田舎での冬の生活を暖かく彩ってくれる薪ストーブ。最近は古民家や中古住宅に導入する人も増加中。そこで田舎に移住して憧れの薪ストーブ生活をスムーズに始めるために、設置や選び方のポイントなどを、薪ストーブのプロに伺いました(全3回)。1回目の本記事では後悔しない薪ストーブを選ぶために、素材による違いやタイプ別のオススメの機種についてご紹介します!
掲載:2024年11月号
古民家に薪ストーブが最新トレンド!?その魅力とは
「最近は古民家などの空き家を買って田舎へ移住し、薪ストーブ生活を始めたいという依頼が増えています。その魅力はアメリカに伝わる『薪は三度、人を暖めてくれる』ということわざが象徴的。まずは薪割りや薪運びで汗を流し、次に炎を眺めながら暖を取り、そして薪火料理を食べて身も心も暖まる」
そう話すのは、神鍋マキストーブの田沼光詞さん。炎のゆらぎによる癒やし効果に加えて、ほかの暖房器具にはない温もりがあるという。
「ファンヒーターや電気ストーブは前方だけに温風が出て、オフにした瞬間に寒くなります。本体からの輻射熱で部屋全体がじんわり暖まる薪ストーブなら、火を消したあとも包み込まれるような温もりが続くんです」
天板が熱くなる機種なら余熱で煮込み料理ができ、炉内にダッチオーブンやスキレットを置けばより幅広い調理に使える。輻射熱でじっくり均一に加熱されることで食材のうま味が引き出され、ガスコンロなどとはまた違った仕上がりに。
これらの魅力を通じて自然に人が集い、家族や友人とのコミュニケーションが深まるのは薪ストーブならでは。さらに災害によるガス・電気の遮断時に役立ち、部屋干しの洗濯物がよく乾くという利点もあるが、地球環境に優しい点も見逃せない。
「森の木を伐採して薪にして使うことで新陳代謝が促され、森が豊かになることで自然災害の減少にもつながります」
後悔しない薪ストーブの選び方のポイントは?
重視する点を絞り込み最適な機種を導き出す
薪ストーブ選びは重視するポイントを絞り込むことが大切。まずは本体の素材の違いによる特性を理解しておこう。
デザインの自由度が高く、昔ながらのスタイルのものも多いのが鋳物製。暖まる時間を要する半面、一度暖まると冷めにくい特徴を持つ。ただし外気温が急激に温度上昇した場合に弱い。
近年スタンダードになっているのが、加工がしやすく、高温にも比較的強い鋼板製。鋳物製とは対照的に暖まりやすく、冷めやすい。なかには鋼板と鋳物を組み合わせた機種もある。
そのほか、より蓄熱性が高く、高級感があるソープストーン製も。鋳物製よりもさらに暖まる時間はかかるものの、温もりが長時間にわたって保たれる。
「お客様にいつもお聞きするのが、設置場所、薪の調達法、使用頻度、好みのデザイン、調理にも使いたいか。これである程度候補が決められます」
そう話す田沼さんに、以下に求めるスタイルに応じたイチオシ機種の一例を挙げてもらった。
薪ストーブのプロが選んだおすすめ4機種(メーカー製)をご紹介!
とにかく早く部屋を暖めたい人に「ウッドボックス タロ」/ペレットマン
東北の薪ストーブ専門店が「あったらいいな」というものを自主企画でつくったのが「ウッドボックス タロ」。高温に強く早く暖められ、美しい炎を観賞できる。
側面や背面が熱くならない複層式。火の立ち上がりが早く、ガラス面はくもりにくい。ログホルダー付き。鋼板製。
- 商品名:ウッドボックス タロ
- メーカー:ペレットマン
- 価格41万8000円(本体+ログホルダー)
- サイズ:幅650×奥行き436×高さ873mm
- 重量:101kg
- 最大出力:10kW
- 最大暖房面積:255㎡
- 最大薪長:45cm
- 生産国:日本(原産国:中国)
薪代を節約しながらしっかり焚きたい人に「ネクター15CB」/ネクター
バランス型では、コンパクトながら重量感があり、ハイパワーな「ネクター15CB」。二重構造の本体は、オプションでサイドヒートシールドも。本体は鋼板製、扉は鋳物製。
- 商品名:ネクター15CB
- メーカー:ネクター
- 価格:26万9500万円
- サイズ:幅460×奥行き516×高さ725mm
- 重量:90kg
- 最大出力:13kW
- 最大暖房面積:100㎡
- 最大薪長:38cm
- 生産国:オーストラリア
取り扱いが簡単でお洒落好きな人に「TT20BAZIC R」/ターマテック
現代の住まいにもよく合うのが「TT20BAZIC R」。ヨーロッパではこのような縦型スタイルが主流になりつつあるそう。燃焼効率83%超の高性能と美しい北欧デザインを兼ね備え、レバー1つの操作性も良好。鋼板製。
- 商品名:TT20BAZIC R
- メーカー:ネクター
- 価格:価格35万2000万円
- サイズ:幅531×奥行き419×高さ956mm
- 重量:110kg
- 最大出力:7kW
- 最大暖房面積:120㎡
- 最大薪長:32cm
- 生産国:デンマーク
ストーブ料理を楽しみつくしたい人に「おくどさん」/プラメン
個性的なところでは、オーブン室を備えたクッキングストーブ「おくどさん」。暖房器具としても使えるが、こちらはセカンドストーブにオススメだという。燃焼室の天板は取り外して直火調理も可。温度計や引き出し付き。鋳物製。
- 商品名:おくどさん(OCUDO)
- メーカー:プラメン
- 価格:価格38万5000円
- サイズ:
- サイズ:幅845×奥行き594×高さ838mm
- 重量:121kg
- 最大出力:11kW
- 最大暖房面積:160㎡
- 最大薪長:45cm
- 生産国:クロアチア
教えてくれた人
神鍋薪ストーブ 代表 田沼光詞さん
備長炭系の炭づくりを行う白炭工房の三代目。山の木の伐採から手がける炭屋として薪づくりにもこだわり、薪ストーブを気軽に使ってもらえるよう薪も手ごろな価格で提供している。神鍋白炭工房株式会社では薪ストーブ専門店「神鍋マキストーブ」を立ち上げ、約10年前から京阪神や鳥取県・岡山県を中心に国内外の製品を販売・設置。
文・写真/笹木博幸 写真提供/神鍋マキストーブ
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