“脱東京”でかなえた大分田舎暮らし
別々に脱東京して大分で結婚。ゲストをもてなし、地域に恩返し【大分県日出町】
それぞれ別々に東京から大分へ。移住先で出会い、まるで必然だったかのようにゲストハウスを開業した桜井さん夫妻。「今度は私たちが恩返しする番!」と楽しそうに語る2人の、充実の移住生活を伺った。
掲載:2023年3月号
景色に魅了され移住を決意。夫妻で紡ぐていねいな毎日
木々が立ち並ぶ小道を抜けると、目の前に広がる輝く海。「車で物件を探していたときにたまたまたどり着いたんです。春だったからサクラが満開でね。海を一望できるのも気に入って、絶対この物件でゲストハウスをしたいと即決でした」
そう話す桜井高志(さくらいたかし)さん(59歳)は、妻のあまねさん(57歳)とともに古別荘をリノベーションしたゲストハウス「Sakura Beach Garden(サクラ ビーチ ガーデン)」を営んでいる。
東京出身の高志さんは、出張で全国を飛び回る日々。日出町の隣、杵築市(きつきし)に滞在した際、ホテル周辺の散歩中に見つけた景色に感動した。「いつか東京を離れてのんびり暮らしたいと思っていたし、馬と一緒に暮らすのも夢だった」と、脱東京への思いが強まった。とんとん拍子で話が進み、土地を購入してコンテナハウスをセルフビルド。2007年には東京と杵築市の二拠点生活を始めた。
のちに妻となるあまねさんは、大学進学で上京し、海外の民芸品を輸入販売する会社に勤務。学生時代から海外旅行も好きで、「仕事も含めると20カ国くらいは行きました」と振り返る。都会や海外が大好きなあまねさんが、日本の田舎に興味を持ったのは、東京郊外に引っ越して車を運転しはじめたこと。田舎の魅力に気づき、10年に豊後高田市(ぶんごたかだし)に移住。グリーンツーリズム(農家民泊)のホストの体験を通して、地域の魅力を発信する面白さを実感した。「これからはもてなす側になって恩返ししたい」と、別府市へ住まいを移し、宿泊とロミロミなどを提供するゲストハウス「BEPPU☆くにさち」を開業した。
それぞれに脱東京して大分県へ移住した2人をつなげたのは、あまねさんが外国人旅行者向けのサイトづくりを以前から顔見知りだった高志さんに依頼したこと。学生時代にバックパッカーとして海外を旅していたことや、ゆっくり生活したい、地域に恩返しをしたいなど、共通点が多い高志さんとあまねさん。「それなら一緒にやろう!」となり、冒頭の物件と出合い、17年に日出町にゲストハウスをオープンした。
古別荘は10年以上空き家だったため大幅にリノベーション。
「それまで築いてきたお互いの人脈に助けられました」と、ステップ移住したからこそ得られた、さまざまな特技を持つ友人たちの手を借りながら、一部は自分たちで改修。青い空、広い海、その先に広がる別府の風景を借景に、大人のくつろぎ空間を提供している。
「大分県の魅力発信にも尽力したい。移住希望者に向けた活動もできたらいいですね」と桜井さん夫妻。観光客はもちろん、移住者目線の魅力発信にも力を入れたいと意気込んでいる。
桜井さん夫妻にお聞きしました!
Q脱東京してよかったこと
身近に自然が感じられ、コンパクトな町で生活に困らない。日出町は便利さと豊かさが両方あり、不便はありません。(高志さん)
地域に愛着が湧くようになりました。好きなまちに住むことで、毎日笑顔で過ごせます。(あまねさん)
Q東京時代と比べて大きく変わったこと
時間が流れる速度はゆっくりだけど、密度の濃い時間を過ごせています。(高志さん)
地域の人だけでなく、商工会や観光協会など、人とのつながりづくりに積極的になりました。地域貢献の意識も高まりましたね。(あまねさん)
日出町移住支援情報
都会すぎず田舎過ぎず「ほどよい田舎暮らし」ができる
温暖な気候や豊富な湧水など自然環境に恵まれている一方で、中心部にはスーパーや病院などが集まり生活の利便性も確保されている、「ほどよい田舎暮らし」ができる。大分市や別府市へのアクセスも良好。移住支援として、住環境の確認や住居探しの際に使える宿泊費補助などを用意している。
問い合わせ:日出町まちづくり推進課 ☎︎0977-73-3158
移住・定住情報/日出町 (hiji.lg.jp)
文/黒木ゆか 写真/衛藤フミオ 写真提供/Sakura Beach Garden
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