ついに引っ越し目前の和田邸。今回は最後の作業、薪ストーブの設置である。苦節約4年。「欠陥住宅」は竣工しちゃう……のか⁉
掲載:2019年7月号
乱形石を並べ、炉台をつくる
中山「いよいよ竣工間近ですな」
水野「今回で連載38回目だから、ちょうど丸3年になりますね」
阪口「この欠陥住宅がついに完成するのかと思うと、感慨よりも心配が先立つよ」
中山「『欠陥住宅が完成する』って……、なんか矛盾してね?」
阪口「だって欠陥だらけだし」
和田「欠陥欠陥って言わない!」
水野「それで最後の作業は?」
和田「炉台をつくる! 炉台に合わせて最後の床材を張って、薪ストーブを設置する!」
前号で既報のとおり、床材張りはほぼ終わっているのだが、一部だけ未完成である。その理由は「炉台が完成していないから」なのだ。
和田「炉台と床の高さを揃えたいのよ。それで炉台の形に合わせて床材の端をカットして張りたいの」
和田邸は母屋にも薪ストーブがあるが、炉台が床面より5㎝ほど高く、凹凸のある自然石を放射状に乱張りしたものだから足をぶつける人が続出したんだとか。
水野「つま先を石にぶつけるって……。想像しただけで激痛」
阪口「さすが。母屋も欠陥住宅」
和田「だから! 今回はそうならないようにするってこと!」
水野「ともあれ炉台の施工ね」
和田「そう! 床下地の合板の上にケイカル板(不燃ボード)を張って、その上に乱形石(らんけいせき)を並べるから」
阪口「乱張りって難しいんだよ」
中山「最初に仮置きしても、途中でどこにどれ置くか忘れちゃうんだよね」
和田「そこでホラ! これがあれば間違えない!」
和田が取り出したのは、仮置きした石組みを撮影したもの。なるほどその手があったか。
まずは炉台の位置決めである。下地の合板にだいたいの形の線を引き、その上にケイカル板を置く。
中山「……意味ないよね」
水野「どうせケイカル板で隠れちゃうんだしね」
阪口「最初からケイカル板に線引けばよかったのに」
和田「もう! 外野うるさい!」
それよりも問題は、薪ストーブと壁面との距離である。一般的には薪ストーブを壁際に置いた場合、可燃物までの最低距離は1m以上。そこで和田が脚立を立て、天井の煙突穴からサゲフリを下ろしてみる。
和田「ええとね。煙突がここだから……。このへんかな!」
一同が危惧したとおりであった。測ってみると、やはり壁との間の距離が足りない。
一同「大丈夫かな?」
和田「あとで、鉄板の耐火壁を設置するから大丈夫大丈夫!」
助っ人一同の危惧は、なし崩しにスルーされ、乱張り作業に入る。和田が自分でやるというので、一同見学である。仮置きしたとおりに乱形石を並べ、浴室の施工で余ったタイル用接着剤で圧着していく。裏技のおかげもあって作業は順調に進み、さて問題は目地だ。石を汚さないようにモルタルを流し込みたいんだが、なにかうまい方法はないか……。
阪口「ケーキ用のホイップクリームに使うアレは?」
和田「ああ! アレね!」
というわけでクリームをムニューッと押し出すヤツ(「生クリーム絞り器」というらしい)にモルタルを充填してみた。
そしたらこれが大当たり。幅1㎝ほどの目地に、モルタルが絶妙に流し込まれ、石も汚れない。
和田「いいね、ナイスアイデア!」
阪口「おっほっほ!」
とまあそんな具合で炉台は完成したのであった。
人力社メンバー初! 高難易度の溶接に挑戦!?
次の作業は、壁面の防熱対策だ。
和田「じつはさ! 溶接機買っちゃったんだよね!」
おお。DIY歴10年の人力社で、いまだ誰も手を付けていなかった溶接である。DIY業界でも難易度が高いと評判だが、ついに和田が手を出したのであった。
阪口「業務用だと200Vタイプが主流だけど、100Vで大丈夫なのか?」
そう。難易度が高い理由の1つが、種類によっては分電盤から200V専用のコンセントを増設する配線工事が必要なことだ。当然ながら電気料金も高くなる。
和田「大丈夫! 厚さ5㎜程度の鉄板とか異形鉄筋(いけいてっきん、表面に凸凹の突起が付いた棒状の鋼材)くらいなら、余裕だね!」
水野「でも難しそうだよね」
和田「それが楽しくてさ! なんでも溶接したくなっちゃうんだよね! 先日、軽トラのユーザー車検に行ったら、フレームが腐食して穴が開いていたのを指摘されたんだけど、それも溶接で埋めた」
溶接にすっかりはまったせいで、和田の新居には、アチコチに鉄製品が取り付けられることに。
中山「それで今回は、なにを溶接すんの?」
和田「薪ストーブと壁の間に取り付ける鉄板! 溶接とリベットでつぎはぎして、あえてジャンクな雰囲気を出したいのよ」
和田の説明によれば、薪ストーブと壁の間に防熱用の鉄板を置く。このとき下部にすき間をつくっておくのがミソだという。この数㎝のすき間から空気が入って対流が起こるので、壁との間に熱気が滞留しないというわけである。
中山「対流するから滞留しない……」
和田「どうでもいいから!」
さっそく鉄板を溶接してみよう。遮光溶接面と革手袋をはめて、母材にアースをつなぎ、トーチを近づけてスイッチを入れる。
「ジジジジジ!」
例のまばゆい光とともに煙が上がる。
おお……、これが溶接か。なんかプロっぽいなあ。
数カ所、溶接して、溶接面を外してよく見てみる……。しかし、全然溶接されてない。
中山「こりゃ難しいなあ」
和田「けっこうコツがいるね! トーチの先端から出るワイヤーと母材の距離を5㎜程度に保ったまま、右から左にゆっくり動かしていかないとね。早すぎても、遅すぎてもだめだし、トーチと母材が近すぎても、遠すぎてもうまく溶接できないんだよ」
阪口「確かに難易度が高そうだ」
和田「溶接よりもリベットのほうが簡単だね!」
こちらは、接合する2枚の鉄板を重ねてドリルで下穴を開けておき、そこにリベットを挿して、リベッターのレバーを握るだけ。するとリベットが塑性変形(そせいへんけい)して、重ね合わせた部材が圧着されるのだ。業界用語ではこれを「かしめる」という。確かにこっちのほうがはるかにラク。溶接のような緊張感もない。和田は、以前にリベッターも購入していたのだ。
中山「これなら安全だし、手軽さでいったら断然こっちでしょ」
和田「溶接のほうが、自由度が高いし、材料が溶けて一体化するからずっと丈夫だけどね!」
というわけでリベット打ちも一部使用して完成した鉄板をさっそく取り付けてみる。
阪口「このパッチワーク的なのが、なんかみすぼらしい感じだね」
水野「鉄板がサビてるのは、わざとなんだよね?」
和田「もちろん! 20日ほど雨ざらしにしておいた」
阪口「変なところにコダワリがあるんだよなあ」
こうして役者が揃ったところで、ついに薪ストーブ様のお出まし……、と思ったら。
中山「なんと。ページが足りなくなりまして……。次号に持ち越しとなりました」
水野「引っ張りますねえ(笑)」
阪口「いつ終わるんだ、この連載は!?」
次号こそ、薪ストーブの設置作業。そして大団円へ……。果たして和田の「欠陥住宅」は有終の美を飾ることができるのか!?
和田「欠陥住宅じゃないってば!」
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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