掲載:2024年2月号
春の芽出しは腐葉土の中で
夏の草マルチと水やりで豊作に
サトイモの原産地は東南アジアの熱帯林。稲作伝播以前の縄文時代中期ごろ渡来しました。高温多湿を好み、熱帯では多年草ですが、日本の一般地の畑では越冬できません。親イモを囲むように子イモ、孫イモが育つため、秋の名月に供えるなど、豊作と子孫繁栄の象徴とされてきました。春、腐葉土に埋めて暖かい場所で芽出しをするのが収量アップのコツ。自然菜園で草マルチを重ねて育てると、ねっとりとおいしいイモが収穫できます。
1 土づくり
初めての菜園では畝を準備
水持ちのよい畑で育つ
水持ちのよい土を好み、乾燥時に水を引き込めるか、水やりのできる場所を選びます。もと田んぼなどが最適。はじめて菜園にする場合は畝の準備をしてください。原産が林の中なので腐葉土と好相性です。
2 芽出し
種イモを腐葉土に埋めて
湿り気と地温15℃以上を保つ
発芽適温が15℃以上のサトイモは春先に直接畑に植えてもなかなか芽が出ません。暖かい場所で芽出しをして、気温が上がってから畑に定植すると、芽出しした分、生育期間が長くなってイモの収量を増やせます。コツは腐葉土に入れること。適度に湿り気が保たれ、種イモがカビる心配も少ないです。春に種イモを求めたら、そのまま置くよりも、すぐに芽出しを始めたほうが種イモが傷みません。
深めのプランターや、底に水抜き穴を開けたトロ箱などに腐葉土を入れ、種イモを並べたら腐葉土で覆う
種イモは芽が少し出ている頭を下向き斜め45度に並べる
種イモの2倍ほどの腐葉土で覆って乾燥を防ぎ、最後にたっぷりと水やりする
ビニールで覆い、空気が抜けるよう全体に小さい穴を開ける。夜間10℃以下にならない場所に置き、地温15℃以上を保つ
その後も観察を続けて、腐葉土が乾いたら地温が下がらないよう日中にたっぷり水やりする
3 植え付け
①地温15℃を上回り
小麦の開花のころを目安に
地温が15℃以上になったら種イモを畑に植え付けます。最低気温18℃、小麦の開花が目安です。種イモから芽が出ていても発芽前でも、この時期になったら畑に植え付けてください。
②植え穴は深めに、覆土は浅く凹ませて
植え穴を掘り、芽出しと同じ下向き斜め45度に種イモを置き、穴の3分の2まで覆土します。植え付け時は覆土が凹んだ状態にしておくと、後の土寄せが楽になります。
(種イモの下の部分は腐葉土)
種イモの3倍の深さに植え穴を掘り、種イモを置き、穴の3分の2まで覆土する
周囲の草を地際から刈った後、植え穴を掘る
芽出しに使った腐葉土を植え穴の底に入れる
種イモは芽出しと同じ下向き斜め45度に植える。芽は地上に向かって伸びている
覆土後は、凹んだ状態がよい。地温を上げるため草マルチはしない
種イモが発芽して茎葉を付けている場合は茎葉を出して平らになるまで覆土する
4 お世話
①植え付け後1カ月で2度の土寄せ
育った子イモが土の外に出ると味が落ちるうえ、孫イモも付きません。植え付け後1カ月は生育に合わせて2度ほど土寄せをしてください。
株の周囲の草を除き、株元に土寄せする
②親イモから出たわき芽を除く
植え付けた後、親イモからわき芽が出る場合があります。これは土寄せと同時に引き抜いてください。植え付けから1カ月以上あとに出るのは子イモの芽なので抜かずにそのまま育てます。
太い株が抜けないように手で押さえながら、細いわき芽を引き抜く
③梅雨明け前から草マルチ
2度の土寄せの後、梅雨明け前からは土寄せではなく、真夏の高温と乾燥に備えて、株元に草マルチを重ねていきます。
真夏には草マルチを繰り返し重ねて地温の上がり過ぎを防ぐ
④月に一度、米ぬかと油かすを補う
草マルチと同時に、月に一度ほどのペースで米ぬかと油かすを半々に混ぜたものを一握り補ってください。
草マルチの上から米ぬかと油かすを株の周りにぐるりと補う
撒いたら軽くたたいてなじませる
⑤2週間に一度たっぷり水やり
サトイモが育つには充分な水分が必要です。2週間に一度、土深く水が染み込んで、株が水分を蓄えられるだけ、たっぷり水やりしてください。目安は1株に10L以上。30℃を上回る真夏の水やりは、夕方に葉の上からかけるようにして、株を冷やすと効果的です。
日中に水やりする場合は、葉にかけず株元にたっぷりと
田んぼなど水を引き込める畑では、真夏の乾燥時、畝間に夜のあいだ水を入れるとよく育つ
5 収穫
①初霜直後にすべて掘り上げる
収穫が早いとシュウ酸が抜けずにえぐ味が残り、遅れると寒さで傷みます。初霜に当たったら、二番霜の前にすべてを掘り上げてください。暖かい地域では葉が枯れはじめて垂れ気味になったら、降霜まで順次収穫できます。
株の外側にスコップを入れ、株ごとイモを浮かせる
茎を持って株ごと抜き取ったら、株元からイモを切り取る
保存するイモは土を付けたまま、親イモから子イモを外さずにおく
茎葉は短く刻み、重ねてあった草マルチとともに、掘り上げた穴に埋め戻しておくと、翌年の畝の準備になる
②種イモの保存はもみ殻に入れて
サトイモの保存温度は8℃以上。一般地なら土に埋める方法もありますが、少量なら段ボール箱にもみ殻を入れ、暖かい室内での保存もできます。親イモから子イモを外さず、土を落とさず、収穫した塊のまま逆さまに置き、密閉せずに保存してください。
段ボール箱にビニール袋を入れ、底にもみ殻を敷き、イモの塊を茎の付いていた側を下向きにして入れる
イモが隠れるまでたっぷりともみ殻を入れ、隙間なくしっかりと詰める
新聞紙をかけ、ビニール袋は密閉せずにおく。さらに段ボールのふたを閉めて、冬季に8℃以上を保てる場所に置く
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜 ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』、新装版『無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜』(すべて宝島社)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
この記事の画像一覧
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする