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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

【薪の確保】 1日20kg!?「薪ストーブ」を使うなら知っておきたい里山の手入れと薪の生産

薪ストーブを日常的に使うには、薪はいったいどのくらい必要だろうか。自分で調達することもできるのか?  里山の保全活動をしながら薪も販売している「薪まきネット」の小出仁志さんに薪のあれこれを教えてもらった。

【教えてくれた人】
小出 仁志さん
(財)せたがやトラスト協会(現世田谷トラストまちづくり)設立時に職員となり、環境保全を啓発するイベントの企画・運営、自然環境調査やボランティア育成などを担当。退職後は都内のボランティア講座の講師のほか、町田市内の保育園などで自然体験指導を行っている。

薪の使用量は1日20〜30kgが目安

 クヌギやコナラなど広葉樹が自生する里山は、かつては薪炭林(しんたんりん)として暮らしに密着し、人が手を入れることで守られてきた。萌芽更新していくサイクルに合わせて木を伐採し、薪や炭の原木として使い、落ち葉は堆肥となって土の肥やしになっていく。自然が再生していく力に逆らわずに山を活かしてきたが、薪炭林としての役割を終えた里山は荒廃の一途をたどっている。

 そんな里山に再び手を入れ、伐採した木を薪にして使おうと活動しているのが、NPO法人「ナチュラルリングトラスト」が運営している「薪まきネット」だ。

 主な活動拠点は埼玉県比企郡吉見町の里山。ボランティアとともに山の保全活動をしながら生産した薪は「薪バンク」で保管し、販売もしている。保全活動に参加すると、ナラ材の薪を20kgを1500円(通常2000円で販売)で購入できるほか、販売に適さない薪を無料で受け取ることができるという仕組みだ。

経済価値のなくなった里山は、全国的にメガソーラーパネル事業の介入が進み、山全体が伐採され、景観悪化や大雨で鉄砲水が発生する懸念などの問題が発生している。

 「都会でも薪ストーブを使う人が増えているので、薪の生産が間に合わないくらいですね」 と話すのはNPO法人副代表の小出仁志さん。

 都会でも人気が高まっている薪ストーブだが、田舎暮らしで薪ストーブを使う場合、1シーズンでどのくらいの薪が必要になるのだろう。小出さんの試算によると、1日8時間ストーブを焚いたとして、薪の使用量は約20kg、月換算で600kgほど。

 「ただ、これはあくまで目安で、広葉樹の薪を使った場合です。寒冷地では1日30kg以上の薪は焚きますから。また、針葉樹は広葉樹に比べると火持ちがよくないので、広葉樹の1.5倍ほどの薪が必要になります」

 ストーブの性能や大きさ、部屋の広さなどによっても薪の使用量は異なり、鋳物製のストーブでは針葉樹の薪は使えない。火持ちの悪い針葉樹は一方で火付きはよく、一気に燃焼して高温になるため、鋳物製のストーブでは割れてしまうこともある。針葉樹の薪も使いたいなら鋼板製の薪ストーブを選ぶといい。

「薪まきネット」ではチェンソーを使わず、手ノコで木を伐採する。時間をかけて伐ることで木を大切に使うことも伝えている。

定期的に親子を対象にした里山体験イベントを開催し、植樹や落葉かき、伐採体験のほか、焼き芋や、ジップラインなど、いろいろな森遊びを行っている。

手入れをする前の吉見町の里山。ササがうっそうと茂り、ゴミも不法投棄されていた。

「薪まきネット」では含水率15%まで乾燥させた薪を販売している。

ササなどの下草刈りやゴミの処理から保全活動が始まった。

伐採した木は薪割り機を使って薪に加工していく。

薪の調達は技術を身につけてから

 月600kgの薪を確保する場合、立木では何本の木が必要になるのかが、また気になるところ。再び小出さんに試算してもらうと、1シーズン4カ月として合計2.4トン。立木に換算すると、胸高直径30cm、樹高15mぐらいの木が7本ほど必要になる(1立方メートルの木材から約500kgの薪がとれる計算)。そのくらいなら自分でも伐れるかも!と安易に思ってしまうが、「それは危険です」と小出さんに釘を刺されてしまった。

 「広葉樹は枝が不規則に伸びているので、重心を見分けるのが難しく、素人目には判断できません。受け口をつくって伐採しても予想外の向きに木が倒れてしまって怪我をすることもある。山仕事は危険が伴うということを忘れないでください」

 山林付きの田舎物件を手に入れたら、薪も自分で調達したくなるところだが、勇み足は禁物。まずは山仕事に慣れた地元の人に教えを乞うなどして、技術をしっかりと身につけるようにしよう。

下草を刈り、木を伐採したことで林内に光が入り、フデリンドウやヤマユリなどの花が咲くようになった。

 

薪の生産者を募集中!

生産した薪を「薪バンク」で保管し、販売している「薪まきネット」では、薪の生産者も募集している。薪の販売価格(広葉樹の薪20㎏2000円、針葉樹の薪20㎏1400円)のうち7割を生産者にバック。

詳しくはNPO法人「ナチュラルリングトラスト」へ。

この段ボール箱1箱分が薪20㎏。

 小出さんが自宅の1階を改装し、経営している「薪まきカフェ」では、ランチやスイーツが楽しめる。英国ハンターストーブ社の「クリーンバーン・スカゲン」(鋼板製、マルチ燃料)を設置。

【薪まきカフェ】
東京都世田谷区千歳台6-8-9
☎03-5969-8544
https://makimakicafe.com/

 

文/佐々木泉 写真提供/薪まきネット
※田舎暮らしの本 2018年11月号より転載、加筆しています。

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