大会は全国屈指、3万発の打ち上げ数を誇る。圏央道境古河ICより東北自動車道川口JCTまで車で約30分。境町高速バスターミナルから高速バスで王子駅まで約55分、東京駅まで約90分。

 

4カ所の集合住宅建設で、まちに子どもが100人増!

鈴木さんファミリーは、闘士也さん(31歳)、真希さん(34歳)、双葉ちゃん(1歳)の3人家族。あんよを始めた双葉ちゃんを中心に、対面キッチンを備えたリビングダイニングにて。炊事しながら子どもの姿が眺められる。

 人口減少と高齢化に歯止めをかけようと、境町が取り組むさまざまな子育て支援。なかでも子育て世帯、新婚世帯を対象にした賃貸住宅「アイレットハウス」の建設は、この世代の転入増の直接的なきっかけになった。2018年から4年にわたって毎年新築した4カ所の集合住宅は、部屋総数108戸。現在、入居率100%で、住宅を利用した町への転入者数は累計で200人を超えた。この住宅への入居によって町内の子どもの数は約100人増えたという。

 鈴木闘士也さん、真希さん、双葉ちゃん家族は22年5月、千葉県柏市からアイレットハウスさくら館に移住した。

 「双葉が生まれて、それまでの家が手狭になったので、もう少し広い部屋を探しました。初めは柏市周辺でと考えましたが、手ごろな賃料の物件が見つからなくて。コロナ禍以降、仕事は2人ともリモートがメイン。私は都内の職場に週に1〜2日通っていますが、毎日でなければ通勤は多少遠距離でも大丈夫だろうと、エリアを広げて検討したんです」

 真希さんの実家は茨城県の県北。そこまで離れると通勤は難しいが、県南や県西ならばと、エリアの物件をインターネットであちこち検索。そうして巡り合ったのが境町のアイレットハウスだった。

 「境町はこのとき初めて知りました。ネットで調べるだけでなく、実際に町を何度か訪ねてみると、道路も広く車もわりと少なくて。のびのびした環境は子どもにとっていいなと思いました。そして何より移住の決め手になったのは、町の子育て支援が充実している点です」

 

子育て世帯が集まる新築住宅。家賃は東京周辺の3分の1

 築2年の3LDK、オートロックとエレベーター、宅配ボックスを備え、1台分の駐車場付きで家賃は月5万2000円(所得基準に該当する子育てまたは新婚世帯)。

 「築浅の同じ条件で比べたら、境町に移住したことで家賃は3分の1になったと思います。周りも子育て世帯なので、気兼ねなく暮らせるのもいいですね」

 通勤する日は東京駅まで高速バスを利用。在宅で仕事する日は、時間をつくって家の周りを散歩する。

 「都内に通勤すると1万歩以上歩いていますが、リモートで部屋の中だけで過ごすと数百歩。でもいったん外に出れば、信号で止められることもなく、気持ちよく歩けますからね」

 公営の屋内温水プールは800m先。料金は大人1回300円、幼児は無料で、水泳の好きな闘士也さんは頻繁に利用する。真希さんと双葉ちゃんもときどき一緒に水遊び。

 「子どもとゆったり過ごせる遊び場は周辺にたくさんあります。雨の日は、屋根付きの公園や、室内に遊具のあるS-WORK+KIDSに出かけます。どちらも無料で助かります」

 と話す真希さん。柏市時代は車なしで暮らしていたが、境町では車が生活必需品だという。

 「どこに出かけても駐車場は無料で広く、運転のストレスはありません。道が混むのは通勤時間帯の利根川を渡る橋くらいです」

真希さんはWEBデザイナー。仕事場はLDKに続く南西側の部屋の一角。

さかい子育て支援センター「S-WORK+KIDS」。雨の日でも遊べるだけでなくテレワークスペースもある。

大屋根とデンマーク製遊具を備えた「ニコニコパーク」。公園内には歯科医がプロデュースする食育カフェもある。

 

