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田舎暮らしの本 2月号

1月4日(水)
850円(税込)

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大人気!【国産・薪ストーブの逸品】イエルカさんの薪ストーブはシンプル&美しい(コスパも最高!)

イエルカの薪ストーブ

少し前まで薪ストーブといえば欧米製が主流だったが、最近は国内にもこだわりのメーカーや薪ストーブ工房が増え、コストパフォーマンスのよい個性的な機種が数多く誕生している。日本の住宅事情や薪事情に対応し、工房によってはオーダーメードに応じていることも。そんな国産薪ストーブの注目機種を紹介しよう。


【イエルカの薪ストーブ】
大梅
四角でも丸でもない形は、ウメからインスピレーションを得たもの。
価格32万円(オーブン付き)
●サイズ:幅790×奥行き709×高さ780㎜
●重量:270㎏

商品の問い合わせ先:イエルカの薪ストーブ
☎0265-88-3675

 

山暮らしを象徴する
イエルカさんの薪ストーブ

 南信州中川村(なかがわむら)の里山の中腹に、築200年ほどの古民家がぽつんと立っている。屋外に置かれたストーブからは白煙が上がり、谷から吹き上げる風は薪の香ばしい香りを運ぶ。ここが、薪ストーブ職人イエルカ・ワインさん(79歳)の工房だ。

イエルカ・ワイン
1943年、チェコ・プラハ生まれ。1968年、パリ留学中に絵画や舞台建設を学び、以降世界各地を巡る。点在の末、日本の自然に魅了され、1983年に移住を決意する。福岡正信さんの『自然農法 わら一本の革命』(春秋社)に示唆を受け、山で暮らしたいと信州に移り住んだ。当初は織物作家の夫人とともに、夫婦で羊毛を紡いだじゅうたんをつくっていた。自給自足の暮らしを送りながら、手づくりパン焼き器を研究したことがストーブ製作のきっかけとなる。「昔の日本家屋の雰囲気がとても好きで、それに合うストーブがつくりたい」と、現在でも様々なタイプのストーブを生み出し続けている。

 

イエルカさんの自宅兼工房。築年数不詳だが、200年ほど経っていると思われる。

 「隣村の大鹿村(おおしかむら)に10年住んだけど、ストーブをつくるにはちょっと狭かったので、こっちに来ました。ここは自然が豊かで、とてもいい場所。湧き水も多くて、私は『天然のシャンパン』って呼んでいるんですよ」

 イエルカさんは旧チェコスロバキア共和国(現チェコ共和国)出身。若いころに世界中を旅し、機織り作家の関悦子さん(77歳)と出会って結婚。自然のなかで子どもを育てたいと、大鹿村の古民家を借りることに。「大鹿村の人は、自然のなかで生きることにとても詳しかった。私も周りの人たちから、山で生きることをたくさん学ばせてもらいました」と、イエルカさん。

妻の関悦子さんは織物作家。1年かけて大きなじゅうたんを織る。染色していない、自然な色のヤギの毛糸のみを使う。

 薪ストーブづくりを始めたのは、自分で栽培したライ麦でチェコ風パンを焼きたかったから。父が建築家で、自身も舞台装置の勉強をしていたイエルカさんは、2年間研究を重ね、独自のエアシステムを考案した。

 イエルカさんの薪ストーブには一部のモデルを除いてオーブンが付いており、扉下の空気穴のほか、上の鉄板に2つの小さな穴がある。この穴から吸い込まれた空気が下からの煙とぶつかることで、効率よく、そしてまんべんなくオーブンが温まるという仕組みだ。

溶接は飯田市の宮沢鉄工所で行うが、それ以外はイエルカさんが手作業で行う。

 「ハンドルは日本のミネバリという強い木で、中の耐熱レンガなどもすべて日本製。唯一、ガラスだけはドイツのネオセラムという耐熱セラミックガラスを2重にして使っています。独特だけどシンプルなつくりで、メンテナンスが大変な複雑な部品や、詰まりやすい細い管などは使っていません。だから自分で簡単に掃除できるんですよ」

