掲載:2024年4月・5月合併号
深まる春の歩みに合わせ
菜園の野菜は春から夏へと動き出す
暖かさが増して、菜園が動き出す春。その歩みは一直線ではなく、寒暖を繰り返し、行きつ戻りつしながら進みます。種蒔きや苗の定植も急がず、季節の歩みに合わせ、準備から一歩ずつ進めましょう。やがて収穫もはじまれば、いよいよ本格的な野良仕事シーズンの到来です。
4月 春野菜本格スタート
根菜・葉菜類の種蒔き、定植の時期。
○葉菜類の種蒔き&定植
サクラの開花でいよいよ春本番。4月には菜園が本格的にスタートします。コカブやチンゲンサイなどの根菜・葉菜類は3月からはじまり4月にも引き続き種蒔きできます。発芽後に葉が混み合ってきたら間引いて大きく育てましょう。
○夏野菜の畝の準備
夏野菜の畝を準備するのは、定植1カ月前の4月です。はじめての畑ではP68〜69のように土に施しをしたうえで畝をたてておきます。キュウリ、ナス、ピーマン、カボチャなどの定植場所には「ネギクラツキ」を施し、微生物の活性を高め土を豊かにしておきましょう。
ネギクラツキは定植する場所に穴を掘り、一つかみの完熟堆肥を入れ、土を盛るように埋め戻すと同時にネギを植える。
5月 夏野菜シーズンイン
夏野菜の苗を定植した畝と、葉菜類や越冬したソラマメなどが収穫時期を迎えた畝が並ぶ。
○夏野菜の定植は遅霜を避けて
夏の果菜類は朝の気温が4~5度に下がって遅霜に当たると枯れてしまいます。定植は急がず、霜の心配がなくなる最低気温15度を目安に、まずはトマト、キュウリ、西洋カボチャなど比較的寒さに強い野菜から。ナス、ピーマン、スイカなどは特に寒さに弱く、さらに充分、地温が上がってからにします。
○春野菜の収穫は遅れずに
春先に蒔いた葉菜類の収穫もはじまります。カブやダイコン、ニンジンなどの根菜類は穫り遅れるとスが入るので、市販よりも少し小さいくらいで穫りましょう。割れてしまっても、おろして食べるとおいしいです。
ミニトマト
2本仕立てで暑さに強く収量2倍!
夏の果菜で一番人気のミニトマト。1株から2本の枝を伸ばす2本仕立てにすると、葉も根も増えて暑さに強くなり、収量も2倍に。おいしい実を夏から秋まで楽しみましょう。
ミニトマトは育てやすく多くの品種がある。写真は実が黄色い「イエローレモン」。
自然菜園でプチ自給のための
ミニトマト 3つのポイント
小面積の家庭菜園で、ミニトマトを家族で充分に楽しめるだけ長期間収穫するには3つのポイントがあります。
①1株から2本に仕立てる
ミニトマトは主枝と、最初の花房の下から出る太いわき芽の2本を伸ばす2本仕立てにします。主枝1本だけで育てるよりも葉茎が増えて光合成が活発になり、根が発達して旺盛に育ち、暑さにも強くなります。株が長持ちし、1株で2倍の実を付けます。枝を支柱にしっかり誘引するのもコツです。
②わき芽かきを続ける
トマトは生長とともに次々にわき芽を出します。主枝と2本仕立てで伸ばした枝以外のわき芽はすべて除きましょう。
わき芽をそのまま伸ばすと養分が分散し、育てている2本の枝の実付きが悪くなります。また、わき芽が伸びて混み合うと葉の受光率が落ちて光合成が弱まるうえ、風通しも悪くなり病気につながります。
③赤い実は残さず全部穫る
実を付けたままにすると養分が実に使われ、樹が弱ります。赤くなった実は残さずに次々穫れば次の実がなり、樹も長持ち。収穫の効果は追肥以上です。
わき芽が伸びて混み合うとタバコガの幼虫による実や茎の食害も増える。
畑の準備
水はけのよい畝を選ぶ
○多湿を嫌うため降雨後に水がたまる畑では20cmほどの高畝に。○養分が多過ぎると葉が茂り実が付かない樹ぼけになるので注意。○はじめて野菜を育てる畝では定植1カ月前に、1㎡当たり●完熟堆肥1~2L●もみ殻燻炭1L●バットグアノ100gを施して耕しておく。
もみ殻燻炭と完熟堆肥、バットグアノを畝の上に撒き、レーキを使って表面の土と混ぜておく。
定植
遅霜の季節が過ぎてから
トマトは霜に弱いため、遅霜の季節を過ぎてから畑に定植します。最低気温15℃、フジの花の開花や大麦の穂揃いが目安です。
