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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(月)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

「強さ」と「優しさ」あるいは道徳について/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(52)【千葉県八街市】

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 4月2日「我が子であるタケノコに向ける親竹の優しさ」。

 晴天は今日で終わりだという。なんと、新聞の天気欄を見るとこれから1週間ずっと雨か曇りマーク。落胆だなあ。さて、僕は活発なニワトリの行動に振り回される日々が続いている。僕の食事時を狙って足元に集まり、ちょっと目を離すと食卓に飛び乗って用意した皿をつつくヤツがいる。かと思えば、茶室の屋根に設置したソーラーパネルの下に卵を産んで手間をかけるニワトリもいる。カラスはそれを見逃さない。よって僕は、産卵の声が響くと梯子を伝って屋根に上り、カラスからの被害を防ぐのだ。

何度も書いた。このニワトリは探求心が旺盛で、頭が良い。そのぶん僕の手間を増やす。

3メートルの高さにあるソーラーパネルの下にニワトリが卵を産む。それを取りに行ったついで、眼下の風景をしばし楽しむ。

夕方や吹くともなしに竹の秋  永井荷風

 まだダメだろうなあと思いつつ、竹林に入った。両手で落ち葉をさらい、タケノコは出ていないかと目を凝らした。残念ながら見つけたのは小さいのが1個だけ。ボコボコ出るようになってからでは有難みが薄れる。今だからこそお客さんには喜んでもらえる・・・そんな思いで切望して待っているのだが、天候には勝てない。「竹秋」という春の季語がある。多くの植物が晩秋に落葉するのに、竹の葉は春に黄色くなり、ハラハラと地上に降り積もる。なぜだろうか。我が子であるタケノコに栄養分を与えるためであるらしい。まさに我が身を削って子に尽くす。生きているものはみな我が子に優しいねえ。竹もそうなんだな・・・。この下のチャボの親子の写真。子供らはこの大きさになってもまだ母を慕い、ちょっと肌寒い日には羽の下にもぐろうとする。うまくもぐり込めたもの、ダメだったもの、その対比と、輪になって身を寄せ合う家族の姿がなんとなく微笑ましくもおかしい。

母は強い。そして優しい。何十年と変わらぬチャボへの印象だ。

増えすぎた竹の伐採と、その片付けに僕は毎年多くの時間を費やす。親の愛を受けて地上に顔を出したタケノコをそっと慈しむ。

 静岡県知事が不用意な発言を責められ辞任の意向を表明したと夜7時のニュースで伝えられた。問題の発言とは。昨日のこと、新規採用職員への訓示が行われた。そこで川勝知事はこう述べた。

県庁はシンクタンク(政策研究機関)だ。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い方たち。それを磨く必要がある・・・。

 僕は昨日、スマホのせいで表現力が低下しているかもしれないみたいなことを書いた。しかし、この知事の発言の顛末を知ると若者だけじゃなく、立派な大人も同じだなあという印象を抱く。ただし僕にはわかる、言葉の背景が。知事の発言は野菜農家や酪農家を貶めるものではないこと。目の前の新人たちに檄を飛ばす、そのインパクトを強めたいあまり、第三者を低いポジションに置いてしまったのだと。気持ちは分からないでもない。しかし、目先のことだけ考えて、総体としての自分の発言がいかなる意味と流れになるか、その判断力を欠いていた。県民への優しさも欠いていた。僕が知事だったらこう言う。野菜農家や酪農家の皆さんは我々にとって大切な食べ物を作ってくれています。皆さんには、そうした方々と同じくらい重要な仕事をこれから県庁でしていただくこととなります。どうぞ努力と研鑽を忘れずに・・・。

4月4日。37年前に苗木を植えた桜が咲き始めた。桜の木は全部で9本。どこにも行かず花見が出来る。田舎暮らしがくれる特権であろうか。

この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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