掲載:2021年9月号
緑豊かな環境を求めて都会からの移住を決めた夫妻は、倉吉市南西部に広がる清流の里で理想的な古民家を発見。現在はのどかな山手での暮らしを満喫し、店舗を借りて夫婦でカフェを経営している。将来は自宅の納屋を改修し、コーヒー豆の焙煎所を開くことが夢だという。
負担の多い都会を離れ、古湯(ことう)で名高い山里へ
西日本有数のワサビの産地として名高い、大山(だいせん)東麓の倉吉市関金町(せきがねちょう)。その中心部から山手へ入った清流の里で暮らしているのが、2016年に兵庫県神戸市から移住した本田知典(ほんだとものり)さん(43歳)・淳子(あつこ)さん(43歳)夫妻だ。移住前、知典さんはコーヒー製造会社や介護施設、淳子さんはパン屋やレストランで働いていたが、自分たちに合った環境を求めて移住を決意した。
「都会は家賃など何かとお金がかかり、そのためにあくせく働くことに負担を感じていましたし、子どもも都会生活がつらそうで。それなら気力と体力があるうちに行動しようと思って」
そう振り返るのは淳子さん。移住相談会で先輩移住者たちが生き生きと子育てしていることを知り、興味を抱いたのが倉吉市だった。有力候補地として住まいを探していたところ、理想的な物件が見つかった。
「地域の事情がわからないまま購入する勇気も予算もなかったので、賃貸で検討していたんです。ここは希望どおり、小さな集落にある古民家でした」
と、淳子さん。当初のんびり過ごすつもりだったが、町内の「薬膳食堂めぐり」のスタッフが辞めることになり、調理の経験を買われて働くことに。一方の知典さんは市の臨時職員などをしながら、自宅の納屋を改修し、コーヒー豆の焙煎所&カフェの開業を目指していた。
そんなあるとき、「薬膳食堂めぐり」を閉めるというオーナーから夫婦で店を活用してほしいと話があり、居抜きで借りて昨年11月「カカラ」としてオープン。淳子さん手づくりの天然酵母パンと、知典さんの自家焙煎コーヒーを中心に、地元の旬の野菜を使った料理やスイーツを提供し、好評を得ている。
「思いがけず店を継ぐことになり、納屋の改修はまだ道半ば」
と苦笑いする知典さん。ときには家族で地元の関金温泉へ出かけてリフレッシュしながら、まずは「カカラ」の経営を軌道に乗せることに全力を注ぐ。
【物件データ】
●間取り…9K
●築年数…約100年
●家賃…非公表
●敷金・礼金・仲介手数料…なし
本田さんに聞く!賃貸物件Q&A
Q.入居後に判明した家の不具合は誰がどう解決?
A.地震後に発生した雨漏りは自分たちで応急処置をしました。家賃が安く、敷金・礼金もなかったので、ある程度の負担は仕方ないかなと思います。
Q.家の改修やペットの飼育は問題なかった?
A.改修も犬を外で飼うことも快く許可してくれました。ただ、近所の知人の貸家はそれこそ釘1本打つのにも許可がいるようです。
倉吉市Information
果汁があふれる初秋の味覚
鳥取県を代表する特産品といえば「二十世紀梨」だが、清冽な水に恵まれた倉吉市は一大産地の1つ。旬は8月下旬から9月中旬にかけてで、梨狩りが楽しめる観光農園もにぎわう。みずみずしくシャキシャキとした食感と、さわやかな酸味を伴う上品な甘さが魅力だ。
問い合わせ先:商工観光課 ☎︎0858-24-5478 https://www.city.kurayoshi.lg.jp/furusato/
倉吉市移住支援情報
賃貸でも売買でもサポート
空き家バンク物件の家賃補助(5万円、1回限り)のほか、住宅購入費や改修費の補助を実施。移住希望者の目的に合わせたオーダーメイド移住ガイドツアー(オンライン可)や、お試し住宅といった支援制度も整えている。
問い合わせ先:地域づくり支援課 ☎0858-22-8159 http://www.city.kurayoshi.lg.jp/p/iju
文・写真/笹木博幸
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