田舎での冬の生活を暖かく彩ってくれる薪ストーブ。最近は古民家や中古住宅に導入する人も増加中。そこで田舎に移住して憧れの薪ストーブ生活をスムーズに始めるために、設置や選び方のポイントなどを、薪ストーブ専門店・神鍋マキストーブ代表の田沼さんに伺いました(全3回)。2回目の本記事では、設置の仕方や使い方を誤ると火災などのリスクもある薪ストーブを、古民家や中古住宅を購入して取り付ける場合に最低限知っておきたい基本を紹介します!
※1回目はコチラ→薪ストーブで後悔しないために!プロが選んだおすすめ機種4選【はじめる!薪ストーブ生活①】
掲載:2024年11月号
後悔しない薪ストーブ設置のポイント①暖房効果や施工性を考え設置場所を決める
本体だけでなく周囲も高温になる薪ストーブは、事故防止のため関係法令や地域の条例、メーカーの設置基準を守って設計・施工する必要がある。そのうえで田沼さんはこう話す。
「理想を言うなら家の中心部に設置するのが一番。ただ、例えば2階建てで屋根裏小屋があるような家だと、まっすぐ煙突を上げるには工事費がかさみ、煙突を横引きするにも壁まで距離があるので現実的ではありません。スペースの確保や施工性という面でも、壁側に寄せて設置するのが一般的でしょう」
昔ながらの間取りは部屋が細分化されたものも多いが、建具を外して大空間にしすぎると暖房能力を超え、薪を無駄に消費してしまう可能性がある。欲張らず、普段は家族の過ごす時間が多い居間などを暖め、隣室は必要に応じて建具を開放し、サーキュレーターなどで暖かな空気を行き渡らせるといい。
より重要なのが、燃焼システムの要をなす煙突選び。たとえ予算がなくても煙突代はケチらないほうが賢明だろう。
後悔しない薪ストーブ設置のポイント②快適・安全の要になる煙突代はケチらない
「シングル煙突よりも二重煙突、それも中空タイプではなく断熱材入りのものが圧倒的にいい。排煙はドラフトと呼ばれる、暖められた空気が自然に上昇する現象によって行われます。ところがシングル煙突だと、排煙が屋外に出た瞬間に急激に冷やされて結露し、煙に含まれるススやタールといった不純物が煙突内部に付着する原因に」
その結果、スムーズに排煙できなくなり、燃焼効率が低下。掃除の手間が増え、汚れの蓄積を放置していると発火による煙道火災を引き起こしかねない。
「すべて断熱二重煙突にすると高価になるので、当社では室内部分をシングル煙突にしてその輻射熱も利用し、屋外への貫通部と屋外部分は断熱二重煙突にすることをすすめています」
煙突は長さ4m以上が望ましく、横引きにするとドラフトが弱くなるため、できるだけ上向きになるよう設置。横引きする場合も1・5m程度までに抑え、縦引き部分がその3倍以上になるようにしたい。
炉台や炉壁は可燃物を熱から保護するためのもの。インテリアを考えて素材やデザインを選ぶといいが、炉台には灰などが落ちることも多いので、表面が滑らかな素材のほうがメンテナンスしやすい。古い建物で床にたわみなどがある場合、床下の補強が必要になる。
また、古民家などに薪ストーブを設置する場合、田沼さんはこうアドバイスする。
「断熱性や気密性を上げる改修工事は、絶対にしたほうがいいでしょう。薪の使用量が圧倒的に抑えられ、場合によっては半分以下になることも」
薪が安価で潤沢にある環境ならどんどん焚けばいいものの、それでも夏を含めた快適性はまったく違うはず。建物の趣との兼ね合いも考えながら、壁、天井、床の断熱工事、ペアガラスの採用などを検討しよう。
快適・安全に使うため1~2年に1回はメンテナンスを
薪ストーブの性能を保ちながら安全に長く使うためには、定期的なメンテナンスが欠かせない。1~2年に1回、部品の劣化などの点検を行い、煙突の清掃を行おう。神鍋マキストーブでは購入者にノウハウを教えてくれるほか、基本料金3万円(実費別途)で点検・清掃に対応している。
教えてくれた人
神鍋薪ストーブ 代表 田沼光詞さん
備長炭系の炭づくりを行う白炭工房の三代目。山の木の伐採から手がける炭屋として薪づくりにもこだわり、薪ストーブを気軽に使ってもらえるよう薪も手ごろな価格で提供している。神鍋白炭工房株式会社では薪ストーブ専門店「神鍋マキストーブ」を立ち上げ、約10年前から京阪神や鳥取県・岡山県を中心に国内外の製品を販売・設置。
文・写真/笹木博幸 写真提供/神鍋マキストーブ
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