さて、サウナ小屋づくりの作業を、2回に分けてご紹介します。ここでは、伐採からログ組み、屋根や窓、吸・排気口といった外装までです。このサウナ小屋のポイントや費用などは、サウナ小屋【1】をご覧ください。
※チェーンソーでの作業や高所での作業は大変危険です。きちんとした装備のうえ、慎重に作業してください。
千葉県大多喜町(おおたきまち)の地域おこし協力隊によるコンビ「sauna en」(サウナ エン)がつくったサウナ小屋。間伐材ログを活用したものだ。こちらのつくり方をご紹介。
1 木を伐採する
『田舎暮らしの本』で連載中の「人力山荘」や「人力工房」でお馴染みのライター・中山茂大がつくった「しげキャン」。サウナ小屋は、その敷地内の木を伐採して使うのが目的だ。伐採した木は3カ月ほど屋外で天然乾燥。本来なら最低でも半年から1年ほど乾燥させるのだが、今回は工期も迫っているのとサウナ小屋なので短縮した。
木を切る前に草刈りをして、周囲の障害物などを取り除く。夏場の草刈りは暑い。なお今回のような伐倒作業は初心者には無理。非常に危険なので安全第一で決して無理をしないこと。
チェーンソーで、切り倒したい方向に受け口、反対方向に追い口をつくる。チェーンソーの扱いや伐採は危険なので、ヘルメットやゴーグルなど装備をきちんとしよう。
安全ロープをからだに着けて木に登り、ロープを木に巻き付ける。このロープを倒したい方向に引っ張るのだ。
木が倒れる瞬間。「近くにある『しげキャン』のウッドデッキの方角には、絶対倒れないようにしないと」。
2 ログ組み
伐採が終わったら、ログを組み上げる工程だ。ここで重要なのが、スカーフの刻み。丸太と丸太が合わさる部分に施す加工のことだが、実際に合わせてみないとわからないので、組み上げては調整を繰り返すことになる。
ログハウスの構造とノッチ
ログハウスは丸太などのログ材をを横に積み上げていくので「丸太組工法」とも言われる。直角に交わる部分を「ノッチ」と呼び、その部分のログ材には「スカーフ」と呼ばれる加工を施して、上下のログ材がすき間なく噛み合うようにしている。苦労したことの1つが、このスカーフだ。だいたい半分から3分の1程度にカットするが、その際には必ず一度「ラフカット」していったん組んでみて、スクライバー(作図コンパスのような工具)で正確な切り込み線を出し、「ファイナルカット」をしてから組み上げる。このひと手間が精度の違いとなって現れるのだが、重い丸太を何度も組んで修正しての繰り返しは重労働だった。
チェーンソーでスカーフを刻む。スカーフは少し長めにとったほうが、仕上がりがきれいらしい。チェーンソーの代わりに曲面カンナを使ってもよい。グラインダーで表面をきれいにして、スカーフの完成だ。
丸太の切り目はバーナーで炙ることでかっこよく仕上げた。
基礎にはベタ基礎を採用した。汗やロウリュウの水が落ちても簡単に掃除できるためだ。その上に刻んだ丸太を載せていく。
ダボを入れるための穴開け。垂直に開けるのが難しい。ダボは、積み上げたログ材を下のログ材に留め付ける役割とログの横ずれを防ぐ役割を持つ。
重い丸太は重機で運ぶ。林業が本業の僕らは、みんな重機の免許持ち。
段数が上がってくると、丸太を加工するのも一苦労である。
設計図を用意しなかったツケが回ってきた。細かい寸法が全て現場合わせになってしまい、その結果腕に大量の数字が刻まれることに。普通なら455の1つで済んだものが謎の475や460がちらほらと見える……。
3 屋根・入り口をつくる
ログが組み上がったら、屋根の施工に入る。屋根を張ると、小屋らしくなり完成に近づいた気がする。その後、入り口も忘れずにつくる。
蒸気を逃がさないように、屋根には防水シートを2重で貼り付けた。
屋根材にはアスファルトシングルを使用。アスファルトシングルは、ガラス基材にアスファルトを浸透させ、表面に石粒を吹き付け接着したもので、シート状で扱いやすい。
屋根の内側には、贅沢に100㎜厚のグラスウールを使用。これで屋根側の断熱もばっちり。
ログを組み終えた壁に、ドアや煙突の開口部を切り開ける。一発勝負で失敗は許されないので、一番緊張した瞬間だ。
小屋内の熱や蒸気を逃がさないように、ドアは小さめ。高さ約1400㎜と、かがまないと入れない。
4 窓と給・排気口をつくる
サウナ温度を管理するうえでは、「給気口」と「排気口」の位置が重要。また、今回は室内に明かりがないため、外光を取り込むための窓もつくった。
窓枠をつくる。薄暗い落ち着いたサウナ空間とするため、高い位置に横長の窓を配置した。
外気を取り込む給気口はストーブ横に、排気口は対面の壁に取り付ける。
給気口と排気口
サウナの構造で最も重要となるのが「給気口」と「排気口」の位置だ。給気口はストーブの後側の壁、高さは排気口より下、排気口は給気口の反対側の壁、高さは座面の下が基本となる。今回は座面の高さを床面から950㎜とし、給気口を床面から200㎜、排気口を450㎜に設置した。
◎作業の後編、「間伐材ログでつくるサウナ小屋【3】」薪ストーブの設置とサウナ実感リポートもぜひご覧ください。
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