俳優・東出昌大の“今”を追ったドキュメンタリー映画『WILL』が2024年2月16日から公開される。彼はなぜ、現代人にとっては不便極まりないはずの山中に居を構え、狩猟生活をしているのか。動物の生命をいただきながら自分の生命をつなぐ、原始的とも言えるほど生々しい生き方にこだわる理由は何なのか。映画の内容を補足する、全4回のロングインタビュー、第2回目。
狩猟を通して発見した“知ってる”と“分かる”の違い
――映画『WILL』をはじめ、東出さんはここ数年でかなり数多くの映画に出演されています。なんだか、むしろ以前より忙しくしているのではないかという印象がありますが、東京に住んでいなくても大丈夫なのですか?
(東出さん:以下、省略)「実は役者の仕事って、田舎暮らしと相性が良くて。一つの現場に行ったらそこで2週間から3週間ずっと過ごして撮影し、終わったら帰ってくるわけですから、家は東京じゃなくてもいいんです。地方のロケや公演のときは、宿代も出してもらえますし。小屋作りで喧嘩した土地のおっちゃんは、いつも嬉しそうに『でっくん、また出稼ぎに行くんだね。行かないとご飯食べられないもんね』って言ってますよ(笑)」
――役者の仕事を終えて家に帰ってきたら、また狩猟生活をするわけですよね? すごいギャップのように感じます。東出さんは狩猟をするようになって、何か新たな発見はありましたか?
「それはもうたくさんあるんですけど、“知ってる”と“分かる”は全然違うことなんだなと思うようになりました。猟を始める前から興味を持っていたので、“オート”という銃に弾が3発入ることは知っていました。ということは、獣の群れに遭遇してバンバンバンって3回撃ったら、3頭獲れるんだろうなと思っていたんです。でも本当はそんなものじゃなくて。実際に猟に出て、初めて分かったことがたくさんあります」
(映画『WILL』より)©2024 SPACE SHOWER FILMS
――え? どういうことですか?
「猟の現場で、鉄砲を連続で3発撃つことなんてないんです。獣は初弾で決めないといけない。一発撃つと、音に驚いて群れ全体が走りはじめます。走ってる獣を狙うと、当たりどころが悪くて肉を傷めてしまう可能性が高いから撃たないんです。 “とにかく初矢が大事”というのは、猟をはじめてから実感したことですね」
――都会で暮らしていても、今はネットで情報を簡単に得られるから、分かったつもりになっていることが多いんでしょうね。それはただ、“知ってる”にすぎないということですね。
「そうなんですよ。猟だけではなく、田舎暮らしに関することは全部そうです。たとえば干し柿を作ろうというとき、その方法は本にも書いてあるし、インターネットで検索すれば一発で調べられます。でも僕は以前、分かっているつもりになっていざ実践したところ、全部腐らせてしまいました。『なんでだ⁉︎』と思ってたら土地の人が、『どうしてこんなところに干したんだ? お前、ここは山の中なんだから、“もや”が出るに決まってんだろ』って。“もや”の湿気で、腐ってしまったんです……。『知らんかったー、書いてなかったわー』みたいな(笑)。いっぱい試したり実践したりするうちにやっと、なるほどって分かる。この“腹に落ちる”感覚を、いろいろ経験できるのが面白いんです」
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この記事を書いた人
佐藤誠二朗
さとう せいじろう <編集者/ライター、コラムニスト> ●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長を務める。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社)はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。その他、『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物も多数。最新作『山の家のスローバラード 東京⇄山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』(百年舎)が好評発売中。
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