保育園事情と在宅ワークで住まい探しのエリアを拡大

元気いっぱいの男の子2人を子育てする池田さんファミリー。自宅アイレットハウスカンナ館の玄関前にて。

 池田徳光さん(34歳)、早紀さん(32歳)、丞之介くん(2歳)、匠吾くん(1歳)家族は、21年9月に、埼玉県戸田市から境町のアイレットハウスカンナ館に移住した。夫妻はともに都内の企業に勤務し、徳光さんは在宅でのリモートワークを中心に月1〜4日の出社、早紀さんは週3日ほど、高速バスで通勤している。徳光さんは言う。

 「21年までは妻もリモートがメインで週1日の通いでしたが、22年になって出勤が増えました。それでも私と妻のどちらかが在宅できるように、調整はできますからね。妻の出勤日は、私がバスターミナルまで送って、その足で子どもたちを保育園に預けています」

 移住を決めたいちばんの理由は保育園だった。ともにフルタイムで働く2人は、匠吾くんが生まれたあとに利用できる保育園を戸田市内で探したが、入園は難しかった。

 「待機児童は十数人、ゼロ歳児保育は特に絶望的でしたね。それなら、もう少し郊外で保育園に入れるところに移住しようと2人で話したわけです。コロナ禍で、毎日通勤する必要はなくなっていましたし」

 まずは埼玉県内を探したが、移住先として魅力に感じる場所はなかなか見つからない。そうしたなか、インターネット検索で、移住と子育て支援に積極的なまちとして挙がってきたのが境町だった。

 「まず、移住者向けのホームページが、ほかと比べてわかりやすくつくられていました。保育園の待機児童はゼロ。実際にまちを見に来ると、ちょうどアイレットハウスに空きが出て。それまでと家賃は変わらずに住環境は確実によくなると知って、即決で申し込みました」

 

新設の保育園に兄弟で入園。のびのび子育てできるまち

 出社日の徳光さんは、朝6時50分発の高速バスに乗り、王子駅で下車、文京区内の職場には8時30分までに到着する。

 「高速バスは座ってメールチェックなど仕事の準備や読書もできます。境町を選んだのは、バスの便があったからこそです」

 丞之介くん、匠吾くんは、車で7分ほど離れた新設の保育園に揃って入園。

 「周りには田んぼや畑が広がっていて、子どもたちは広々した園庭で思い切り走り回って遊べます。先生も明るくて、とても感じがいいです。都内の友達から、保育園はマンションで外遊びはベランダと聞くと、境町に移住したのは子どもにとってよかったなと思います」

 0〜2歳児の保育料は1人目上限3万2000円、2人目からは無料。早紀さんは言う。

 「家賃と保育料の負担が少ないだけでなく、物価は全体的に東京より安いです。特に野菜や総菜が違いますね。境町に住んでから、給料の丸々1人分を貯蓄に回せるようになりました」

 住宅の周辺には3km四方ほどのなかに役場や高校、スーパー、銀行、スポーツ施設、救急対応の総合病院など、生活に必要な施設が揃っている。

「町全体でも端から端まで車で10分ほど。コンパクトで住みやすいです。町内の買い物は普段着でいいですし、気楽でストレスフリーな雰囲気が気に入ってます」

休日の小春日和に誘われて出かけたのは、保育園に行く途中にある「さくらの森パーク」。緑のなかに遊具があって、親子でゆったり遊べる。

町内4カ所にあるアイレットハウスの集合住宅(写真はモクセイ館)。

 

子育て世帯のニーズに応え庭付き戸建て住宅を建設中

 とはいえ池田さんは最近、アイレットハウスの集合住宅、3LDK、床面積約20.5坪を、2人の男の子を育てながら夫婦揃って在宅ワークするには少し手狭に感じている。境町役場地方創生課の大島巧也さんは言う。

 「確かに、子どもが増えてもう少しスペースにゆとりがほしいというニーズはありますね。集合住宅を出て戸建て住宅を建てる家族も増えています。ありがたいことに、そのおよそ9割が町内での新築です」

 そして町では、アイレットハウスの第5弾として17戸の新築戸建て住宅を企画。23年春の入居に向けて工事が進んでいる。(※募集終了しています)

「ファミリー向けの戸建て住宅12戸は3LDKの2階建てで、ランドリースペースやパントリー、クローゼット、1・2階のトイレなど、より使い勝手がよくなっています。敷地は約70坪あって、駐車スペースのほか、専用の庭で菜園やガーデニングも楽しめます」

 残り5戸はガレージハウス。

 「LDKからホールを挟んでガレージを眺める間取りは、趣味を楽しみたい人に最適。こちらは家賃が高めの設定ですが、都会で実現するのは難しい、境町ならではの住宅と考えています」

 町では20年から、移住者向けに、戸建ての子育て世帯応援住宅を7戸新築した。

 「この7戸は町単独の事業として進めましたが、アイレットハウスには公共事業に民間企業のノウハウや資金を活用するPFIという手法を用いています。良質なサービスを低コストで提供できるうえ、国からの補助金が得られ、町の財政負担が軽減されるメリットもあるんです」

 小さなまち境町で、毎年次々に住宅を新築できるのは、境町ならではの工夫があってこそ。

 「今回の戸建て住宅とガレージハウスは、25年間住み続けた人に土地と建物を無償譲渡したいと考えています。すでに申し込みは終了していますが、多数の反響にお答えし、令和5年度も新築戸建賃貸住宅の整備を進めてまいります。今後もさまざまな移住&子育て支援を展開していく予定です!」

 
町が整備する新築賃貸
戸建て住宅&ガレージハウス「アイレットハウス オハナタウン」

高速バスターミナルまで徒歩2分、屋根付きの公園や小児科、保育園まで徒歩約6分の好立地。戸建て住宅、ガレージハウスともに25年間住み続けると土地建物を無償譲渡する予定。(募集は終了しています)

整備中のアイレットハウスの戸建て住宅地を案内するのは、地方創生課で移住支援を担当する和田かおりさん。

「戸建て住宅」は木造2階建て3LDK(居住面積約25坪)、敷地面積平均約72坪、賃料月6万8000円(減額前8万8000円)。敷地北側の公道に面して2台分の駐車スペース、南側に専用の庭を持つ。

「ガレージハウス」は木造3LDK+ガレージ(居住面積約36坪)、敷地面積平均約90坪、賃料月13万円。駐車スペースはガレージに1台分+敷地東側の公道に面して2台分。西側の庭に面したLDKのテラス窓の上にはパーゴラが設けられる。

 

無料の先進英語教育で小6の英検5級取得率7割以上

 数ある境町の子育て教育支援策のなかでも、鈴木さん、池田さん両夫妻が揃って絶賛したのは、町が取り組む先進英語教育。5歳から中学3年生まで無料で実施している。配属されるALT(外国人指導助手)は町内小中学校全7校に計24人。小学校1年生から6年生まで毎日45分、英語に慣れ親しみ、休み時間まで楽しみながら英会話ができる。

 夏休みにはイングリッシュサマースクール&キャンプを開催。また、小学5~6年生にはアルゼンチン共和国に約10日間の児童派遣事業が、中学生には姉妹都市ホノルルへのホームステイのチャンスもある。

 英検は9年間、年1回無料で受験でき、小学6年生の英検5級保有率は73.8%、中学3年生の英検3級以上保有率は42.3%(令和3年度)。取得率は年々上昇している。

優れたノウハウを持つフィリピン人ALTを採用。

ALTによる小中学生向けのオリジナルプログラムは、境町教育委員会のYouTubeでも配信されている。

 

境町から東京駅へ高速バスは町の支援で実現

 川村亮太さん(22歳)は大学4年生。高速バスで都内に通う。「学生の通学定期は半額補助されるので助かりました。ターミナルまで車で来れば駐車場は無料。欲をいえば朝の上り7時台と夕方下り18時台に便が増えるといいですね」。町の支援を受けて運行する高速バスだが、利用者は増加中。町では増便も検討中という。

 

