外壁工事が終わった和田邸だが、実は内装工事があまり進んでいない。なぜなら「テキトー施主」和田が、自分の好きな作業を優先してしまうからである。今回も地味な作業が続く……。
掲載:2018年8月号
ゴミのような材を使うから和田はテキトーなのか!?
和田「というわけで今日も地味な作業なんだけど、よろしく!」
基礎コンクリート打ち、材木の刻み、屋根材張り、壁塗りなどの単調な作業は、人海戦術が手っ取り早い。今回も地元の助っ人さんを呼ぶことにした。
とはいえ内装工事は多岐にわたる。いまだ石膏ボードすら張っていない部分もあるし、下地調整が終わっていない部分もある。天井板も張り終わっていない。一方で土壁まで終わっていて漆喰を塗るだけの部分もある。
さて、どこから始めるのか……、と思っていたら、ここで恒例のサプライズである。
和田「じつはさ! 床のもみがらを直したいんだよね!」
一同「はあ?」
和田「例の防虫シートがたるんじゃってさ! もみがらが垂れてきているから、やり直したい!」
だからあれほど言ったのに……。2017年7月号の記事でもおわかりの通り、みんなで口を酸っぱくしていさめたのに、和田はまったく聞き入れなかったのであった。
中山「要するにコイツは、なにも考えてないんだよな。思いつきだけで作業するから、あとで整合性がとれなくなって、やり直しするわけだよ」
阪口「だけど失敗しても、痛くもかゆくもないんだよね。どうせ拾ってきたゴミだから」
中山「そうか。どうせゴミだから思いつきで作業するのかな。てことはゴミが先か、思いつきが先か……」
これを演えん繹えき法的に解釈を加えると、次のようになる。
中山「やはりコイツがテキトーなのはゴミのせいなんだよ」
和田「どうでもいいから! 作業して!」
見えるところは相変わらず細かい
仕方がないので作業に入ろう。
とりあえず壁の下地をつくってしまおうということで、石膏ボードを張っていくことにした。
ぬいぐるみとか竹木舞とか、いろいろ言っていたわりには、フツーに石膏ボードに落ち着いた壁の下地だが、毎度のことながら、これが面倒な作業である。例の丸太のデコボコのせいだ。
中山「まったく……。角材なら一直線に切るだけですむものを」
ブツブツ言いながら作業していたら、和田がヒミツ兵器を取り出してきた。
和田「スクライバー。コンパスに水平器が付いた道具で、ログハウスの建築で丸太の表面形状を写し取るときに使うもの。これで丸太の曲面を、このように石膏ボードに写し取れば簡単!」
なるほど。これで大まかなラインが写し取れるというわけだ。これはログハウス以外の建築現場でも活用できそうだ。
石膏ボード張りが終わったら下地調整だ。石膏ボードのつなぎ目に下地テープを張ってパテで埋めていく。
中山「ウチはパテまでは塗らなかったけどなあ」
水野「下地とはいえ、仕上げたときにデコボコしていると見栄えがよくないからじゃない。見えるところだけは、やたらていねいなんだよね。和田さんって」
20㎝の1820㎜! 単位を合わせない和田
その間に、和田は最も面倒かつ困難な天井板張りである。
やったことのある人はおわかりだろうが、脚立に乗って長時間上を向いての作業は、かなり苦痛である。しかも天井板の寸法は現場合わせなので、端っこを収めるのに、いちいち脚立を下りて板を切り、また上ってはめて、合わなくてまた下りて……を繰り返す。
とにかくやたら疲れるのだ。だから大工仕事はアシスタントがいてくれると大いに助かるのである。
阪口「仕方ない。手伝ってやるよ。カメラ持ってないカメラマンってどうなのよ。ブツブツ……」
和田「じゃあね! 20(㎝)の1820(㎜)でお願い!」
阪口「はいはい。20(㎜)の1820(㎜)ね」
そして阪口がその通りに切って持っていくと……。
和田「なにこれ! 全然違うじゃん!」
阪口「えー? 言われた通りに切ったんだけど」
和田「全然細すぎる!」
水野「……もしかして、20㎜じゃなくて、20㎝なんじゃないの?」
和田「そう!」
阪口「合わせろよ、単位を!」
和田「わかってよ!」
一同「わかんねーよ!」
同一のセリフ内にもかかわらず単位が違うとは……。おそるべしテキトー施主。
齟齬満載の壁の施工は、あと少しだけ続く……。
今回の作業が地味なだけに「ど派手な焼き杉のつくり方」
和田「以前、北側の外壁を焼き杉でつくったけどさ、そのときは草焼きバーナーを使ったでしょ。でも、本来は焚き火の上に野地板を煙突状に組んで燃やすんだよね。それをインターネットで見てさ、ちょっとやってみようと思って」
その方法とは以下の通り。
という具合である。実際にやってみた。
ブボボボボボ!
筒先からものすごい炎が! まるで産油国の煙突みたいである。しかし不思議なことに、ヒモを解いて板をバラすと、一瞬で鎮火してしまうのだ。
こうしてできあがった焼き杉。
和田「バーナーより、ある程度中までしっかり炭化して防腐効果も高そうじゃない。昔の人の知恵はすごいね。灯油代もかからないし」
中山「じつはウチの風呂小屋をリフォームしたんだけど、内壁に焼き杉を使いましてね。こんな感じに仕上がりました」(下の写真)
一同「おお! ゲキレツに変わったねえ!」
中山「この焼き杉、例の『草焼きバーナー』で焼いたんだよねー」
阪口「じつはオレも買っちゃった!(てへぺろ)」
和田「みんなコッソリ買ってるし!」
中山「水野さんも買ってたりして」
水野「買うわけないでしょ!」(←東京・中央区在住)
文/中山茂大 写真/阪口 克
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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