掲載:2023年1月号
1回穫りではもったいない
外葉をかいて長期収穫を楽しむ
レタスは地中海沿岸から西アジアの乾燥地域が原産。中国を経て日本には奈良時代以前に伝わり、切り口から白い液の出る乳草(チチクサ)から萵苣(チシャ)と呼ばれました。店頭での主役は結球レタスですが、家庭菜園に向くのは非結球のリーフレタスです。野生に近くて育てやすく、長期間にわたり葉をかいて収穫できます。比較的冷涼な気候を好み、種蒔き時期は春と夏。春蒔きが育てやすく、夏は種を休眠から覚ましてから蒔くのがコツです。
※雨水に似た野菜の栄養ドリンク。酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL )3杯の原液を混ぜる。
1 土づくり
初めての菜園では畝を準備
水はけのよい畑で育てる
どんな土でもよく育ちますが、根が細かく浅く、乾燥や過湿に注意が必要です。水持ちと水はけのよい畑が理想。根腐れを起こしやすいので水はけの悪い畑では高畝にします。初めて畑にする場合は苦土石灰をすき込んで土のpH調整をしておき、その後、完熟堆肥に加えて水はけをよくするもみ殻燻炭、ゼオライトを施しましょう。前作がよく育った畑なら、準備なしでそのまま定植できます。
2 準備
①春の種蒔きはセルトレイに
春は72穴のセルトレイに種を蒔いて育苗。セルトレイは必要な大きさに切ると便利です。育苗土は市販の種蒔き培土でかまいませんが、もみ殻燻炭を5~10%、バーミキュライトを5%入れると通気性と保水性が高まります。手で握ると固まる程度のかたさ(水分量50~60%)になるよう、あらかじめ水を加えて充分に混ぜてから、トレイに詰めてください。
トレイの外側にあふれるまで土を盛り、土の上面がトレイより数cm高くなるようにならしたうえで、手のひらで軽く鎮圧。外側のセルまで偏りなく土を詰めます。
②本葉2~3枚で鉢上げ
種蒔きから3週間ほどで本葉2~3枚まで育ったら、2号ポット( 直径6cm)に鉢上げします。1セルに2本以上育っていたら2本残して植え替えてください。
③夏の種蒔きは浸水&低温処理
レタスの種は25℃以上で休眠するため、夏は種を水に浸して表面の発芽抑制物質を流したうえ、冷蔵庫に入れて休眠を解いてから種蒔きします。
浸水のしかたは、種を茶漉し袋などに入れ、常温の水で24時間。その後、軽く水気を絞ってビニール袋に入れ、冷蔵庫で48時間冷やすと、種の先端から1~2mmの根が出てきます。
④ポットに蒔いて暑さと乾燥対策
高温で土が乾きやすい夏蒔きは、セルトレイよりも土が多めに入る2号ポットに種蒔きします。育苗土やポットへの土の詰め方はセルトレイと同様です。生育適温の25℃以下に近づけるため、ポットは木陰やよしずの下などの半日陰に置いてください。
3 定植
①定植前に底面吸水
ポットで育てた苗は本葉4~5枚に育ったら畑に定植します。植え付ける前に1~2時間、ストチュウ水を底面吸水させてください。
②春は午後、夏は夕方に定植
定植は株間30cmほどで、春は地温の上がる午後3時~5時、夏は暑さでしおれないよう午後4時以降にしてください。根鉢の上面と地面が同じ高さになるように植え付けます。
③定植後は株元を空けて草マルチ
植え付けたら周囲に草マルチを。春は地温を上げるため、夏はナメクジやコオロギが寄ってこないように、いずれも株元は草マルチせずに空けておきます。
4 お世話
①定植の2週間後に株元まで草マルチ
定植の2週間後には、株元まで草マルチして乾燥を防ぎ、地温を安定させ、草を抑えます。
②ボカシ肥の補いは定植後20日ごろまでに
定植後20日ごろまでに、あらかじめ発酵させて吸収されやすくしたボカシ肥※を1~2回補います。生の堆肥や米ぬかでは分解が遅く、生育の早いレタスには間に合いません。また、定植後30日を過ぎてからは、病害の原因になるため補いはしません。
※ボカシ肥...米ぬかなど栄養分を多く含む材料を発酵させたもの。前もって微生物によって有機物を発酵させ、 分解を早めておくことで、野菜が養分を吸収しやすくなる。また、微生物の働きで野菜が育ちやすくなる。
5 収穫
3分の2を残して外葉をかき取り収穫
定植から30日ほどで、中心部の葉がせり上がり、外葉がしっかり展開します。ここまで育てば、内側の3分の2を残しながら、外葉を順次かき取り収穫できます。かき収穫は長期間続き、トータルでは株穫りの3倍ほどの収量になります。
株穫りする場合は、外葉を取らずにおき、定植後40日ごろに収穫です。
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』(宝島社)、最新刊『苗で決まる!自然菜園』(農文協)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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