センスのある空間。
「センスがいい」と、よく口にはしますが、“センス”の軸は人それぞれ。そして、歳を重ねるごとに一個人が考える“センス”も変わっていきます。そう、“センス”は無限大。
宝島社が発行する雑誌「MonoMaster」3月号では、『センスのある空間。』をテーマに、様々な自宅空間を紹介しています。
今回は特別に、田舎暮らしの本でも人気のある「薪ストーブ」のある空間をピックアップして、その一部を紹介します。
日本一標高が高く、また、日本で最も長い川信濃川(千曲川)の源流があることでも知られる、長野県の川上村。現在、平日は東京、週末は川上村で二拠点生活を満喫する小林さんのおしゃれな空間を紹介します。
小林節正さん
●アパレルデザイナー
「.....リサーチ」代表。1993年に総合研究所としてジェネラルリサーチを設立。山という具体的な景色を得て、2006年にマウンテンリサーチを設立。週末は都会を離れて森へと通い、自社製品で山の暮らしを実践している。
過密林を開墾したプライベートエリア。
作家・田渕義雄さんの著書に導かれるようにして長野県・川上村にプライベートキャンプエリアを持つことになったアパレルデザイナーの小林節正さん。
週末になるとここへ来て、テント暮らしをしていたのだが、約15年の時を経て空間の認識が変わってきたという。
「最初の頃は、原理主義的にコンセプトがビシッとしていて、排除する方向で余分なものを置かない。そういうことができる精神の方がカッコいいと思ってたけど、歳を重ねるとカオスな場所の方がいいかなあとも思えるようになってきましたね」
標高約1450mのこの高地を手に入れたのは、自身の新しいブランド・マウンテンリサーチを立ち上げた時期だった。
「山暮らしの実践の場でもあったし、こういうコンセプトに変わりましたと、みんなにわかってもらうための舞台装置でもあったんです」
実生活に必要なモノは置かれず、自分が慣れ親しんだポップカルチャーに囲まれた山の暮らし。その実験であり実践の場として存在してきた。
「東京の家にはバックパックひとつ置いていないし、ここには山で必要なモノしかない。でも週末にしか来ていないと、本当は見られる風景と出合えてないのかなあと」
週末山暮らしを、今後は隔週で1週間過ごすスタイルに変えようと計画中。そのため現在は改築作業中だ。
「これまでは木を切ったり、芝を刈ったり排除することばっかりしてたけど、これからは本格的にガーデニングをやろうと思ってるんです」
田渕さんの“どうせ庭造りするなら、食べられるものがいい”という教えに沿って果樹を植え、野菜を育ててみるのだという。
「干支ひと回り。田渕さんが12年続けるとその人らしい庭になると言ってたので、とりあえず12年間はしっかりやってみようとね」
そうなると、いままでここには置いていなかった実生活に必要なアイテムも徐々に増えてくることだろう。
「いい歳になってくると趣(おもむき)が変わらなくなってしまう。でも行動によって暮らしの趣が変わる。変わらなくなってきた歳に、変わるというのは大きなチカラでしょう(笑)」
近代ドーム建築のパイオニアであるフラー博士の考案したジオデシックドームを具現化した2メータードームが山中に突然と現れる。
水場を作るなら、寒くないように囲おう、だったら薪ストーブも入れてしてしまおうとこの部屋ができた。
壁にはボルダリングウォールを備え、ルートだけでなく、思いついたアイデアも書き込まれている。
オーブン機能付きの薪ストーブも備わる。
デッキの軒下に設置したバードフィーダー(給餌器/きゅうじき)に野鳥もやってくる。デッキの向きは月の出る方向を見定めて配置。
この山には仕事を持ってこないのでデジタルデトックスができる。
小屋には山でしか必要のないものしかなく、東京の家には山のものが一切ない。
冬はマイナス20度。ここは山の暮らしを実践する場所。
「MonoMaster」3月号より抜粋して掲載
撮影/見城 了 編集・原稿/野上真一
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