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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【14】

前回までに外壁のモルタル下地を塗り終えた和田邸。今回ははめ殺し窓の製作、下見板張り、下見板の焼きである。またも和田の「予定調和的テキトープレイ」が大炸裂だ。

掲載:2017年6月号

和田謹製はめ殺し窓。遠目からだとキレイだが、近くで見るとイマイチ……、いやイマハチくらいかな。

 

廃材流用のガラスは苔だらけ

 引き続き外壁の施工である。
 まずは「はめ殺し窓」。和田の計画では掃き出し窓の上部に横長の明かり取りをつけたいらしい。
 ガラスは買うと意外と高いので、当然廃棄してあるサッシ窓をバラして取り出すのだが……、ここで和田が持ち出したサッシ。これがまた汚い。何年も打ち捨ててあったらしく緑色の苔が一面に繁殖している。たとえて言うなら「ずっと掃除していない金魚鉢」のようなサッシ窓である。庭の片隅に山積みしてあるなかの1つを運び出してきて、サッシ枠とゴム枠を取り外し、ガラス板のみにしたものを作業台に安置。
和田「ガラス切りカッターっていうのを買ってみたんだけど、中山さん使ったことあるんでしょ? 教えて!」
中山「でも強化ガラスだったりしたら、うまく切れないかもよ」
和田「大丈夫! 大丈夫!」
 相変わらず根拠のないことを言うヤツだ。まあでも捨ててあったやつだし、いいか。ともかく切ってみる ことに。切り方は下のコラムの通りで、なんとか切ることができた。
中山「やってみ?」
和田「やるやる!」
 ガラスの表面にキリキリと傷を付け、カッターの反対側の金属の玉で叩く。
 カチカチ……。
和田「あれ? 割れないな!」
 カチカチ……。
和田「なんか、おかしいんじゃね?」
 和田の表情が徐々に険しくなっていく。
 ガチガチ……、ガンガンガン!
中山「あ、あんまり乱暴にしたら……」
 バキッ!
 案の定、ガラスはあらぬ方向に亀裂を伸ばして割れてしまったのであった。まあしかしこれも想定内。気を取り直して2回目はまずまず成功した。

和田の敷地最深部に捨て……ではなくて、野ざらしで保管してあった「苔サッシ」を運び出す。

この「苔サッシ」をバラしてガラス板だけにしたものを加工する……が、しかし。「せっかち星人」の和田にかかると粉砕される危険が!

どうにか1枚成功。切り口がガタガタなのはご愛敬ということで。

阪口製作の「丸ノコくん」登場

 次に窓枠の作製である。ここで満を持して阪口が取り出したのが、
阪口「じゃじゃーん! うちのヒ ミツ兵器『丸ノコくん』だ! 参ったか!」
 それはパーティクルボード(木材の砕片に接着剤を混ぜ加熱圧縮成形した板)に丸ノコを固定したもので、業界的には「テーブルソー」というもの。誰もが考えつきそうで、でも面倒くさいから実際につくってみたことはない、という感じの安っぽさである。
和田「ホントに使えるの?(失笑)」
中山以前の『筋交(すじかい)くん』といい、どうもダサいんだよね(冷笑)」
阪口「ふっふっふ。笑ってられるのも今のうち。ホントに気持ちがいいくらいスパッと切れるんだからね」
 阪口は「丸ノコくん」を、丸ノコを下にしてセッティングすると、窓枠となる端材をあてがった。そしてガイドに当てて端材をスライドさせると……。
一同「おおーーっ!」
 なんと真っすぐの切れ目が、しかも素晴らしくスムーズに仕上がったではないか。
和田「これはいいね!」(←手のひらを返したように絶賛)
阪口「でしょ? 我が家でも重宝してますよ」(えっへん!)

阪口謹製「丸ノコくん」。 パッとしない体裁ではあるが……。

つくり方は至極簡単。パーティクルボードにノコ刃の可動部分だけ切り欠きを入れ、裏側に丸ノコをビス留めする。あとは切断幅に応じてガイドの木っ端の位置を変えるだけ。

完成した「丸ノコくん」にご満悦の阪口。

ほとんど抵抗を感じずにスイスイ切断。急にニコニコ顔になる和田。

仕上がりの精度も高いのだ!

