田舎でのお悩みを、田舎暮らしのベテランライターが回答。今回は、田んぼだったところに家を建てたことによる問題を取り上げます。
小さな田んぼと小高い山を親戚からもらい、農地転用の許可を得ました。田んぼは荒れていて地面がベトベト。重機の操作はできるので、田んぼに盛土(もりど)しました。100坪くらいの平地ができたので、半年後にキットのログハウスをセルフビルド。ところが、1年も経たないうちに基礎にひび割れが生じ、建物が傾いてきました。窓が閉まらなくなったり、頭が痛くなったりするので、困っています。
宮城県在住 山下さん●52歳
不同沈下により、精神にも悪影響が
山下さんは田んぼに盛土して半年後、キットログをセルフビルド。1年も経たないうちに基礎にひび割れが生じ、窓も閉まらなくなり、頭が痛くなったという。
不同沈下(ふどうちんか)の初期は壁にひびが入る程度だが、それが進むと建具の開閉に支障が生じ、床が傾いてくる。ときには、建物の寿命が短くなるだけでなく、精神にストレスを与えるといった健康面に悪影響が出ることもあるから恐ろしい。
田んぼは道路より低い場所にあるものが多く、水が集まりやすい。また、周りに水路を遮らせているので、家を建てるには農地転用後に土木工事が必要だ(下の図参照)。
水はけが悪ければ暗渠排水で水抜きを
いちばん確実なのは、田んぼの土を取り出し、山砂と入れ替える方法。普通の土と比べて水はけがよく、固まりやすい性質を持っている。
さらに、ローラーなどで転圧すること。それをしないで自然に安定させるには、何年もかかる。山下さんはこの転庄が不充分だったため、不同沈下を起こしてしまったのだ。
山砂は意外に高価。それを節約して田んぼの土を利用する場合は、暗渠排水(あんきょはいすい)で水抜きするといい。これは土の中で水を集める排水設備で、水が湧いてくるような土地でも必要になる。施工は、まず幅約30㎝、深さ約50㎝の溝を掘る。溝の底はやや傾斜をつけて、水が田んぼ脇の小川か水路へ流れやすくするのがポイント。あとは穴の開いた直径100㎜のコルゲート管を配管して、砕石などで覆っておく。
半年くらい水抜きを行ったら、道路より高く山砂を盛り、しっかりと転圧。必要に応じて杭を打ち、土留めやのり面加工も行うといい。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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