理想の土地を求めて、全国各地で季節労働
埼玉県鶴ヶ島市のごく普通の住宅環境で生まれ育った近藤さんが、今のような暮らしを思い描いたのは、20代後半に訪れたオーストラリアでのこと。
「1年ほどの旅で、最後のころはキャンプ場の手伝いをしながら、そこに2カ月くらい滞在していたんです。オーナーが自分で山を開拓してつくったキャンプ場で、好きなことを自由にやっている生き方に共感したというか、自分もそんなことをやってみたいなと思って」
帰国後に知人のつてで、半年ほど働いた富士山の山小屋での経験も今につながる。発電機を使用する山小屋が多い中で、そこは基本的に太陽光や風力で電気を賄い、水は雨水を利用。自然エネルギーをフルに活用したライフラインに、やりたいことが、またひとつ見つかったような気がした。
自給自足への思いが膨らみ始めた近藤さんが続いて訪れたのが、長野県大鹿村(おおしかむら)の「大鹿ふりだし塾」だ。山を開拓して自給生活を送るゲタさんこと大倉寛(おおくらひろし)さんの住まいに居候して、農業や建築などを手伝いながら自給自足に必要な知識や技術や心構えを学べる場である。
「ふりだし塾での経験は大きかったですね。ゲタさんの暮らしを見て自給自足のイメージがはっきり具体化しました。家でも何でもゼロからつくり出せるのがわかりましたから。ここからですね、本気で山を買って自給生活をやってやろうと思ったのは」
その後は、自給自足の基本になる農業の知識を深めることと、資金稼ぎ、そして田舎とのつながりを持つために、北海道から沖縄まで全国各地を訪れて季節労働に従事。その間に、住みたいと思える場所があれば、そこで田舎暮らしをすればいいとも考えていたが、そういう気持ちになるような土地との巡り合いはなかった。インターネットの物件サイトや競売物件もしばしばチェックし、実際に土地を見に行ったこともある。ただ、ピンとくる物件にはなかなか出合えなかった。
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