左/レーザーでカットされた空気取り入れ口。「シンプルであることと、美しいことは大切」という信条のもと、細部にまでこだわっている。中/一次燃焼室の床には国産の耐熱レンガが敷かれており、このレンガが蓄熱することにより暖かさが長持ちする。右/ストーブトップには2つの穴が。マッチの火を近づけると、ストーブ内に吸い込まれるような空気の流れがわかる。

 さまざまな木が薪に使えるのも、イエルカさんのストーブの特徴だ。広葉樹はもちろん、一般的に薪ストーブには向かないといわれるマツなどの針葉樹も使うことができる。

「薪は一度も買ったことがないんです」と、イエルカさん。薪割りが好きで、すべて手作業で割っている。

 「薪をどこででも調達できることは、山で暮らす知恵のひとつ。例えば捨てられてしまう古い木製パレットなども、薪にすれば木が無駄にならないんです」

 山暮らしに興味を持ち、全国から見学に訪れる若い人も多いそう。そんな彼らを見て、「この国には希望がある」と考えるイエルカさん。

 「これからの時代は、地面と一緒に生きていく知恵がいちばんの道具。だから、地方での暮らしそのものが学校なんです。そして、山で生きるには、周りの人とつながり、助け合わなければならない。それを象徴するのが、みんなで囲む囲炉裏であり、薪ストーブだと思うんです」

薪ストーブはキッチンの主役!
オーブン料理も煮込み料理も

 赤レンガづくりのオーブンは300℃以上になる。「ジャガイモやサツマイモなどはレンガの上にそのまま置き、ピザなどの柔らかいものは鉄板にのせて焼きます」と、娘のあけびさん(写真右)は語る。

 ストーブトップは広く、おでんや煮豆など、一度に複数の鍋料理をつくることができる。「火加減は難しくはないけれど、ボタンを押すのとはやっぱり違います。火は生き物ですからね」(写真左:悦子さん)。

あけびさんはフランスとイタリアで料理を学んだのち、現在は松本市でデリカテッセンのKawazoe(カワゾイ)を営むことに。

250℃のオーブンで6分。ピザが焼き上がった。「フォカッチャもふんわりおいしく焼くことができます」(あけびさん)。

農家住宅の特徴である広い軒にガラス戸を付けたテラス。夕食は家族揃ってここでとることが多い。そんな家族のヒストリーを織り交ぜた、薪ストーブのオーブンを使ったレシピ本『ワイン家のオーブン料理』(リトルモア)が出版予定だ。

薪ストーブでエコな暮らし
灰まで無駄なく循環させる

 灰まで活用するのがイエルカさん流。灰の中にインクの鉄分が入らないように、焚き付けには紙でなくスギの葉を利用。真っ白な灰は、もう一つのライフワークである陶芸の釉薬に最適だ。灰にはミネラルも豊富に含まれているので、畑にも撒く。

 「土のミネラルが野菜を育てます。結局すべてが、私たちの命に必要なものなんですよ」と、イエルカさんは語ってくれた。

イエルカさん作の陶器のコーヒーポット。釉薬(ゆうやく/うわぐすり=陶磁器や琺瑯の表面をおおっているガラス質の部分)は薪ストーブから出た灰だ。

 

製作中の薪ストーブ。
写真左から、
【イエルカの薪ストーブ】
」●幅752×奥行き603×高さ780㎜●250kg●28万円
どんぐり」●幅751×奥行き523×高さ782㎜●240kg●28万円
大梅」●サイズ:幅790×奥行き709×高さ780㎜●270㎏●32万円

商品の問い合わせ先:イエルカの薪ストーブ
☎0265-88-3675
http://jirkastoves.blogspot.com/

 

文/はっさく堂 写真/村松弘敏
※田舎暮らしの本 2019年11月号より転載、加筆しています

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