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田舎暮らしの本 1月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

富裕なリンゴ農家が一大普請。棟梁の力作を移築しませんか? 建物価格は300万円【青森県弘前市】

リンゴ農家の心意気と、棟梁の手腕が建てた、津軽地方に伝わる昭和初期の古民家。重厚かつ優美な姿の内に、生活と接客の場が明確に区分されている。店舗兼住宅や公共的施設にも向きそうな移築希望物件だ。

掲載:2022年10月号

2022年8月上旬の情報です。
すでに契約済みの場合があります。

青森県弘前市(ひろさきし)
青森県の西側、津軽地方の中心地で人口約16万5000人。年平均気温10.6℃。弘前城の城下町。リンゴ生産量は全国一で約2割を占める。JR東北新幹線新青森駅よりJR奥羽本線特急で27分。青森空港よりバスで55分。

 

日常とハレの空間を持つ。移築希望で保存状態良好

古民家はリンゴ畑の多い市街地の一角に立つ。左から家主の佐藤悟さん・千佳子さん夫妻、全国古民家再生協会青森第一支部の大室幸司さん・幸子さん夫妻。

建物の北側。張り出した軒と、高い基礎のおかげで外壁の漆喰や建具の傷みも少ない。

 明治時代に始まった津軽地方のリンゴ生産。昭和9年には東京までリンゴ専用列車が運行を開始、同15年には青森県より1000万箱が移出され、販売は1つのピークを迎える。

 「わが家も父の代までリンゴをつくっていました。この家屋は昭和10年代に曾祖父が建てたものです。以前はもっと山側に住んでいましたが、ここに新築したそうです。自分の山から伐り出した木を使い、基礎石を運ぶのも大勢がかかわった大工事で、本当かどうかわかりませんが『近所の人が見物に来た』と聞かされました」

 と話すのは家主の佐藤悟さん(62歳)。この家で生まれ育った後、就職して弘前を離れたが、27年前に戻り、敷地内に建てた新たな住居に暮らしている。

 「もとの家は思い出深いです。小さいころは便所が外にあって、夜は怖くて兄弟と一緒でないと行けませんでしたよ」

 家屋は東半分が2階建ての居住空間、西半分は1階のみで高い天井を持つ座敷。全国古民家再生協会青森第一支部の大室幸司さんによると、こうした設計の民家は県内でも珍しいそうで、「施主さんの依頼を受け、腕利きの棟梁が知恵と技の限りを尽くして建てた家だと思います」

 とのこと。佐藤さんは言う。

 「座敷は冠婚葬祭などで使う以外、普段は出入りしませんでした。子どものとき、お供え物を下げに座敷に入ると、床の間の隣の仏壇までがずいぶん遠くに感じたものです」

 床下に風の通る高い基礎と、雨と紫外線を和らげる深い軒、そして継続された手入れによって、建物の保存状態は良好。昭和初期の築を感じさせない。「思いを込めて建てられた家なので、何かのかたちで利用していただければ」

 と、佐藤さんは急がず長い目で移築希望者を待っている。

 

【物件データ】
青森県弘前市
300万円(相談可)
延床:約65坪・125㎡

青森ヒバも用いた入母屋屋根の古民家
●1階8室、2階4室●約85年■伝統工法で建てられたリンゴ農家の古民家。入母屋(いりもや)型の屋根は、茅葺きから後にかけ替え、さらに屋根材のトタン板は20年ほど前に全面張り替えた。雪の多い地域だが雪は滑り落ちる屋根勾配。土台などの部材には防腐・防虫に秀でた青森ヒバも用いられ、構造材だけでなく外壁などもよく保存されている。
●問い合わせ:(一社)全国古民家再生協会 青森第一支部 大室幸子
☎090-1067-0664 https://www.kominka-aomori.com/

【古民家いいね!】
軒下で屋根を直接支える多数の化粧垂木を、まとめて持ち上げているのは横方向に据えられた桁材。さらに柱に据えた隅の出し桁が桁材を支える。この組み合わせを複数重ねて隅木を支え、深い軒のある重厚な家の姿をつくっている。

ハレのときだけ使われた座敷につながる玄関。屋根頂部端や、張り出した軒の曲線が優しい風情で来客を招く。

【古民家いいね!】
採光に書院窓を持つ本床形式の床の間。奥行きのある床板はケヤキの一枚板。光沢を保った床柱は黒檀。普段は立ち入らない大切な場所とされてきただけに、85年の歳月を感じさせない。

4部屋の座敷の中心にケヤキの大黒柱。差し鴨居を大黒柱から四方に伸ばさず、間取りを変則田の字にするのは、験担ぎで地域の習わし。

家族が暮らした居間。低い天井の板は2階の床を兼ねる。「リンゴの花の時期には花粉が運び込まれ、居間は香りに包まれました」と佐藤さん。

2階の部屋は梁や屋根を支える出し桁など、構造材が現しとなっているのも魅力。

 

大室さんに聞きました!移築古民家Q&A

Q1/費用はどの程度かかる?

  構造材だけなのか、壁土などもすべて運ぶのかで輸送費や解体費は変わりますが、この建物で標準的には20tトラック5~6台分、移築先が関東なら解体費と輸送費合わせて700万~800万円。加えて移築先での再建費は、工法によりますが、坪単価100万円が目安です。

Q2/解体・移築の方法は?

 伝統工法の古民家と、現代の在来工法とでは求められる技術が異なります。古民家解体を手がける地元業者が解体し、移築先でも経験のある業者に依頼しましょう。全国にいる古民家再生協会のメンバーもご紹介できます。

Q3/移築後の再建築について

 構造材だけ用いてほかは新しい部材で再建もできますし、いったん壊した壁土を練り直すなど、手間とコストはかかりますが、もとの材料を使っての再建もできます。どんな形が希望なのか、費用も含めて、依頼する業者とよく相談してください。

※古民家の移築についてはこちらのサイトでも確認してみよう
→古民家移築販売サイト「結」 https://kominka-yui.jp/

 

弘前市移住支援情報
2種類のお試し住宅でまずは弘前の暮らしを体験!

 「移住お試しハウス」は、弘前駅近くの集合住宅の1室(1LDK)で、最長13泊14日の生活体験ができる。料金は1万8000円~/週。「弘前の暮らし体験」は、弘前公園近くのサービス付き高齢者向け住宅で、6泊7日~13泊14日の生活体験が可能。50歳以上対象。単身3000円/日、夫婦5000円/日。いずれも、滞在中に移住相談も受けられる。

問い合わせ:弘前市企画課 ☎0172-40-7121
「弘前ぐらし」https://www.hirosakigurashi.jp/

弘前駅から徒歩約10分。市内巡りに最適な立地の「移住お試しハウス」。

「暮らしやすく魅力たっぷりの弘前を体験してください!」

 

文・写真/新田穂高

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