千葉県大多喜町(おおたきまち)の地域おこし協力隊によるコンビ「sauna en」(サウナ エン)によるサウナ小屋。製作の後半は、重要な薪ストーブの設置やサウナ実感リポート、サウナの入り方や楽しみ方をお届けします。前編はこちらを、ポイントや費用などは【1】をご覧ください。
5 ベンチとウッドデッキの設置
薪ストーブを設置する前に、室内にベンチを取り付け、外にはウッドデッキを施工する。このころになると、時間に追われ、あまり写真を撮ることができなくなった。
壁に刻みを入れて、板をはめ込み、ベンチを設置。ベンチの座面は、掃除をしやすいように取り外し可能なスノコスタイルにした。骨組みにスノコをセットすれば完成。
ベンチの骨組みは、壁に直接刻みを入れてはめ込んだ。
サウナ小屋の外側に、ウッドデッキを設置。基礎石には、コンクリートのピンコロ石を使用して簡単なつくりにした。この上に基礎材を載せて、デッキ材を張る。
6 薪ストーブの設置
僕たちが選んだのは、ホンマ製作所「ストーブカマドSKS-410」。大きめの薪でも豪快に燃やすことができ、火力が強く暖まるのが早い、そしてリーズナブル。サウナストーブには適している。
サウナ小屋づくりも大詰めになり、キモとなる薪ストーブの設置だ。設置の前に重要なのが炉台と炉壁。さらに煙突も正しく取り付けないと、煙が吸引されず、燃焼が悪くなることもあるのだ。
床の耐熱のために、炉台となるレンガの下には遮熱性の高いケイカル板を敷いた。ケイカル板の下にも空気層を設ける。
面倒ではあったが、ログハウスとの相性を考えて炉台、炉壁にはレンガを採用。
薪ストーブの設置例
高温となる薪ストーブは、火災を予防するために細かい設置基準があるが、その基準は薪ストーブの火力や炉壁などの厚さによって異なる。重要なのは、可燃性の壁や床、天井に直接熱が伝わらないようにするための「炉台」と「炉壁」を設けることと、炉台と床、炉壁と壁、遮熱板と天井といった遮熱するものと可燃性のものの間を30㎜以上離して、断熱用の空気層を設けることだ。今回は、炉台・炉壁にはレンガを使ったが、タイルや石材などの不燃材を使ってもよい。炉台の下には耐火性の高いケイカル板を敷いた。耐火壁もレンガを積んでつくり、壁とレンガ壁のすき間を30 ㎜とした。またストーブの熱が当たる天井部分にもケイカル板を取り付け、天井との間に30㎜のすき間を設けた。
壁の事前に設えておいた煙突穴を通して、薪ストーブから外に煙突を取り付ける。今回は、コスパ重視で薪ストーブを購入したので、煙突のほうが高くついた。意外と煙突の価格が高いので気をつけたい。
煙突設置は、ジョイントをはめ込むだけなので案外簡単だ。屋内は放熱性の高いシングル煙突、屋外は断熱材が入った二重煙突を取り付けるのが基本。
当初の予定より1m長くなっている外の煙突。長くすればするほどストーブの燃焼力が増すからだ。
煙突の設置例
煙突の設置に関しては消防署でもらったガイドラインを参考にした。建築基準法施工令によれば、煙突は屋根から600㎜、壁から突き出す場合は軒先から150㎜以上離して設置する必要がある。今回は煙の抜けも考慮して、屋根から1000㎜とした。また煙の抜けについても構造上の条件があり、垂直の長さを2000㎜、水平の長さを1000㎜とした。
完成! さあ、〝ととのう快感〟を味わおう
「しげキャン」のサウナは、貸し切りのプライベートサウナなのでほかの人を気にせずにすむ。
サウナ実感リポート
実際にサウナに入ってみると、今まで入ったサウナで一番気持ちがよかった。もちろん、自分たちでつくったという愛着があるので、完全な自画自賛だ(笑)。
だが、客観的に見ても、サウナの室内は、木の香りに包まれて心地のよい空間。また、外の休憩スペースで眺める景色は最高なのだ。
お客様に入っていただいているが、充分な温度を保てているか、〝ととのう〟ための空間を提供できているかなど、毎回緊張している。
同時に自分たちのつくったものを、体験しにきてくださることがとてもうれしく、感動している。お客様からは、さまざまな感想をいただく。特にうれしかったのは、僕たちがつくったログサウナに入ったことで「サウナにハマり、毎週ととのうようになった」というもの。
キャンプ場とログサウナのオープンから2カ月。リピートしてくださる方もいて、本当にありがたいです。
今回つくってみて、一番の反省点は、設計図を用意しなかったこと。次回からは、ちゃんと設計図を用意したい(当たり前ですが)。「もっとこうできた」という思いがあるので、早く次のサウナをつくりたい!
薪ストーブの上には石が置いてあり、そこに水をかけることで蒸気を生み出す。
フィンランドで“サウナの心”といわれるサウナストーン。一般には熱に強く固い火成岩が「香花石」として売られている。
乾燥したシラカバの枝葉を束ねたヴィヒタで軽く背中を叩くウィスキング。血行がよくなり極上のサウナ体験に。
サウナの入り方・楽しみ
昨今サウナがブームになった要因の1つにサウナの入り方のフォーマットができたことがある。「サウナ→水風呂→外気浴」の流れを1セットとし、2~3セット行うと“ととのう”のだ。1セット目からととのう人もいるが、基本的にセット数を重ねるごとにととのいやすくなるという。
ととのい初心者の一番のハードルは水風呂に入るところだが、ここは気合い。比較的入りやすい入り方として息を吐きながら入るというものがある。サウナに何分入るかは個人差があるので平常時の心拍数の2倍になったら出ることをおすすめする(初心者は5~10分と時間を設定してもよい)。
ととのいを感じる瞬間は水風呂から出て2分ほどという話があるので、水風呂から出た後は速やかに休憩スペースに移動してゆったりとくつろごう。
カンカンに熱したサウナストーンに水を振りかけ、水蒸気を発生させる。熱気が一気にからだを熱くする。
ロウリュウする水にアロマ成分を混入することで、熱気とともにすばらしい香気が立ち上る。いかにもヒーリング効果がありそう。
シラカバの枝葉を束ねたもので、これに水を含ませて背中をビシビシ叩く。血行がよくなり肌が活性化するという。
■しげキャン&サウナの案内
文・写真/sauna en 文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/関上絵美・晴香