苗の選び方
フレッシュで元気な苗を
○本葉5~6枚の若苗がベスト。○できれば双葉が付いたものを。○節間が短くがっちりした姿の苗を選ぶ。○定植直前に購入するが、しばらく置く場合は1回り大きいポットに培養土を足して移植する。
定植の手順
①バケツに3cmほどストチュウ水※1を入れ、定植の3時間ほど前からポットの底を浸して、苗にたっぷり水を吸わせておきます。
※1 雨水に似た野菜の栄養ドリンク。酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL )3杯の原液を混ぜる。
②根鉢の上面が地面より1cmほど高くなるくらいに。深植えを避けます。コンパニオンプランツのネギは1~2本、ニラなら5本ほど、根鉢に沿わせて同時に植えてください。
③鎮圧して周囲の土に密着させます。
ティピー型の4本支柱では、2本の支柱の真ん中より多少ずらして植え付ける。写真は1株だが畝の左右に1株ずつ、計2株植えられる。
支柱の交点は麻ひもなどで動かないようにしっかりと結束する。
お世話
最初の花が咲いたら2本に仕立ててわき芽かき
①定植後しばらくは、わき芽が伸びても除かずにおき、芽や葉の生長に比例して伸びる根の発達を促します。
②最初の花が咲いたタイミングでわき芽かきをスタート。花の下の太い枝を残して伸ばし、支柱に誘引して2本仕立てにします。そのほかのわき芽はすべて除いてください。
わき芽はコレ!
葉の付け根茎との間から伸びる
わき芽は、葉の付け根、茎との間から伸びてきます。最初は葉や花房、主枝や残した枝の先と間違えやすいので、よく観察してください。
わき芽かきは週イチペースで
わき芽は下の葉から順に、すべての葉の付け根から伸びます。花が咲いたらその都度、下の葉3枚の付け根のわき芽を除きましょう。小さいものは手でかき取り、大きいわき芽はハサミで、いずれも付け根から除きます。また、その後、下から出てくるわき芽もあるので、週イチ菜園なら毎週わき芽を探し、長さ15cm以上まで伸ばさないように。収穫とともに秋まで気を抜かずに続けてください。
草マルチで泥はねと乾燥を防ぐ
①定植後は草に負けないよう、株の周囲の草が伸びたら地際から刈り、その場に敷いて草マルチにします。
②梅雨の多湿や真夏の高温乾燥を乗り切るためには、この時期、通路などの草も刈ってトマトの株元に敷き重ね、泥はねや乾燥、地温の上昇を防ぎましょう。
収穫
3分の2が赤くなった実はすべて収穫
3分の2ほどが赤くなった実はすべて収穫します。そのまま置いて完熟を待つと、樹が疲れてしまうため、残さず穫ってください。トマトの実は収穫後も追熟して色と甘味を増します。
水やり
収穫期に1週間雨がなければ
Caストチュウ水※2
トマトは乾燥に強いですが、収穫期に1週間以上雨がなければ、実を収穫した後にCaストチュウ水で水やりします。収穫前に水やりすると味を落とし、実割れを起こす原因になるので注意を。水やりは夕方、日が傾いてから、葉の上から夕立のようにたっぷりとかけます。
実を付けた後は2~3週に1度米ぬかを一握り
①収穫開始後は2~3週間に1度のペースで株元や通路の草を刈り敷いて草マルチします。
②その上から米ぬかを一握り補うと、草マルチの発酵が促され、甘い実がよく付きます。株を囲むようにぐるりと撒き、軽く叩いてなじませましょう。
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜 ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』、新装版『無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜』(すべて宝島社)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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