掲載:2021年9月号
緑豊かな環境を求めて都会からの移住を決めた夫妻は、倉吉市南西部に広がる清流の里で理想的な古民家を発見。現在はのどかな山手での暮らしを満喫し、店舗を借りて夫婦でカフェを経営している。将来は自宅の納屋を改修し、コーヒー豆の焙煎所を開くことが夢だという。

生活環境のよい場所を求め、子どもたち2人を連れて移住した本田さん夫妻。2年半前には保護犬のチーコも家族に加わった。

カンパーニュランチ1380円。メイン料理に旬野菜のおかず、季節のスープ、自家製パン、コーヒーなどが付く。

現在は本田さん夫妻と以前の店からのパートスタッフで切り盛りする 「cacala(カカラ)」。https://cacala.jp/

倉吉市は鳥取県中部にある人口約5万人のまち。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された白壁土蔵群や、天女伝説のある打吹山(うつぶきやま)など、歴史と自然の調和が美しい。大阪から倉吉駅へ特急で約2時間50分。
負担の多い都会を離れ、古湯(ことう)で名高い山里へ
西日本有数のワサビの産地として名高い、大山(だいせん)東麓の倉吉市関金町(せきがねちょう)。その中心部から山手へ入った清流の里で暮らしているのが、2016年に兵庫県神戸市から移住した本田知典(ほんだとものり)さん(43歳)・淳子(あつこ)さん(43歳)夫妻だ。移住前、知典さんはコーヒー製造会社や介護施設、淳子さんはパン屋やレストランで働いていたが、自分たちに合った環境を求めて移住を決意した。
「都会は家賃など何かとお金がかかり、そのためにあくせく働くことに負担を感じていましたし、子どもも都会生活がつらそうで。それなら気力と体力があるうちに行動しようと思って」
そう振り返るのは淳子さん。移住相談会で先輩移住者たちが生き生きと子育てしていることを知り、興味を抱いたのが倉吉市だった。有力候補地として住まいを探していたところ、理想的な物件が見つかった。
「地域の事情がわからないまま購入する勇気も予算もなかったので、賃貸で検討していたんです。ここは希望どおり、小さな集落にある古民家でした」
と、淳子さん。当初のんびり過ごすつもりだったが、町内の「薬膳食堂めぐり」のスタッフが辞めることになり、調理の経験を買われて働くことに。一方の知典さんは市の臨時職員などをしながら、自宅の納屋を改修し、コーヒー豆の焙煎所&カフェの開業を目指していた。
そんなあるとき、「薬膳食堂めぐり」を閉めるというオーナーから夫婦で店を活用してほしいと話があり、居抜きで借りて昨年11月「カカラ」としてオープン。淳子さん手づくりの天然酵母パンと、知典さんの自家焙煎コーヒーを中心に、地元の旬の野菜を使った料理やスイーツを提供し、好評を得ている。
「思いがけず店を継ぐことになり、納屋の改修はまだ道半ば」
と苦笑いする知典さん。ときには家族で地元の関金温泉へ出かけてリフレッシュしながら、まずは「カカラ」の経営を軌道に乗せることに全力を注ぐ。

落ち着いた雰囲気の店内。内装は、一部の小物を除いて以前のまま引き継いだ。

森に面した店の裏側には愛犬を連れてくつろげる屋根付きのテラス席がある。
【物件データ】
●間取り…9K
●築年数…約100年
●家賃…非公表
●敷金・礼金・仲介手数料…なし

将来は自宅の納屋を知典さんの焙煎所&カフェとして活用する計画だ。

納屋をDIY中!電気工事士の友人に力を借りて改修中の納屋。今は仕事が忙しくて中断している。

キッチンは改修なし。片隅に放置されていた作業台をアイランドカウンターとして活用。

【Before 】現在リビングとして使う部屋にはカーペットが敷かれ、床の下地は劣化していた。

【After】改修業者に杉フローリングへの張り替えを依頼し、すっきりとした空間に。

【Before】 玄関は土間にシートが敷かれ、ホール内の床も傷みが顕著だった。

【After】知典さんが土間を打ち直し、床はDIYで杉フローリングに張り替えた。

自宅の大家さんの畑を借りて小さな菜園に挑戦。「いずれはお店で使う野菜もつくれたら」と淳子さん。

昔ながらの里山を整備した「木(こ)の実の里」は、淳子さんと愛犬チーコのお気に入り。「“ごちそうの森”や芝生広場などがあり、自分の庭のようにのんびり過ごせます」。
本田さんに聞く!賃貸物件Q&A
Q.入居後に判明した家の不具合は誰がどう解決?
A.地震後に発生した雨漏りは自分たちで応急処置をしました。家賃が安く、敷金・礼金もなかったので、ある程度の負担は仕方ないかなと思います。
Q.家の改修やペットの飼育は問題なかった?
A.改修も犬を外で飼うことも快く許可してくれました。ただ、近所の知人の貸家はそれこそ釘1本打つのにも許可がいるようです。
倉吉市Information
果汁があふれる初秋の味覚
鳥取県を代表する特産品といえば「二十世紀梨」だが、清冽な水に恵まれた倉吉市は一大産地の1つ。旬は8月下旬から9月中旬にかけてで、梨狩りが楽しめる観光農園もにぎわう。みずみずしくシャキシャキとした食感と、さわやかな酸味を伴う上品な甘さが魅力だ。
問い合わせ先:商工観光課 ☎︎0858-24-5478 https://www.city.kurayoshi.lg.jp/furusato/

編集部注目のふるさと納税!二十世紀梨3kg(JA鳥取中央)寄付額1万円以上。9月ごろの季節限定品。
倉吉市移住支援情報
賃貸でも売買でもサポート
空き家バンク物件の家賃補助(5万円、1回限り)のほか、住宅購入費や改修費の補助を実施。移住希望者の目的に合わせたオーダーメイド移住ガイドツアー(オンライン可)や、お試し住宅といった支援制度も整えている。
問い合わせ先:地域づくり支援課 ☎0858-22-8159 http://www.city.kurayoshi.lg.jp/p/iju

「“くらしよし”倉吉市で暮らしてみませんか?」と、地域づくり支援課の中本智浩さん。
文・写真/笹木博幸
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