掲載:2023年10月号
無農薬で自給にぴったり
葉ニンニクや芽も楽しめる
ニンニクの原産地は中央アジアと推定され、水はけがよく地下水が豊富なステップ草原です。古代エジプトではピラミッドの建設現場で強壮剤として配られていました。虫害に強く無農薬で育てやすいうえ、収穫した球は食べてよし、種イモにもなる、自給しやすい野菜です。香りが害虫を避け、土中の殺菌効果も持つためコンパニオンプランツにも適します。
1 土づくり
初めての菜園では畝を準備
日当たり、水はけのよい畑を好む
水はけのよい粘土質の畑を好みます。過湿を嫌い、未熟の堆肥や追肥のやり過ぎなどは赤さび病などを招きます。水はけの悪い畑では高畝に。火山灰土はリン酸不足に陥りやすいため、バットグアノでリン酸を多めに補うのがコツです。
2 植え付け
①最高気温が25℃を下回ったら植え付け
ニンニクは25℃以上では発芽しません。また、越冬時の葉数は少なくても多過ぎてもうまく育ちません。越冬に本葉3~4枚で充分に深く根を張らせておくと、その後、球がしっかり肥大します。地域風土に合った品種を選ぶのがコツ。適期は9月下旬から10月上旬ごろです。最高気温が25℃を下回り、地温20℃前後のタイミングを逃さずに植え付けましょう。
②りん片に分けて皮をむく
種球は1片ずつに分けて植え付けます。また、薄皮は発根・発芽を抑制するため、むいてから植えると、スムーズに発芽します。
食べるときのように薄皮をむいてから植え付ける
③大きさを揃えて植え付ける
りん片は同じ大きさ同士を揃えて植え付けてください。大小並べて植えると、小さいほうが負けて消えてしまいます。株間はりん片の大きさによって調整し、大で15cm、中なら12cmほどです。
④寒い地域では深め、暖地では浅めに植える
植え穴の深さは浅いほうが発根・発芽は早くなりますが、霜に弱くなります。このため、寒い地域では種の上にさらに種1つ分ほど土が被る深さに、暖地では種の頭が地面すれすれの深さになるようにしてください。
周囲の草を地際から刈り、植え穴を掘って、種のりん片を植え付ける。寒冷地に住む竹内さんは深めの穴に植えている
掘った土をそのまま埋め戻し、しっかりと鎮圧しておく
刈った草を寄せて植え穴の周囲を草マルチで覆う
3 お世話
①ウメの開花とともに草マルチと米ぬかを
春先、草が茂り過ぎるとニンニクの生育を妨げます。株元の直径15cmほどの範囲の草を地際から刈ってください。その際ニンニクを刈らないように気をつけて。刈った草は草マルチとして株元に敷きます。さらに、草マルチの上から米ぬか一握りの補いを。やせた畑では米ぬかと油かすを半々に混ぜても効果的です。
春からは草負けしないよう、株の周囲の草を刈って草マルチを重ねていく
②雨がなければストチュウ水※
春に雨の多い年は、ニンニクは豊作になります。サクラの咲くころに雨が降らないときは、7日に1度、ストチュウ水でたっぷり水やりしてください。
※ストチュウ水…雨水に似た野菜の栄養ドリンク。酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL )3杯の原液を混ぜる。
よく晴れた暖かい日中、株元にストチュウ水をたっぷりとかける
4 収穫
①葉ニンニクはサクラの咲くころに
球が肥大を始める前、サクラの花が咲くころに葉ニンニクを収穫します。小さい種から育った株や、わき芽が出てきた株は、わき芽を抜き取って葉ニンニクとして食べましょう。わき芽をそのまま付けておくと、球は大きくなりません。
わき芽を抜き取るときは、残すほうの大きい株を抜けないように手で押さえ、小さいほうを抜き取る
②とう立ちしたらニンニクの芽として収穫
茎の先がとう立ちしたら、やわらかい部分を早めに切り取り、ニンニクの芽として食べましょう。とうをそのまま付けておくと、球の肥大を妨げてしまいます。
手で曲げてやわらかい部分から先を切り取る
③葉が枯れ始めたら新ニンニクを収穫
5月下旬に葉が枯れ始めたら、食べる分だけ引き抜いて新ニンニクとして収穫できます。新ニンニクは水分が多くフレッシュですが保存はできません。
葉が枯れ始めたら食べる分だけ引き抜いて収穫できる
④保存用の収穫は葉の3分の2が枯れてから
保存用のニンニクは葉の3分の2が枯れて、球の水分が適度に抜けてから収穫します。3日間晴天が続いた日を狙って抜き取ってください。その場で根を元から切り、土の付いた皮を1枚むきます。翌日になるとうまく皮がむけません。
葉の3分の2が枯れたら保存用を収穫
茎を持って引き抜く
抜いたらその場で根を元から切り落とす
外側の皮を1枚むく
⑤球のまま吊って保存
保存は球のまま茎をひもで縛るか、タマネギ用のネット袋に入れて、風通しのよい日陰に吊るします。茎は15cm以上残して。短く切ってしまうと傷みやすいです。また、球をばらして片に分けるとすぐに芽が出てしまいます。
葉を切り落とすときは茎を15cm以上残して。切り落とした葉は草マルチに。アブラナ科の作物などの株元に敷くと虫よけにも役立つ
ひもで縛るなどして吊って保存する
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』、最新刊・新装版『無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜』(すべて宝島社)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
この記事の画像一覧
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする