長野県の人気移住地・安曇野(あずみの)で家を探す際のポイントを紹介。物件が出やすいのは、中核となる安曇野市。そこでは明確な土地利用計画に基づき、まちづくりを推進している。その概要を頭に入れ、理想の住まいを手に入れよう。
掲載:2022年7月号
物件が多い山麓保養区域は、温泉好きの人にピッタリ
筆者の体験で恐縮だが、信州の松本から安曇野を通り日本海方面へ向かうJR大糸線周辺の田舎には特別な思い入れがある。というのも1980年代半ば、いくつかの過疎町村が全国に先駆けて空き家を斡旋。その動きを追いかけたのが、私の田舎取材の出発点なのだ。温泉に恵まれた安曇野は民間業者の活動も早く、今回取材でお世話になった安曇野市の穂高観光㈱の免許番号は(15)。創業54年という老舗中の老舗である。
「当社は高度成長期から温泉付き別荘分譲を行い、23の別荘地で総区画数が2000を超えました。それくらい安曇野は昔から人気が高かったんですね。現在、新規分譲はありませんが、主に当時の売地や築30〜40年の中古別荘を扱っています」と同社の上條長秀さんは語る。
安曇野市は土地利用計画に基づき6つの区域を設定しており、田舎物件が出てくるのは山麓保養区域と田園環境区域。
物件が多いのは、北アルプスの麓に広がる山麓保養区域だ。里山に遮られてアルプスをじかに望める場所は少なく、林間別荘地のため本格的な菜園も難しいが、北アルプスの中腹にある中房川の源流から25㎞以上にわたって穂高温泉郷の配管が張り巡らされている。
温泉付き中古別荘の売れ筋は800万〜1500万円で、価格には温泉権利金も含まれている。温泉使用料は30㎥まで月9900円。山林の未造成地は坪5000円くらいから、別荘地の相場は坪2万〜4万円前後だが、新たに温泉を引き込む場合は214万5000円の負担金が別途必要だ。
田園に囲まれた暮らしは、物件選びに工夫が必要!
安曇野は3000m級の山々に囲まれているが、既存集落があるのは標高550m前後の農村部。市街地の郊外に平坦な田んぼが広がっている。それが田園環境区域。北アルプスを眺めながら暮らしたい、敷地内か近くの農家から畑を借りて本格的に菜園を楽しみたいという人には、こちらがオススメだ。
ただし、農地転用の規制が厳しいため物件は少なく、宅地分譲地の相場は坪10万円前後になる。1000万円台の中古住宅も非常に少ない。
安曇野市の人口は約9万3000人。10年ほど前までは住民が増えていた地域で、新しい中学校が建設されたほど。現在でも人口はほぼ横ばいで推移し、空き家がなかなか出てこないのだとか。月10 万円以下の賃貸住宅はポツポツあるので、とりあえずそこに住んで理想に近い中古住宅を探すか、3000万円くらいの総予算で宅地分譲地に家を新築する手も考えられる。
「雪は30㎝も積もらないところですが、冬の最低気温はマイナス12℃くらい。定住する方や冬も別荘利用する方は、断熱材やペアガラスで防寒対策を施す必要があります。盆地の外れなので夏の気温は高くなりますが、湿気が少なくてカラッとしている。その気象条件が気に入って安曇野に決めたという人も多いんですよ」と上條さん。
客層は首都圏3割、名古屋2割、残りの5割は長野県の人だという。人気県・長野の都市住民も憧れる安曇野暮らし。環境が保全され、田舎の原風景が色濃く残っているからだろう。
文・写真/山本一典 イラスト/大沢純子、関上絵美
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