掲載:2021年12月号
日本海に面した丹後半島の大半を占め、夕日スポットで有名な砂浜、豊かな里山、40カ所もの温泉など、多様な自然が彩る京都府京丹後市(きょうたんごし)。約100種のオーガニック野菜を栽培する農園を営み、農家カフェ「キコリ谷テラス」をオープンした夫妻を訪ねた。
カフェのコンセプトは地元密着のGO Local!!
神奈川県葉山町で音楽関連の仕事をしていた大場亮太さんと稲鍵佐代子さん夫妻は、東日本大震災をきっかけに、「直接的に人の役に立てる仕事がしたい」「農業がしたい」と、2014年に京都府京丹後市へ。稲鍵さんの祖父の出身地で、きれいな海もあることが決め手だった。
山梨県の農業大学校で有機農業を学んだ大場さんは、京丹後市の有機農家で研修を受け、「SORA農園」を開業。初めの3年は自宅で出荷作業をしていたが、手狭になったため場所を探していた。借りることになった空き物件には、ほとんど手を加えずに店が始められるスペースがあった。
移住当初、カフェはしないと決めていたという稲鍵さん。
「自由に動きたいので、ずっとそこにいなければいけないカフェをする予定はありませんでした。でも農園では小麦をはじめ、ビーツやケールなど変わった野菜もつくっていて。その食べ方を知ってもらいたいし、農園でつくったものを使ったお菓子を食べてもらいたい。そこで直売所という位置付けで、2017年にキコリ谷テラスをオープンしました」
料理好きの稲鍵さんは、以前から野菜をおいしく食べるための勉強もしていたという。開業の際は、京都府の「京都ちーびず(地域力ビジネス)」の補助金を活用した。
「都会だと家賃が大変。田舎は家賃が安い分、チャレンジできますよね」
有機野菜の販売や、手づくりのお菓子以外にも、カフェから1時間以内の場所にある丹後のこだわりスイーツや加工品も取り揃えている。カフェのコンセプトは地元密着の「Go Local!!」。丹後の魅力をプロデュースしている。内装にも近くの海岸で拾った流木を使い、地元の廃校の黒板や机を再利用した。外にはゆったりくつろげるテラス席を置き、近くの山から木を移植して庭をつくった。毎週買いに来る地元の人も増えているという。
「地元のことを知ってもらい、地元の人に楽しんでもらいたい。観光客に来てもらうためのお店より、地元の人が楽しんでいる店に府外の人も来たいだろうなと思うので」と稲鍵さん。
約0.1haの農地を借りて始めたSORA農園は、計1.7haにまで拡大。約100種のオーガニック野菜を栽培する。今後は、カフェの隣にハーブガーデンをつくり、ビニールハウスも建てる予定だ。
「近くの畑でハーブを摘んで帰ったり、野菜の苗を買ったりできるよう、農家の体験とつなげていきたいと考えています」
農業を軸に、人と人がつながる場所づくりがますます広がっていく。
オーナー稲鍵さんから田舎カフェ開業へのアドバイス!
「都会では得られない時間と空間を!」
ブレないコンセプトがあると強みになります。地元の人も行きたくなるテラス席や自家農園の食材でつくったメニューなど、ここでしか手に入らない空間を演出し、田舎ならではの時間が過ごせるといいですね。店内に置くものや、カフェで提供するコーヒーカップにも地域のこだわりを。地元でつくられた薪ストーブも使っています。
キコリ谷テラス
☎0772-66-3210
住所/京都府京丹後市弥栄町船木407
営業時間/11:00~16:00(土日は10:00〜17:00)
定休日/ 月・木曜
Instagram/@sorafarm
京丹後市移住支援情報
子育て世帯向けの整備支援や空き家改修などの支援が充実
子育て世帯の医療費が0歳から18歳まで、1医療機関につき月200円となる子育て支援医療費助成や幼児教育・保育の無償化制度の拡充、学校・保育所・こども園の完全給食化、おむつ用ごみ袋の支給など子育て世帯に優しい生活支援が充実。最大230万円が補助される「移住促進住宅整備事業」や、最大10万円補助の「移住奨励金」もある。
政策企画課 ☎︎0772-69-0120
https://www.city.kyotango.lg.jp/ijushien/
文/田中泰子 写真/谷口 哲
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