 こうして出来上がった木枠にガラス板をはめて、すき間に漏水防止用のコーキング剤を注入する。そしたらそのコーキング剤がまた半年以上も前のやつで、注入口が完全に硬化しているのだ。
阪口「……なんかオチが見えたような気がする」
中山「オレも見えたよ」
 我われの予想は当然のように的中した。和田がその馬鹿力を発揮すると、高圧で押されたコーキング剤が一気にドバーッ!
 せっかくキレイに仕上がった窓枠がデロデロになってしまった。
中山「さっきのガラスといい、この手の失敗は、もはや予定調和といってもいいレベルだな」
和田「いいのいいの! どうせ見えないところだし!」
阪口「この発言も予定調和……」

出来上がった木枠にガラス板をはめてみる。

キラウエア火山のごとく噴出したコーキング剤を慌ててミゾになすりつける和田。デジャ ビュ感満載。

コーキング剤が乾く間もなく、所定の位置に取り付ける「せっかち星人」。

ご満悦の「せっかち星人」。

 

外ヅラだけいい和田邸は「天ぷら住宅」

 次の作業は下見板張りだ。和田の計画では、どうやら家の北側(裏側)の壁は下見板、南側(表側)は漆喰塗り壁で仕上げるらしい。
中山「なんで裏表で違うの?」
和田「下見板にちょうどいい一枚板をたくさんもらったの!」
水野「ホントは漆喰が高いから、ケチって下見板にしたんでしょ?」
和田「ぐ……。ま、それもある!」
 目立つ表側だけ経費のかさむ漆喰仕上げで、裏側は廃材の下見板張り……、意外と見栄っ張りの和田なのであった。じつは「和田の見栄っ張り」は、妻換気の窓の飾り窓にも表れていた。我われが内壁の受け材のビス留めという、かなりつまらない作業をやらされている間、和田はこの飾りの作成に嬉々として励み、余念がない。出来上がったのを妻壁に仮留めして、わざわざ脚立を下り、遠目から眺めてみる。
和田「ちょっと間隔が空きすぎかな!」
 また上って飾り窓を下ろし、修正して再び下から眺める。
和田「ちょっと曲がってるな!」
 そしてまた上る……。
阪口「そんなのどうだっていいじゃん。手伝えよ、こっちを」
和田「ここはちゃんとつくらないとね! なんと言ってもこの家の顔だから!」
水野「意外と外ヅラを気にするんだよね。和田さんって」
中山「その昔『天ぷら学生』って言葉があったよね。衣だけ立派で中身が伴ってないっていう」
 その伝で言えば、和田邸は「天ぷら住宅」だ。

 

施工してから焼いてはいけません

 さて家の裏側の下見板。黒く焦げたように見えるのは「焼きスギ」(正確には、使用した板はスギではなくてマツ)だ。表面を焦がすことで防腐防虫効果があるのはよく知られているところ。しかし和田のすごいところは……。
 施工してから焼く!
 和田が取り出してきたのはバズーカ砲のような重火器であった。これ、じつはガーデニング用の火炎放射器である。灯油を注入してポンピングで加圧し、気化した灯油に着火。
「ズゴ−−−−−−−!」
 噴き上がる炎を壁に向けて発射。下見板が見る見る真っ黒焦げになっていく。
阪口「すげえな」
中山「もともとは雑草の焼却とか土壌の殺菌とかに使うものらしいね」
和田「ホラホラ! 水かけないと! 家が燃えちゃうから!」
 見ると壁がプスプスとくすぶり煙が出てるではないか。慌ててホースで散水する。
阪口「もはや家を建てているのか壊してるのか、わかんないよね」
和田「建ててるに決まってるじゃん! 現にこうやって……、ああーっ!」
 窓際を焦がしていた火炎が網戸を溶かしてデロデロに!
中山「これぞまさに!」
一同「焼きすぎ⁉」
 予定調和なオチがついたところで、今回はこの辺で……。

バズーカ砲のような火炎放射器で自宅を焼く。

商品には「可燃物(家屋・ 板べい・かやぶき屋根等) の近くで使用しないでください」と書かれている。

すぐさま消火しないと丸焼けに!!

まさに期待通りに網戸を溶かした和田。ここまでやると「ネタづくり」ではないかという疑念も……。

さすがに反省したのか、サッシの「キワ」は小型のバーナーを使用。

こうして「焼きスギ」風の下見板壁が完成!

 

文/中山茂大 写真/阪口 克

過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回  壁の施工、窓の取り付け
第12回  差し鴨居 
第13回  外壁

 

人力社

ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com

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