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最新号のご案内

田舎暮らしの本 2月号

1月4日(水)
850円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【手づくり薪ストーブ】料理も得意な「ロケットストーブ」で実現する持続可能な暮らし【材料費2万3000円】

美術や建築を通して「持続可能な暮らし」を目指す小池雅久さん・つねこさん夫妻。長野市街地に建つアトリエ兼店舗で、最初は時計型薪ストーブを改造したロケットストーブを使用。現在はどこにでもある材料でつくることを重視した2代目の自作ロケットストーブが、訪れる人を暖かく迎えている。

長野県の県庁所在地・長野市は、県北部にある人口約36万9000人の中核市。善光寺の門前町として知られ、国内外より多くの観光客が訪れる。東京から関越自動車道と上信越自動車道で約3 時間。東京駅から北陸新幹線で約1時間40分。

「美学創造舎・マゼコゼ」を運営するのが、小池さん夫妻の屋号「リキトライバル」。図書館ギャラリーの運営をはじめ、アートワークショップ、店舗や住宅のデザイン・設計・施工などを行う。市内のパン屋さんの焼き菓子も売られているので、食べながらゆっくり過ごすのもおすすめだ。
【美学創造舎・マゼコゼ】
長野県長野市長門町1076-2
https://mazekoze.wordpress.com/

どこにでもある材料を使った
燃焼効率の高いストーブ

 善光寺の門前町として知られる長野市。表参道は観光客で賑わうが、1本脇道にそれれば、隣近所で声をかけ合って住まう、昔ながらの暮らしが営まれている。ロケットストーブのある「美学創造舎・マゼコゼ」が建つのも、そんな閑静な住宅街の一角だ。

土蔵を改装した店舗。2階はギャラリーで、不定期でアートやクラフトの展示・販売を行っている。

 オーナーは、美術家・造形作家の小池雅久さん(59歳)。昔から日本式のかまどや五右衛門風呂をつくっていたが、17年ほど前にロケットストーブと出会い、どこにでもある材料で簡単につくれること、煙が少ないこと、そして少ない燃料で最大の燃焼効率を得られることに魅力を感じ、以来ロケットストーブの普及に努めている。

 東京から出身地の長野市にUターンしたのは約10年前。最初はホンマ製作所の時計型薪ストーブを入れたが、薪の消費量が多いし、住宅地なので煙も気になる。そこで小池さんは、薪ストーブの燃焼室にロケットストーブの構造を組み込んだ「時計型ストーブ改ロケットヒーター」を作成。煙の可燃物を二次燃焼させることで、ほとんど煙が出ないストーブにつくり替えた。

時計型ストーブを改造した「マゼコゼ」の初代ロケットストーブ。7年間使用した。

 現在のロケットストーブに変えたのは3年ほど前。南米で使われているロレナストーブという調理用ストーブを参考に、材料を集め、3~4日かけてすべて自作した。

 「一次燃焼室に薪を入れて着火。すると、煙が二次燃焼室へ行きます。そこでは温度が700~800℃くらいまで上がるので、酸素不足などで燃え残った煙の中の可燃物をもう一度燃やせる。それがロケットストーブの仕組みです」

 二次燃焼室の熱はダッチオーブンが埋め込まれているスペースを約200℃で経由し、煙突へと抜けていく。つまり、部屋を温めながら、二次燃焼室の上の鉄板とダッチオーブンの2カ所で調理できるというわけだ。燃料を効果的に使うことや、廃材を資源として活用すること。ロケットストーブは、そういった循環型生活を目指す環境教育にふさわしいツールであると、小池さんは話す。

薪となる木は、森林整備を手伝ったり、風倒木を片付けたりして無料で入手。「門前の住宅街で薪割りをしているのは僕くらいです(笑)」

 「何かを自作しようとすると、みんなまずホームセンターに行きますよね。だけど、土や石、捨てられたペール缶など、身近な素材を見つけ出す力がつけば、生活全体が変わってくると思うんです。ゴミのように見えても、そこに想像力を加えれば、優秀な素材になるんですよ」

手前が薪を入れる焚き口(一次燃焼室)、右奥がヒートライザー(二次燃焼室)、左奥はダッチオーブンを埋め込んだスペース。熱は焚き口からヒートライザーへ進み、ダッチオーブンを温めたあと煙突へと送られていく。色は飼い犬にちなんだビーグルカラー。

どこにでもある材料でつくれる。このヒートライザーの部分は廃材の缶を使用。土とワラも解体で出たものをベースに再利用している。

45cmの薪も入る焚き口。着火直後は温度が低いので煙が上がってきてしまう。丸いふたを付けることで煙を下へと押しやる。

ダッチオーブンを外すと、熱が送られる穴が見える。ここは約200℃と温度は低めだが、時間をかけて豆を煮るなどできる。

 妻のつねこさん(57歳)は、このストーブがあるだけで生活のリズムが変わると話す。

 「調理は時間がかかりますが、ストーブが鍋を温めている間に、じんわり暖かい部屋で本を読んだりできて、生活のリズムがゆっくりになりますよね。ストーブのペースに自分を合わせる。そんな冬の生活が、私は好きなんです」

「ロケットストーブで調理すると、野菜は甘く、チキンなどはジューシーに仕上がるんです」と、妻のつねこさん。

長野市七二会の陶芸家アダム・スミスさん作のスローベイカーでジャガイモを蒸す。ベイカーは「マゼコゼ」でも販売。

ロケットストーブができるまで

年に数台のロケットストーブを製作している小池さん。長野県小谷村(おたりむら)にある「大網農山村体験交流施設 つちのいえ」で行われた、ワークショップ形式の製作風景を紹介する。

場所を決めてダクトを組み立てる。天井へのダクトは2本あり、1本は煙突に接続。1本は上の空気をファンで床下に送り、家の中の空気が循環するようなつくりになっている。

レンガでヒートライザーを組み立てドラム缶の中に入れ、隙間をパーライトで断熱。その上は土で固める。 

ダクトを設置し、周りに石を積みながら土を盛っていく。ダクトの上の土はじんわり温かいヒートベンチになる。

石は、地元の小谷村大網で集めてきたものを使っている。

【完成】 6人がかり、丸1日かけてストーブヒーター全体に土を盛る。土が乾いたら漆喰を塗って完成だ。総製作日数はおよそ8日。「使い始めて4年。ロケットストーブの周りは、自然と人が集まる場所になりました」と、「つちのいえ」の前田浩一さん。

 

大網農山村体験交流施設
つちのいえ
長野県小谷村に建つ、栃餅工場を併設した簡易宿泊所。小谷村に移住した若者4人が、築130年を超える古民家を再生して運営している。ワークショップやイベントなどを随時開催。
長野県北安曇郡小谷村大字北小谷9326
☎025-561-1023
http://kurashite.com

 

文/はっさく堂 写真/村松弘敏、前田聡子
※田舎暮らしの本 2018年11月号より転載、加筆しています。

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