「負の不動産」を相続した経験から「みんなの0円物件」をスタート
「みんなの0円物件」のサービス運営を始めて、サイトを立ち上げたのは、私自身に起きた出来事がきっかけでした。2018年に父を亡くし、約100坪の土地と、そこに立つ住居兼店舗の空き家を相続することになったんです。旭川市内の国道沿いの家は、かつて祖父母が住んで商売をしていました。今でいうコンビニのような役割の店で、子どもの頃に遊びに行くと、トラックのドライバーが立ち寄って、車中で飲食するジュースやパンを求めていたのを覚えています。
とはいえ私には使う予定もないので、処分しようと解体や売却についての見積りを取ったところ、結果(下表)を見て驚きました。
家屋の解体や不要な家財の廃棄に、これほどの費用がかかるとは思いも及びませんでしたよ。たとえ土地が売れたとしても、計算すればマイナスの資産を知らずに相続していたわけです。
放置しても毎年の固定資産税はかかりますし、建物は老朽化していずれ解体しなければならないでしょう。何とも途方にくれる気持ちになりました。
そんなとき、仕事で面識のあった方が物件を探しているという話を人づてに聞きました。連絡してみると、この物件を活用して店を始めたいということになり、土地と建物すべてをそのまま無償譲渡しました。
古い店舗はきれいに改装リニューアルされて、いまも活躍しています。私は処分の重荷を下ろせただけでなく、思い出のある建物が再び活用されたのがうれしいですし、店を始めた人もコストを抑えてスタートできたでしょう。
中村さんから無償贈与され、新店舗へと生まれ変わった物件。自家製米糀からつくる生糀(こうじ)ジュース(甘酒)専門店COOZY JUICE STANDとして繁盛している。
COOZY JUICE STAND
北海道 旭川市西神楽1線24号470-9
https://coozy-juice.com/
お金は動かないけれど、お互いにメリットのある取引は、たまたまタイミングが合ったからこそ成立しました。これも何かの巡り合わせでしょう。「やるべきことはこれだ」と感じて、私は無償譲渡物件の不動産マッチングサービス、「みんなの0円物件」の立ち上げに向けて動き始めました。
【0円物件の一例】
◎JR美深駅から徒歩6分、コンビニも徒歩圏内の木造2階建一軒家が建物のみ0円【北海道美深町】
JR美深駅から徒歩6分、近隣にスーパーやコンビニも多い場所にある物件で、消防署、病院のすぐ近く、町の中心部にも近い。所有者の親が亡くなり相続登記中。土地は借地(国有地)で、年間1万2000円の25年契約。
【住宅・土地統計調査における空き家の分類】
1.売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
2.賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
3.二次的住宅…別荘などの普段は人が住んでいない住宅
その他の住宅…1~3以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など
【コラム】
空き家の活用と除却を進める「空家等対策の推進に関する特別措置法」
国は2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行した。「空き家対策は、除却すべきは除却し、活用できるものは活用するとの考えのもと」(国土交通省HP)空き家の解体や用途転換による活用などを進める自治体を支援する予算を設ける。一方、長く放置して近隣に危険や迷惑を及ぼすなどするものを「特定空き家」に指定、適切に管理するよう助言、指導、勧告がなされる。そのまま放置すると税の減免が解除され、固定資産税は6倍、都市計画税は3倍に。その後、命令に背くと50万円以下の罰金、自治体による行政代執行が行われると解体費用を請求されることになる。2018年には25の道府県で67件の代執行が行われた。費用が回収できたのは全体の1割未満だが、空き家の所有者には適正な管理がますます求められている。
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