町の事業の財源となるふるさと納税寄付額は48億円を突破

 境町はふるさと納税による寄付額が関東1都6県で5年連続トップ。地場産品を開発し、生産者が加工から販売まで手がける6次産業化を推進。寄付金の使い道を明確に伝えて町に興味を持ってもらい、リピーターを増やした。令和3年度の寄付額は48億円を突破。子育てや教育を支える大きな財源となっている。

 

子育て支援日本一を目指す境町の子育てサポート

①町独自に支援を充実、20歳の学生まで医療費無料
医療費は入院、外来とも20歳の学生まで無料。

②所得制限なしで応援、3~5歳児の給食費無料& 第2子以降保育料無料
3~5歳児の給食費5300円/月×3年間、約19万円分を補助。保育料は第2子以降無料。いずれも所得制限はない。

③兄弟の多い家庭にうれしい小中給食費半額&第3子以降無料
小中学校の全児童生徒を対象に、給食費は第1子、第2子が半額、兄姉の年齢に関係なく第3子以降は無料。

④年間1万9175食以上を提供、境町こども食堂
毎週土曜、日曜日には、町内の飲食店14店舗と協力し、各店10食+企業から寄付された食数分の弁当を子どもたちに無料配布。

⑤第3子以降の出産奨励金として総額50万円を支給
0歳時20万円、3歳時10万円、6歳時20万円の奨励金を支給。

⑥家事や育児を訪問サポート、パパママお助けヘルパー
母子手帳取得後から産後1年未満の妊産婦を対象に、ヘルパーなどが自宅を訪問、家事や育児を支援する。500円/1時間(非課税世帯は200円、生活保護世帯は無料)。

⑦送迎や預かりなどを支援、子育てサポーター事業
生後6カ月から小学生までの子育て世帯に、ヘルパーなどが自宅を訪問、送迎や預かりなどをサポートする。500円/1時間(非課税世帯は200円、生活保護世帯は無料)。

【まだある!境町の子育て支援】

  • 母子手帳交付時に授乳服プレゼント
  • 出産祝い品(子育て製品)プレゼント
  • 産後ママのリフレッシュ事業
  • オムツなど育児用品購入費を助成
  • チャイルドシートの購入費を助成
  • 病児保育完備の保育園を新設
  • 町内保育施設のオムツ持ち帰りなし
  • 町内勤務の保育士等に月1万円支給
  • 学校トイレ洋式化
  • 水泳の授業は屋内温水プール

 

境町の移住定住支援情報
町民税や固定資産税もサポート

●移住促進奨励金
境町に初めて転入した人に対し、転入2〜3年目は町民税の30%、4年目40%、5年目50%相当分を交付。

●定住奨励金
IターンまたはUターンし、転入後2年以内に住宅を新築または購入した人に、家屋の居住部分にかかる固定資産税相当額を、課税開始後3年間交付。

●子育て世帯等定住促進奨励金
中学生以下の子育てをする世帯、婚姻後3年以内の新婚世帯が、転入または転居して住宅を新築または購入したとき50万円を交付。

●民間賃貸住宅家賃助成金
中学生以下の子育てをする世帯、婚姻後3年以内の新婚世帯が町外から転入し、町内の民間賃貸住宅に入居する場合(年齢や所得などに条件あり)、月額1万5000円を最大24カ月間助成。年度ごとに先着10件。

問い合わせ/境町地方創生課 ☎0280-81-1309
境町移住サイト「さかいじゅうナビ」
https://www.town.ibaraki-sakai.lg.jp/page/page001032.html

品川区の「スポル品川大井町」から移転し、2023年1月にプレオープンしたばかりの人工サーフィン場「citywave Tokyo Sakaimachi」は、高速バスターミナルに隣接。

町では、まちと人をつなげる地方創生プロジェクト「S-PROJECT」として、子育てや創業、地域資源を生かした店舗などの整備を進めている。「河岸の駅さかい」は1階をベーカリー、2階をシェアオフィスとして活用。

「子どもの未来は境町の未来。安心して子育てできるまちをつくります!」
町の子育てと移住支援について案内してくれた和田かおりさん(右)と大島巧也さん(左)。

 

文・写真/新田穂高 写真提供/茨城県境町

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